米国債の最長期ゾーンの利回りがこれほど高い水準にこれほど長期間とどまるのは2006年以来となる。巨額の財政赤字に加え、社債発行が再び増える見通しで、米連邦準備制度の金融政策決定会合も市場の方向性を左右する可能性があり、今後数週間は投資家の警戒が続きそうだ。

米30年債利回りは8月半ばに5.34%を付け、07年以来の高水準となった。22年ぶりの高水準まであと10ベーシスポイント(bp、1BP=0.01%)に迫った。ブルームバーグがまとめたデータによると、年初から8月31日までに同利回りが5%を上回って取引を終えた日は55日に達し、年間ベースでは06年以来最多となった。

ベッセント米財務長官が8月、利回りを抑えるため既発債の買い戻し拡大を発表して市場に衝撃を与えた後も、多くの投資家は利回り低下が持続するとはみていない。8月として過去最高水準となった社債発行は、9月には2150億ドル(約34兆3520億円)と見込まれており、財務省による国債購入の効果を相殺することになる。一方、国債相場の重しとなってきた米国の財政を巡る懸念が近く解消すると予想する向きは少ない。

動画:米国から日本に至るまで、各国政府は国債発行で一段と高い金利を支払わざるを得なくなっている。こうした中、世界各国は長期債の発行を抑え始めている

ナティクシス・ノースアメリカの米金利戦略責任者、ジョン・ブリッグス氏は、長期ゾーンの利回りについて「社会保障制度改革によって財政赤字の見通しが変わるまでは」高止まりするとの見方を表明。「買い戻しは大海の一滴に過ぎない」と述べた。

同時に、9月15、16両日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では、根強いインフレを抑えるため利上げに踏み切るか、ウォーシュ連邦準備制度理事会(FRB)議長の決意が試される。金融当局が利上げをためらえば、長期債の売りが勢いを増すと予想されている。

トレーダーは31日時点で、9月会合で約17bpの利上げを織り込んでおり、その確率は約70%となっている。ウォーシュ議長が28日、ジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)でタカ派的な講演を行ったことを受けた動きだ。

4日発表の8月の雇用統計と11日に発表予定の8月の消費者物価指数(CPI)によって、物価上昇圧力がどの程度強まっているかをさらに見極める材料が得られる。

長期債はインフレ懸念の影響を一段と受けやすいため、消費者物価の上昇が加速する中でも米金融当局が政策金利を据え置く兆候が示されれば、低迷する30年債を投資家が敬遠する理由が増えることになる。

アメリベット・セキュリティーズの米金利トレーディング・戦略責任者、グレゴリー・ファラネロ氏は「長期ゾーンの利回りを下げたいなら、利上げすることだ」と指摘。ファラネロ氏は米金融当局が利上げすると予想しており、10年債とそれより短い年限の米国債に強気の見方を示している。

一方、一段の相場下落の予想もある。31日の米国債オプション市場では、30年債利回りの大幅な上昇を見込む取引が見られ、そのうちの1件では11月20日のオプション満期を前に利回りが約5.7%まで上昇することに賭けていた。

さらに見通しを複雑にしているのが、31兆ドル規模の米国債市場で30年債が占める独特な位置付けだ。米長期債に対する需要は主に、数十年にわたる負債とのバランスを取ろうとする保険会社や年金基金などの投資家から生じる。一方、ポートフォリオの金利感応度、すなわちデュレーションを抑えたい債券運用担当者は、長期ゾーンへのエクスポージャーを限定する傾向がある。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)の金利ストラテジスト、メーガン・スワイバー氏とエレノア・シャオ氏は31日付のリポートで、「米財務省による国債買い戻しや最近のその他の政策対応にもかかわらず、投資家はデュレーションを積み増すことに引き続き慎重だ」とコメント。「公的部門の買い需要が縮小する中、継続的な米国債供給を消化する上で、市場は価格に敏感な民間需要への依存を強めている」と指摘した。

30年債利回りが今年の最低水準から約65bp上昇したことを受け、一部の投資家は30年債相場にどこまで下落余地が残っているのか疑問視している。ナティクシスのブリッグス氏は今年を通じて長期ゾーンに弱気だったが、現在の水準では「より中立的」な見方に転じている。

ブリッグス氏は30年債利回りについて「なおじわじわと上昇するだろうが、タームプレミアムと実質利回りは既に大幅に上昇しており、いつまでも速いペースで上がり続ける必要はない」との見方を示した。

JPモルガン・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、プリヤ・ミスラ氏は、米財務省による国債買い戻しは30年債の需要を下支えする可能性があるものの、「AIインフラ整備に伴う大量の債券供給で、その効果は圧倒される可能性が十分にある」と話す。

ミスラ氏は「長期ゾーンの利回りはピークに近づいている可能性があるが、さまざまな要因が交錯しており、不透明感がある」と述べた。

原題:US 30-Year Bond Enters September on Its Worst Stretch Since 2006(抜粋)

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