円相場は対ドルで155円を突破したことでストップロス(損失確定の売買)注文が誘発され、上昇に弾みが付いた。トレーダーの次の焦点は、年初来高値が位置する152円台に移っている。

8日の取引で、円は前日比約1%高の152円89銭まで上昇。前日も1.2%上昇しており、月初来の上昇率は約4%に達した。主要10通貨(G10)で最も高いパフォーマンスとなっている。

ただ、欧州時間に入って上げを縮小し、ロンドン午前には再び154円台に押し戻された。

為替のトレーディングルーム

今回の円高に明確なきっかけがあったわけではない。米国の祝日で市場の流動性が低下し、値動きが増幅されたとの指摘のほか、155円という重要な水準を突破したことで円を買う動きが加速したとの見方もある。円は先週、日本銀行の利上げ観測の高まりを背景に市場のセンチメントが急速に強気へ傾き、上昇を開始。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産配分見直しを巡る観測も円を支えている。

取引に詳しい関係者によると、円の155円突破を受けて大規模なストップロス注文が発動し、オプションのディーラーもドル売りを迫られた。関係者は匿名を条件に話した。

ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)の通貨ストラテジスト、ロドリゴ・カトリル氏は、円が上値抵抗水準を抜けたことで「相場がさらに動く余地が明確に開かれた」と指摘。今年これまでに付けた高値の152円27銭や152円10銭付近を試す展開になるとみる。

152円10銭付近は今年の円の対ドル最高値で、円高の勢いが強まる中、次の焦点として意識されつつある。テクニカル指標でも、節目の155円付近を突破したことで152円が次のターゲットとなる可能性が示されている。

円高ペースの加速を受け、円を低金利で借り入れ、より高利回りの資産に投資する「円キャリートレード」の巻き戻しが強まる可能性も高まっている。

SMBC日興証券の丸山凜途シニア金利・為替ストラテジストは、154円突破で「円キャリートレードのさらなる巻き戻しや追加のストップロスを誘発し、円が一段と上昇する余地が生じる」と指摘。一方、ポジションが軽くなったことで、投資家が再び円売りポジションを構築しやすくなるとも分析した。

ブルームバーグMLIVストラテジスト、マーク・クランフィールド氏も、次の節目となる可能性が高い152円前後の水準に為替トレーダーの注目は移っていると述べた。

クランフィールド氏によると、オプション取引でも円に対するセンチメントの緩やかな改善が見られている。7日は米国の祝日だったにもかかわらず、世界の為替オプションはまずまずの取引高があり、大半を円クロスが占めた。1年物の円フォワード取引の急増は、ユーロ、ポンド、スイス・フランに対する円ショートの巻き戻し具合を示しており、これは円の上昇圧力を強めることになると、同氏は語った。

円の上昇はユーロやポンド、豪ドルなどドル以外の主要通貨にも広がっており、単にドルが弱いのではなく、円が幅広く買われていることを示している。ドル・円の2週間物インプライド・ボラティリティーは2025年5月以来の水準に急上昇しており、今回の円急騰が市場の予想外だったことを物語る。

市場の焦点は今後、米国で11日に発表される消費者物価指数(CPI)に移り、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策見通しを探ることになる。日本では日銀の増一行審議委員の講演が、今後の利上げペースを見極める手掛かりとして注目される。

より大きな試金石となるのは日銀が来週開く金融政策決定会合だ。翌日物金利スワップ(OIS)市場は25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げを約95%の確率で織り込んでおり、円高を持続させるために十分タカ派的なメッセージを打ち出せるか、日銀に対するハードルは上がっている。

NABのカトリル氏は「円は岐路に立っている」と話す。「来週の利上げは必要条件だが、円が最近の上昇を維持するには、日銀がタカ派的なメッセージを発し、年末までにもう一度利上げする可能性が高いという市場の見方を改めて裏付ける必要がある」と述べた。

(相場を更新し、第10段落以降にブルームバーグアナリストのコメント、オプション市場の動向などを挿入します)

--取材協力:鈴木克依、日向貴彦、日高正裕.

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