台湾の検察当局は、先端AI半導体を中国に密輸したとされるグループの一員だったとして、米半導体大手エヌビディアのシニアマネジャーを起訴した。事情に詳しい関係者が明らかにした。台湾でこうしたAIアクセラレーターの密輸が摘発された初の事例とみられる。

エヌビディア社員のチャン被告は、他の8人と共に、高性能の「B300」半導体を搭載したサーバー74台を日本とインドネシア経由で中国に輸送し、米国の貿易規制を回避したとされる。同被告は先月拘束され、ブルームバーグは以降連絡を取れていない。

起訴状によると、グループはさらに56台を密輸しようとしたが、台湾当局が押収した。関係者によれば、台湾は問題のサーバーを製造したスーパー・マイクロ・コンピューターの幹部2人も起訴した。起訴状では被告全員の氏名が明らかにされていないため、関係者は匿名を条件に語った。

基隆地方検察署は24日の発表資料で、グループが「法外な利益を得るため縦横に結託し、高性能サーバーを違法に輸出した。企業のコンプライアンス費用を押し上げ、台湾の国際的なイメージを著しく損なった」とした。

スーパー・マイクロは、密輸を巡る捜査で台湾当局に協力していると説明。「引き続き台湾当局に協力している。当社は捜査対象ではなく、不正行為を指摘されてもいない」と発表資料で述べた。

米政府は長年、中国による米国製AI半導体の購入を制限してきたが、中国企業は高度に組織化された闇市場を通じ、需要の高いアクセラレーターを入手してきた。米当局者は、ここ数年で数十億ドル(約数千億円)相当のエヌビディア製品が中国に流入したと主張している。

エヌビディアの広報担当者は「当社社員は、適用される全ての法令を確実に順守するため、顧客と緊密に連携している」と説明。「台湾当局に協力し、できる限り速やかに疑惑が解明されるよう支援する」と述べた。

今回の事件は規模こそ小さいものの、AI半導体の闇取引への関与を巡り、エヌビディア社員が法的措置を受ける初の事例とみられる。台湾はエヌビディアの半導体製造や製品開発に欠かせない拠点で、緊密な提携先の台湾積体電路製造(TSMC)を頂点とする広範なサプライチェーンが集積している。

関係者によると、検察は計画の「中心人物」とするエヌビディアのチャン被告について、文書偽造と背任の罪で懲役5年を求刑している。

台湾当局はエヌビディア自体の不正行為は指摘していない。ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)はこれまで、AI半導体密輸の証拠を目にしたことはないと述べていた。ただ、米国からアジアにかけて検察当局が複数の事件を起訴する中、同社は姿勢を軟化させている。

チャン被告が7月に初めて拘束された後、同社の広報担当者は発表資料で「密輸は論外だ」と表明した。チャン被告の拘束や雇用状況について具体的なコメントはしなかった。「当社製品は主に、OEM(相手先ブランドによる生産)企業を含む知名度の高い提携先に販売しており、そうした企業と協力して、全ての販売取引が米輸出管理規則を順守するよう徹底している」と説明した。

スーパー・マイクロのようなOEM企業は、エヌビディア製半導体をサーバーに組み込み、AIモデルの学習や運用に使うデータセンターへ数千台単位で設置する。

台湾の検察当局が今夏、捜査の一環としてスーパー・マイクロ社員2人を拘束し、別の2人に出境制限を課した後、同社は「法律に違反する者には一切容赦しない」と表明。捜査結果が出るまで4人全員を休職扱いにした。

関係者によると、台湾はエヌビディアとスーパー・マイクロの社員以外にも、4社の幹部社員を起訴した。スーパー・マイクロ製品を販売する青雲国際科技(アルバトロン・テクノロジー)、密輸されたエヌビディア製品の最終利用者とされる飛虎科技(フライング・タイガー・テクノロジー)のほか、中国顧客の手配や実際の輸送を支援した別の2社だ。

青雲国際と飛虎にコメントを求めたが、直ちに返答はなかった。残る2社についてはブルームバーグは連絡を取れなかった。

密輸疑惑の手口

起訴状で実名が明らかにされていない関係者について事情を知る複数の関係者によると、検察当局は以下のような手口だったとみている。ブルームバーグは事実関係を独自に確認しておらず、裁判で立証されるまではあくまで当局の主張となる。

計画は25年2月に始まった。起訴状によると、飛虎のオーナーとゼネラルマネジャーは、密輸する機器の「中継地点とする目的」で日本に会社を設立。その後、「不明な手段」を通じ、エヌビディアが半導体購入を認めた企業のリストに飛虎を登録した。

2人はスーパー・マイクロの営業担当上級ディレクター、青雲国際のゼネラルマネジャー、台湾のデータセンター運営会社である是方電訊(チーフ・テレコム)のプロジェクトマネジャーと協力。飛虎が購入予定の機器を収容するのに十分なスペースを是方電訊の施設で借りているように「偽装」した。その上で、エヌビディアのチャン被告に半導体の割り当てを申請した。

ただ、起訴状によると、大きな障害があった。スーパー・マイクロの台湾子会社は、同社とエヌビディアの担当者による審査を通過していない企業にはサーバーを販売しない。8台以上の販売では現地監査も必要となる。

このため9月、エヌビディアのチャン被告と起訴されたスーパー・マイクロ社員の1人は、それぞれの台湾拠点から「事情を知らない」社員を伴い、是方電訊を訪問。飛虎が実際にはサーバーを収容するのに十分なスペースを借りていない事実を意図的に隠した。

チャン被告はその後、現地調査を完了したとエヌビディア幹部に伝え、飛虎の注文承認を求めた。スーパー・マイクロは同社へのサーバー130台の販売に同意し、3回に分けて納入した。

26年初めには、被告の一部がこのうち40台を社名非公表の中国企業1社に販売する手配をした。飛虎名義で、一部は中国に直接、残りはインドネシア経由で輸送した。

さらに34台は、起訴されたもう1人のスーパー・マイクロ幹部との関係を通じて関与するようになったロング・ウィンズという会社が輸出した。同社は別の中国企業による購入を仲介し、サーバーをインドネシアと日本に分けて送り、中国へ輸送した。

台湾当局は、飛虎が残り56台を虚偽書類で日本へ輸出しようとする前に計画を突き止めた。

台湾当局が計画を摘発した数日後、ジェンスン・フアンCEOは台北入りした。当時、台湾当局が拘束していたのは3人のみで、エヌビディア製半導体を搭載したスーパー・マイクロのサーバーを台数非公表で押収したと発表していた。

フアンCEOは記者から、同様の事態を防ぐためエヌビディアにできる対応はあるかと問われ、同社は規則の説明を「厳格に」行っていると強調。その上で、スーパー・マイクロが対応を強化すべきだとの見方を示した。

スーパー・マイクロは、自社の方針はエヌビディアなどと足並みがそろっていると反論し、業界全体での解決策が必要だと訴えた。

原題:Taiwan Indicts Nvidia Manager Following Chip Smuggling Probe (2)(抜粋)

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