(ブルームバーグ):円相場の下落に歯止めをかけようとする日米の協調は、数十年ぶりの緊密な連携となっているようだ。両国当局は、1日の取引額が9兆5000億ドル(約150兆円)に上る外国為替市場で、円安圧力に共同で対抗している。
円が対ドルで急騰した30日のニューヨーク外国為替市場では、日本の通貨当局が約8兆4500億円規模の円買い介入を実施した可能性がある。市場関係者によると、米国の通貨当局も同日、市場参加者に相場水準を確認する「レートチェック」を行った。
ベッセント米財務長官は口先介入も行った。ヘッジファンド時代に日本市場への深い知見を培った同長官は30日、FOXビジネスとのインタビューで、円相場は「著しく過小評価されている」ように見受けられるとの認識を示した。また為替相場の「過度な変動」は望ましくないとも語った。
楽天証券経済研究所の愛宕伸康チーフエコノミストは、ベッセント氏の影響力は非常に大きいと指摘。米国は日本の為替介入に対し、以前より協力的になっているとの見方を示した。

30日の一連の動きが、米連邦公開市場委員会(FOMC)と日銀の金融政策決定に挟まれたタイミングで行われたことも、市場参加者の注目を集めた。日米協調は為替介入だけでなく金融政策にも及んでいるのではないかとの見方が広がった。
日本側の当局者は31日、介入の有無については明言を避けた一方で、米国との連携については積極的にアピールした。三村淳財務官は「米当局からは単なる精神的支援を超える」ものを得ていると語った。片山さつき財務相も、ベッセント長官の発言を歓迎した。
米財務省は、為替を巡る日米の協調についてコメントを控えた。
米国債市場への懸念
ニューヨーク時間31日の外国為替市場で、円は対ドルで上げ下げを繰り返す展開となっている。前日の介入を受けた上昇の勢いが一服し、日本当局が円安進行を食い止めるため再び介入に踏み切るとの観測も浮上している。
エコノミストやアナリストの間では、高市早苗首相の政策が円安の一因になっているとの見方が出ている。防衛費の増額や食料品に対する時限的な消費税減税といった積極財政への懸念が、円相場の重しとなっている。
米国がどの程度まで日本を支援するかも不透明だ。日本が円買い介入のためにドルを売るには、保有する米国債の一部を売却する必要がある。米国債利回りを押し上げかねず、米国がそれを歓迎するとは考えにくい。今年に入って日本国債の急落が米国債市場に波及した際には、ベッセント氏は片山氏に強い不満を伝えた。
円相場を左右するもう一つの重要な要因は、日米の金利差だ。
日銀の役割
日銀は31日、政策金利を1%に据え置いた。植田和男総裁は会見で、為替相場の変動が「物価に与える影響が従来よりも大きくなっている」と指摘。「金融環境が緩和的に過ぎるというふうに思えば、利上げのペースを速めるということも、十分あり得る」との考えを示した。
ベッセント氏は同日、8月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議(米ノースカロライナ州アッシュビルで開催)で、植田総裁と会談することを楽しみにしているとソーシャルメディアに投稿。日銀について、金融政策や金融システムの安定に強いコミットメントを示していると評価した上で、「引き続き強固な関係と緊密な連携を維持している」と述べた。
こうした日米の連携は今年1月に新たな局面を迎えた。米当局が日本当局とともに円相場のレートチェックに加わり、円相場は数時間で1ドル=159円から152円へ急上昇した。日銀の元為替担当者の1人は、「米国による円のレートチェックなんて聞いたことがない」と述べ、米国の対応に驚きを隠さなかった。
今回の介入が日米の金融政策決定に近いタイミングで実施されたことも、市場参加者の間で議論を呼んでいる。

楽天の愛宕氏は、為替相場だけではなく、金融政策面でも暗黙の協調を検討しているのではないかという印象を拭えないと指摘。表立ってではないにせよ、円安の進行を防ぐため、金融政策でも歩調を合わせていくだろうと述べた。
植田総裁はまた、インフレに対し政策が後手に回る「ビハインド・ザ・カーブならないようにする」と強調した。ベッセント長官は昨年、こうしたリスクに言及していた。次回の金融政策決定会合はFOMCが9月16日、日銀が9月18日となっている。
今回の介入が過去の介入よりも大きな意味を持つかどうかは、FRBと日銀の金融政策の方向性に加え、高市首相の政策運営に対する市場の見方に大きく左右されそうだ。
三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長は、財政拡張や日銀が後手に回るリスクへの懸念は変わっておらず、円安は止まらないだろうと指摘。その上で、介入は相場の水準やスピードを調整する手段に過ぎず、流れを反転させるのは難しいと述べた。
原題:US Backing of Japan Yen Actions Marks New Normal in Coordination(抜粋)
--取材協力:アリス・フレンチ、深瀬敦子、横山桃花、日高正裕、Carter Johnson.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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