(ブルームバーグ):国内では、円安やインフレへの備えとして高級宝飾品を買う動きが強まっている。日本百貨店協会によると、全国百貨店の美術・宝飾・貴金属の売上高は、1-6月に前年同期比19%増の約3300億円となり、2008年の調査開始以来、過去最高を記録した。
会社員の早川友紀さん(33)は、ボーナスでフランスの高級宝飾ブランド「ショーメ」のネックレスを購入した。ゴールド製でダイヤモンドがあしらわれており、価格は60万円ほどだ。「飽きの来ないデザインで長く使える物、値段が下がりにくいブランド商品を比較して選んだ」と説明する。
円相場は一時1ドル=164円台に迫り、1980年代以来の安値圏で推移。円安による輸入原材料やエネルギー価格の上昇に加え、人手不足に伴う賃金上昇も、物価上昇圧力となっている。インフレが長引けば現金の実質的な価値が目減りしかねないとの懸念から、価値を保ちやすいとみられる宝飾品に資金を振り向ける動きが出ている。
海外ブランド品や高級腕時計の販売を主力としてきたハピネス・アンド・ディは、金や貴金属の需要拡大を取り込むため、事業の軸足をジュエリーへと移している。前原聡社長は、「日本の通貨の力が弱くなってきているから、ゴールドという現物を持っておく」流れがあると話す。資産として金を保有する需要の高まりが、自社の事業にとって大きな追い風になっているとみている。
宝飾品の好調さは、百貨店売上高でも際立つ。1ー6月の百貨店全体の売上高が3.2%増だったのに対し、美術・宝飾・貴金属はこれを大きく上回る伸びとなった。一方、百貨店の免税売上高は3.2%増にとどまっており、販売増を支えているのは訪日客ではなく国内消費者とみられる。
生活費が上がる中、消費者は日常の支出を抑える一方、趣味に使うお金については資産性も意識し、長く使える商品を選ぶなど、支出にメリハリをつけているようだ。ショーメのネックレスを購入した早川さんは「節約できるところは節約してご褒美も大事。長く使えるならこれくらいの価値があると自分に言い聞かせている」という。
消費の二極化が進み、価値が目減りしにくい商品への関心が高まっている。コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニー・ジャパンのパートナー、パーキンス薫氏は「Tシャツはベーシックなもので十分と思う一方で、長く使えるものにはお金をかけたいという意識があり、自分の資産として保有できるものを求めている」と話す。
ブルームバーグ・インテリジェンスのキャサリン・リム氏も、生活費の上昇を受け、日本では消費者が自由に使えるお金の使い道を慎重に選ぶようになり、ハンドバッグよりブランドジュエリーを選ぶ傾向が強まっていると指摘する。「円安が進む中、一部の消費者はこうした商品を値上がりが期待できる資産とみなしている可能性がある」とリポートで分析した。
日本での宝飾品需要の強さは、同事業の比重が高い世界の高級ブランド各社にも追い風となっている。カルティエを擁するリシュモンの4-6月期売上高は前年同期比20%増と、市場予想を大きく上回った。同社によると、日本の売上高は全地域で最も高い伸びを示し、ジュエリー部門がけん引した。前年同期の日本市場は減収だった。
グッチを傘下に持つケリングも、第1四半期の日本におけるジュエリー売上高が前年同期比57%増加した一方、ファッション・レザーグッズ部門は14%減少したと発表した。高級品の中でも、宝飾品とそれ以外で明暗が分かれている。
--取材協力:アリス・フレンチ.
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