神経工学の米スタートアップ(新興企業)、サイエンス・コープは加齢による失明の一疾患について、視力の一部を回復させる網膜インプラントの販売を欧州で開始する。同社は将来的に脳インプラントを市場投入することを目指しており、今回の網膜インプラント販売は重要な節目となる。

サイエンス・コープが開発した「Prima(プリマ)」は、初めて一般患者向け製品として提供される。このチップを眼底に装着し、専用の眼鏡と組み合わせることで、患者は視力の一部を取り戻すことが可能となる。

ホダック最高経営責任者(CEO)はインタビューで、「時に段階的であっても着実に可能性を広げていきたい。これは長く続く商用製品群の第一弾になってほしい」と述べた。

Primaは欧州連合(EU)基準の適合を証明するCEマークを取得したため、国ごとの追加承認を受けることなく欧州で販売できるようになった。

カリフォルニア州アラメダに本社を置くサイエンス・コープは、脳インプラント企業としてはイーロン・マスク氏率いるニューラリンクに次いで米国2位の企業価値と評価されている。この分野には世界の富豪から数十億ドル規模の投資や支援が集まっている。中国政府もこの分野を国家的な重点分野に位置付けており、今年は初の商用ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)を承認した。

サイエンス・コープは網膜インプラントに加え、人工的に設計したニューロンを用いて脳組織に接続するデバイスなど、他の神経技術も開発している。同社は4億8900万ドル(約800億円)を調達し、企業価値は15億ドルと評価されていると、3月にブルームバーグ・ニュースが報じた。

Primaの適応は加齢黄斑変性が進行した病態である地図状萎縮だ。ホダック氏によれば、欧州では数十万人が治療の対象になり得る。

加齢黄斑変性は網膜の一部が変性し、正面を見る能力が損なわれる疾患で、高齢者が視力を失う最も一般的な原因となっている。治療によって進行を遅らせることは可能だが、根治療法は存在しない。

ホダック氏によると、最初のPrima埋め込み手術は8月に、ドイツで実施する可能性が高い。今年中に数十人、来年には約200人への手術を想定している。価格はまだ決まっておらず、国や保険制度によって異なる見通しだと同社は説明している。

サイエンス・コープは米食品医薬品局(FDA)と協議を進めており、来年の市場投入を目指している。FDAは「人道的医療機器適用除外(HDE)」の申請を認める方針だと、同社が22日に明らかにした。HDEは希少疾患向けの医療機器を迅速に市場に投入するため、通常の承認要件が一部免除されている。

Primaは進行した加齢黄斑変性患者32人を対象とした研究で、26人の視力改善が確認されたことを受け、CEマークを取得した。この研究の論文は昨年、医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載された。この機器は物の形を見分ける能力(形態視)を改善し、患者は個々の文字や数字、単語を識別できるようになった。

原題:Retina Chip Designed to Restore Sight to Go on Sale in Europe(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.