(ブルームバーグ):6月の名目賃金の伸び率は5カ月連続で3%を超えた。高水準の春闘の結果が反映される中、着実な増加が続くとみる日本銀行の見通しに沿う内容となった。物価変動を反映した実質賃金は6カ月連続で前年を上回った。
厚生労働省が5日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は前年同月比3.4%増だった。5カ月連続で3%を超えるのは1992年3月以来。基本給に相当する所定内給与は全体が3.4%増、パートタイムを除く一般労働者が3.6%増と、伸び率はいずれも6カ月連続で3%以上となった。
「持ち家の帰属家賃を除く」消費者物価指数(CPI)に基づく実質賃金は1.6%増だった。CPI総合で算出したベースでは1.7%増と、7カ月連続のプラスとなった。
日銀は、労働需給の引き締まった状態が続く中、「賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持され、中長期的な予想物価上昇率は上昇していく」とみている。先月末の金融政策決定会合では、物価が2%目標から上振れるリスクに言及した。堅調な賃金動向は日銀の利上げ路線を支える材料となり得る。
大和証券の南健人シニアエコノミストは、今回の結果は「賃上げモメンタム(勢い)の維持を確認できる内容」と指摘。日銀の見通しに沿っている上、物価の上振れリスクに日銀が注意を払っており、「利上げペースは加速せざるを得ないだろう」と語った。次回利上げは10月が有力だが、9月の可能性も高まっているという。
植田和男総裁は会合後の会見で、追加利上げのタイミングやペースは、中東情勢やAI関連需要、為替相場の変動の影響など、見通しが実現する確度やリスクを点検しながら適切に判断していくと述べた。「金融環境が緩和的に過ぎるというふうに思えば、利上げのペースを速めるということも、十分あり得る」との見解も示している。
市場では日銀による追加利上げ予想の前倒しが進んでいる。足元の金利スワップ市場では、次回9月会合での利上げ予想が約57%、その次の10月会合までは約97%と前倒しが進んでいる。日銀会合前の7月29日の段階では、それぞれ30%弱、80%弱だった。
連合が先月発表した今春闘の最終回答集計によると、定期昇給を含む平均賃上げ率は5.01%と、目標の「5%以上」を3年連続で実現した。毎月の基本給を引き上げるベースアップ(ベア)は3.50%で、「3%以上」の目標に達した。
6月の実質賃金の上昇は、物価の伸びが政府の物価高対策などで抑制されていることも影響した。実質賃金の算出に用いるCPIは、持ち家の帰属家賃を除くベースで1.9%上昇、総合は1.7%上昇と、いずれも6カ月連続で1%台にとどまった。生鮮食品を除く食料の伸びが鈍化し、押し下げ方向に寄与した。
他のポイント
- 所定内給与と特別に支払われた給与の増加が全体を押し上げた主な要因-厚労省
- 特別に支払われた給与は3.5%増
- エコノミストが賃金の基調を把握する上で注目するサンプル替えの影響を受けにくい共通事業所ベースでは、名目賃金は4.4%増。24年12月(5.3%増)以来の高い伸び-前月3.1%増
- 所定内給与は、全体が3.0%増、一般労働者で2.9%増
(5段落目にエコノミストコメント、7段落目に市場の利上げ予想を追加して更新しました)
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