米Z世代の間では、暗号資産(仮想通貨)や予測市場に熱狂する若者がいる一方で、将来の安心を求めて老後資金をコツコツと積み立てる動きも広がっている。

ナタリー・バドゥールさん(26)は、ペット用品大手チューイーで商品企画の仕事をしながら、自社株の売却分を含め仕事で得た収入の半分以上を貯蓄に回し、約30万ドル(約4900万円)を蓄えた。ルームメイトと同居し、めったに外出せず、自炊の生活を送る。愛車は18年落ちだ。将来に経済的な安心を得られるのであれば、こうした犠牲を払う価値はあると話す。

「若いうちに一歩先に進むことが常に私にとって大切だった」とバドゥールさん。「望む人生を実現するための鍵だと信じてきた」と語る。

ナタリー・バドゥールさんの愛車は2008年モデルのホンダCR-Vだ(フロリダ州フォートローダーデール)

Z世代の中には、リスク資産に傾倒する若者とは対照的に、バドゥールさんのように老後に備えることを重視する若者が増えている。早い段階で退職年金口座を開設し、拠出上限額まで毎年積み立てる「リタイアメント・マキシング」と呼ばれる動きだ。外見磨きに注力する「ルックス・マキシング」や気分や生活の心地よさを追求する「バイブス・マキシング」に続く、新たな潮流となっている。

もっとも、こうした貯蓄志向の若者も、「金融ニヒリズム」に傾き、高リスク投資に走る若者と同じプレッシャーに反応しているのかもしれない。

全米の多くの地域では、不動産価格の上昇と金利高によって、若年層の住宅購入はますます難しくなっている。米社会保障制度の信託基金は2032年に枯渇する見通しだ。AIは、とりわけ初級レベルの職種を中心に、多くの雇用を奪う恐れがある。こうした状況を受けて、働いている若者にとっては、今できる限り多く貯蓄することが、将来の安心と自由につながると考えられているようだ。

チャールズ・シュワブが2024年に顧客を対象に実施した調査によると、Z世代は平均19歳で貯蓄や投資を始めている。これに対し、X世代は32歳、ベビーブーマー世代は35歳だった。

また、バンガード・グループのデータによると、昨年に個人退職勘定(IRA)へ拠出したZ世代の約3分の1は、法定上限額の7000ドルまで積み立てた。もっとも、10代を含むZ世代の過半数はまだIRA口座を保有していないという。

それでも、米投資信託協会(ICI)とシカゴ大学が2024年に公表した報告書では、Z世代でも年齢が高い層は過去の世代を「上回るペース」で退職資金を積み立てていることが分かった。インフレ調整後でみると、退職口座の資産額は同じ年齢だった1989年時点のX世代世帯の約3倍に達している。

経営コンサルティング会社に勤務するシカゴ在住のグレース・コルビンさん(26)は、「必ずしも仕事を辞めるつもりはないが、本当にやりたくないことにはノーと言えるようになる」と話す。黄金の手錠(離職を防ぐための高額な金銭的なインセンティブ)に縛られることなく、営業目標や解雇を心配せずに家族と過ごす時間を増やせるという。

コルビンさんは本業に加え、ソーシャルメディアで貯蓄術を発信しており、これまでに10万ドルを蓄えた。フォロワー3万3100人の大半は同年代で、最も多く寄せられる質問は「どうやって貯蓄を始めればよいか」だ。将来のための貯蓄を考えるだけで身動きが取れなくなると話す人も少なくない。

コルビンさんの友人の中には、なぜそこまで貯蓄するのか理解できず、資産目標を達成した後は何をするつもりなのかと尋ねる人もいる。世界情勢の先行きを悲観し、あえて貯蓄をしないという選択をする人もいるという。コルビンさんは、そうした考え方も、対照的に貯蓄に励む自身の姿勢も、世界的な金融危機で親が職を失う姿を見て育った世代としては自然な反応だと考えている。

コルビンさんは「どちらも、同じ経済的不安に対するZ世代なりの反応だと思う」と語った。

原題:Gen Z’s ‘Retirement-Maxxers’ Choose Savings Over Doom Spending(抜粋)

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