ソフトバンクグループの株価が今週、正念場を迎える。投資家が6日の決算発表で、同社のAI関連事業の価値が多額の借り入れを伴う米OpenAIへの投資にとどまらないことを示す材料を求めているためだ。

ソフトバンクGは6日、2026年4-6月期(第1四半期)決算を発表する。市場の関心事はロボティクスやデータセンター、エネルギー分野などAIインフラ全体に関わる案件の進捗(しんちょく)だ。進展が見られれば、約650億ドル(約10兆円)に上るOpenAIへの出資資金の調達を巡る懸念を和らげる可能性がある。同社の新規株式公開(IPO)に延期観測が浮上する中でその意味合いは特に大きくなり得る。

ソフトバンクGの孫正義会長兼社長

ソフトバンクGの決算は、AI関連株全体の先行きを占う試金石にもなりそうだ。AIインフラに対する巨額投資の持続性や収益性への懸念から関連株は7月に幅広く売られ、その後も勢いを取り戻せずにいる。

オンライン取引プラットフォームのトラドゥでシニア金融アナリストを務めるニコス・ザボーラス氏は、現在の市場環境で成長鈍化の兆候が示されれば市場は厳しい反応を見せるだろうと話す。一方、「堅調な業績となれば、AIへの積極的な経営資源のシフトが十分に計算された戦略だと市場を安心させることも十分に可能だ」とみている。

ソフトバンクGは日本のAI関連株に対する投資家心理を映す代表的な銘柄とみられている。6月には一時、時価総額で国内首位となったが、現在は3位に後退した。株価は6月2日の過去最高値から約40%下落したものの、年初来ではなお約19%上昇している。

アナリストらによると、市場の信認を取り戻す上で鍵となるのは、出資先であるデジタルインフラ企業の米SBエナジーと新たなAI・ロボティクス企業「Roze」の米国上場計画について、より具体的な見通しを示すことだ。両社が上場すれば、ソフトバンクGはAIインフラブームを支える発電やロボティクス分野を強化できる。

香港のサンフォード・C・バーンスタインのマネジングディレクター、デビッド・ダイ氏は、今回の決算で両社の上場時期について具体的な説明がなされる可能性は低いとみる一方、上場に関して何らかのアップデートがあれば前向きな材料になるとの見方を示す。

BTIGのアナリスト、ジェシー・ソベルソン氏によると、スイスのABBのロボティクス事業買収に関しても追加情報があれば、投資家心理の改善につながりそうだ。ソフトバンクGは昨年10月に同事業の買収を発表、26年半ばから後半にかけて手続きが完了する見通しを示した。

ソベルソン氏は最近のリポートで、買収によりソフトバンクGは「収益基盤と顧客基盤を持つ大規模な産業用ロボティクス事業を獲得し、AIを現実世界の自動化へ組み込む道筋がより明確になる」と指摘。「フィジカルAI」と呼ばれる分野へのエクスポージャー拡大につながると分析している。

バーンスタインのダイ氏は、半導体設計会社アーム・ホールディングス株の上昇も、ソフトバンクG株への信頼回復を後押しするとみている。AIブームで同社の新型中央演算処理装置(CPU)に対する需要が急増するとの期待から、アーム株は6月までの半年間で3.2倍になった。

アーム株はその後調整しているが、ダイ氏はアームの自社開発CPUによる収益は29年ごろに実現すると予測し、株価は次第に回復すると見込んでいる。ソフトバンクGにとっては既に上場しているアームの方が企業価値に占める割合が大きいため、OpenAIを巡る懸念が株価に及ぼす影響は限られるとも話した。

とはいえ、多額の借り入れに支えられたOpenAI投資に対する懸念は依然として強い。ソフトバンクGは3月、この投資資金を確保するため総額400億ドルのつなぎ融資を契約。7月には新たに21社の金融機関が融資団に参加することが明らかになった。

中国勢との競争激化やAIのセキュリティーを巡る課題、株式市場のボラティリティーの高まりがOpenAIのIPO見通しに影を落とす中、この資金調達スキームを警戒する向きは少なくない。ブルームバーグの集計データによると、ソフトバンクGの5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は年初から約70ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)拡大し、およそ350bpと日本企業で最も高い水準となっている。

BTIGのソベルソン氏は「投資家にとって最大の関心は、ソフトバンクGが必要資金や担保余力、OpenAI関連の資金調達の状況についてどこまで説明できるかだ」とリポートで指摘。決算では経営陣がこれらの点に言及すると予想する一方、OpenAIのIPO時期について具体的な説明は限られる可能性が高いとみている。

一方、バーンスタインのダイ氏は、ソフトバンクGはAIインフラ構築の幅広い分野にエクスポージャーを持つため、資金繰りへの懸念は長期的なファンダメンタルズの問題ではなく、「中期的な課題」にとどまると言う。

「AIが期待された成果を上げていないことを示す証拠は、現時点では誰も持っていない」と同氏は指摘。その上で、ソフトバンクGがOpenAI関連の話題を超えた企業価値があると投資家を納得させることができれば、「日本企業の時価総額ランキングで再び首位に返り咲く可能性は十分ある」と語った。

ブルームバーグの集計データによると、ソフトバンクG株に対し、アナリスト16人が「買い」、6人が「中立」、1人が「売り」の投資判断を示している。12カ月後の平均目標株価は8603円で、東京市場の4日終値の5228円を上回っている。

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