世界の国債市場が、エネルギー価格の再上昇を受けて売り込まれている。今年の債券相場急落はすでに最悪期を脱したとみていた投資家は損失を被っており、各国中央銀行の信認が改めて試される展開となっている。

英国では今週、国債利回りが終値ベースで5%を上回る状態が、約20年ぶりの長期間に及んだ。ドイツ10年債利回りは2011年以来の高水準に上昇した。日本では24日、40年債利回りが10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、5年債利回りも2000年の発行開始以来の高水準となっている。米30年債利回りも2007年以来の高水準に迫っている。

売りの勢いは非常に強く、投資適格国の国債を対象とするブルームバーグ・グローバル国債指数の平均利回りは3.68%に上昇した。3年前のピークを上回り、2008年の世界金融危機以来の高水準だ。同指数は今月、3月以来最大の月間下落率となる見通しだ。

短期債から長期債まで利回りが同時に上昇する中、週末には地政学関連の新たな材料が出る可能性がある。来週は、米連邦準備制度理事会(FRB)、日本銀行、イングランド銀行(英中央銀行)など、主要中央銀行の政策決定も相次ぐ。

債券市場で売りがさらに進めば、世界の債務水準が持続不可能になるとの懸念が強まるほか、企業の借り入れコストが世界的に上昇し、株式からの資金シフトを促す恐れもある。

ニューヨークのアポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミスト、トーステン・スロック氏は、各国の国債市場で利回りが上昇していることについて、「多くの共通した要因が働いている。原油価格が上昇している。それはイングランド銀行にとっても、FRBにとっても、そしてもちろん、欧州中央銀行(ECB)にとっても問題となる」と語った。

世界の債券市場は今年、イラン戦争に伴うエネルギー価格の急騰で大きな打撃を受けてきた。イランと米国の停戦が定着したように見えたことで、原油価格は6月に急落したが、戦闘の再燃を受けて今月は再び上昇し、北海ブレント原油は23日に1バレル=100ドルを上回った。

不確実性

米国経済の底堅さも債券市場への圧力となっている。米国の雇用市場と成長率は堅調さを維持しており、FRBの今年の金融政策を巡る市場の予想は、利下げから利上げへと変化している。

市場参加者は、FRBのウォーシュ新議長による、情報発信のあり方の見直しにも対応を迫られている。フォワードガイダンス(金利の将来的な道筋の示唆)を減らそうとするウォーシュ氏の姿勢により、予想より早く政策変更が起きる可能性が高まっている。市場は28、29両日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが行われるとの見方を強めており、現在は3分の1の確率で利上げが織り込まれている。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)の米金利戦略責任者、マーク・カバナ氏は、「ウォーシュ氏が市場にフォワードガイダンスを示したくないと考えていることは分かっており、それ自体は問題ない」としたうえで、「その場合、市場はFRBが取るべきだと考える政策結果をより自由に織り込み、場合によっては、FRBに利上げを検討させるような結果まで織り込む余地が大きくなる」と指摘する。

FRBがフォワードガイダンスを減らすことで、次回の政策決定は利上げでも据え置きでも、市場にはサプライズとなる可能性がある。こうした不確実性を反映する債券市場の予想変動率指数「ICE BofA MOVE指数」は、23日に約2カ月ぶりの高水準へ上昇した。

何より重要なのは、インフレは制御下にあるとFRBが市場を納得させることだ。世界の中央銀行は、コロナ禍後のインフレ急騰への対応が後手に回った。債券ファンドは、今なおその影響から立ち直っていない。ブルームバーグ・グローバル国債指数は、2021年初めに付けたピークを今も約20%下回っている。

バークレイズのアンシュル・プラダン氏らは23日のリポートで、「利上げが実施されれば、市場はターミナルレートの見通しを引き上げ、イールドカーブはフラット化するだろう。金利据え置きとなっても、理由が十分に説明されなければ、長期金利はさらに上昇する可能性が高い」との見通しを示した。

共通の状況

アジアでも債券は売られている。日本では40年債利回りが4%を上回り、指標となる10年債利回りも1990年代以来の高水準に近づいた。来週の金融政策決定会合を前に、政策当局者が利上げペースの加速に前向きな姿勢を示しているにもかかわらず、市場は日銀の金融引き締めが、円安を背景としたインフレ圧力を抑えるには不十分と懸念している。

英国では、イングランド銀行が年末までに2回利上げするとの予想が裏付けられるかどうかを見極めようと、市場は経済見通しとベイリー総裁の発言に注目している。イングランド銀は、エネルギー価格上昇によるインフレリスクと、軟調な労働市場や低迷する景気とのバランスを取ろうとしている。

ロンドンのTDセキュリティーズのストラテジスト、プージャ・クムラ氏は、「中央銀行にとって非常に難しい状況だ。現在のハードデータはすべて過去を映すものだからだ。各国中銀は厳しい立場に置かれており、これは世界共通の状況だ」と語った。

影響を受けている商品の一つが、長期米国債への投資手段として広く利用されているブラックロックの上場投資信託(ETF)「iシェアーズ20年超米国債ETF」だ。同ETFは過去1カ月で約5%下落し、2020年以降では価格が半分以下になっている。

ニューヨークのムーディーズ・レーティングスのチーフ・クレジット・オフィサー、アツィ・シェス氏は、「構造的に高いインフレと、それに伴う高金利、さらに財政赤字の拡大、そして世界的な不確実性が一段と公的部門に転嫁され、政府のバランスシートにのしかかる可能性」という、「新たなマクロ経済の局面に入ったと考えている」と語った。

原題:Global Bonds Are Reeling as Oil Surge Renews Inflation Threat(抜粋)

--取材協力:Matthew Burgess.

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