(ブルームバーグ):韓国のSKハイニックス株が突然急落し、暗号資産業界は今週、高くつく教訓を得た。
28日、ソウル市場での取引開始直後、SKハイニックス株は前日終値を30%下回る水準に急落した。プレマーケット取引で、わずか1株が異常とみられる価格で約定したためだ。その後に成立した取引では価格が大幅に持ち直したものの、公開市場とは別の世界で取引していた一部投資家にとっては手遅れだった。
暗号資産交換業者ハイパーリキッドでは、SKハイニックス株に連動するデリバティブ(金融派生商品)の価格が約20%下落し、2分間で約6000万ドル(約98億円)相当のロング(買い持ち)ポジションが自動的に強制決済された。ブロックチェーンデータ分析会社アリウムが明らかにした。アリウムの推計では、900人余りの利用者に計1740万ドルの実現損失が生じた。
同デリバティブを開発したトレードXYZは発表資料で、「異常な値動きによって生じた強制決済損失を補償する」と表明した。
「システムは設計通りに機能したが、強制決済を受けた利用者が不満を抱くのは当然だ」とし、「今後は、極端な事象にも対応できるよう価格算定システムをさらに改善する」と述べた。
今回の問題は、暗号資産市場で急成長する永久先物取引が抱える構造的なひずみを浮き彫りにした。永久先物はデリバティブの一種で、株式のように24時間取引されない資産でも、レバレッジをかけて終日取引できる。伝統的な金融機関とデジタル金融企業はいずれも、株式や米国債、コモディティーなど幅広い資産を、こうした形でブロックチェーン上の決済基盤に取り込もうとしている。
「ブラックジャック台」
デジタル資産ファンド、セリーニ・キャピタルの創業者ジョルディ・アレクサンダー氏は、「永久先物取引の利用者は、原資産が取引される公式のカジノで賭けているわけではない」と指摘。「ブラックジャック台を囲み、台上で何が起きるかを巡って互いに賭けている」と述べた。
今回の強制決済を受け、ブロックチェーン上の価格算定に、誤操作による可能性がある取引も全て反映すべきなのか、それとも異常値を排除すべきなのかという問題が浮上している。
暗号資産ヘッジファンド、サード・アイの最高経営責任者(CEO)、ティアン・ゼン氏は「通常、大半の交換業者は複数の価格情報源を利用する。一つの情報源だけを使っていたとすれば、大きな問題になり得る」と話した。ただ、複数の価格情報源を使っていても、その一つに問題が生じれば、「高いレバレッジをかけた一部トレーダーのポジションが強制決済される可能性がある」と述べた。
さらに、「ブロックチェーン上で伝統的な金融資産を対象とする永久先物市場を構築していく過程の一部だ。市場は黎明(れいめい)期にあるものの、拡大している」と付け加えた。
トレードXYZは、SKハイニックス株の安値について、「実際に成立した取引に基づくもので、複数の独立系データ提供会社から配信された」と説明した。
外部取引所に関する前提も含め、価格算定方法の検証を急いでいるとも明らかにした。
トレードXYZは、ハイパーリキッドのブロックチェーン上で永久先物を開発する事業者の中でも、特に成功を収めている。
原題:One AI Chipmaker Trade Blew Up $60 Million in Crypto Bets(抜粋)
--取材協力:Matt Haldane.
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