米巨大IT企業の一部でキャッシュフローが悪化していることを投資家が懸念しているとしても、その気配は米株式市場の値動きからはうかがえない。米国株は再び過去最高値圏で推移している。

グーグルの親会社アルファベットが7月22日に発表した4-6月(第2四半期)のキャッシュフローは、四半期ベースで上場後初めてマイナスになった。株価はいったん下げたものの、発表時点と比べると、9%強上昇している。

メタ・プラットフォームズが29日に公表した4-6月期のフリーキャッシュフローも約4年ぶりの低水準となったが、株価は発表時をやや上回る水準で推移している。メタは今年の残りの期間にキャッシュフローがマイナスとなる見通しだ。

市場を代表する企業で、かつて潤沢だったキャッシュフローが急速に細っている状況を投資家が気にとめていない理由について、ハートルのブラッド・コンガー最高投資責任者(CIO)は、現状は一時的で、近く再びプラスに転じるという思い込みがあるからだとみる。

4-6月期の投資リポートで、「それは都合のよい幻想ではないか」と疑問を投げかけた。

コンガー氏は、潤沢な資金を生み出していたAI注力企業が、今や借り入れや債券発行で資金を調達する側に回ったことで、「見知らぬ人の親切」に頼る状況になりつつあると警鐘を鳴らす。これはテネシー・ウィリアムズの戯曲「欲望という名の電車」で主人公ブランチ・デュボアが最後に口にする有名なせりふを踏まえた表現だ。

コンガー氏はインタビューで、「(資金を出そうという)誰かの意思に頼ることになる。ハイパースケーラーの社債は、米国債に対する上乗せ利回り(スプレッド)が拡大している」と指摘。「投資家がこうした投資の回収を以前ほど確信できなくなっていること」を示すと話した。

世界の市場では、AI関連で約5700億ドル(約89兆9000億円)の債務が積み上がった。その多くは、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、アルファベット傘下のグーグルなど、かつてない規模でデータセンターを建設するハイパースケーラーが発行している。

こうした資金調達は始まったばかりだ。シタデル・セキュリティーズは、AIキャンパスで使用される半導体への投資資金を賄うため、2028年までに公募市場と私募市場で新たに5000億ドル超の負債による資金調達が行われると予測する。投資適格債デスク担当アナリスト責任者、ジェフ・イーソン氏によると、この規模は28年までにブルームバーグの米投資適格債指数の5%以上を占める見通しだ。

コンガー氏はさらに、日本経済新聞が先月公表したリポートにも言及した。米ハイパースケーラー5社の簿外の支払い義務は、計約1兆6500億ドルに達すると日本経済新聞は試算した。

アルファベットとメタの株価が決算発表後の下落から持ち直した背景には、中国勢が開発した低コストAIモデルが計算需要を押し上げ、その需要に応えられる設備を持つ企業が勝者になるという投資家の見方があるとコンガー氏は指摘。ただ、この見方には「疑問が残る」としている。

一方で、異なる見方もある。ウェルズ・ファーゴの株式ストラテジスト、オソン・クォン氏は、先週発表されたハイパースケーラー各社の決算について、「AIを巡る弱気論の多くを打ち消した」と分析。AI向け設備投資サイクルが始まって以降、追加投資に対する収益率は低下したものの、なお過去10年平均を上回っているという。

クォン氏は、「決算内容は非常に良好だった」と述べた。ハイパースケーラーの追加投資1ドル当たりのリターンは約25%と試算し、「なお極めて健全な水準だ」と語った。

原題:AI Trade Is In ‘Kindness of Strangers’ Phase, Says One CIO (1)(抜粋)

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