米30年債利回りが5%を上回る状態が続いている。こうした高水準がこれほど長く続くのは金融危機以来だ。背景には、米政府債務の拡大や根強いインフレに対する投資家の懸念がある。

ブルームバーグの集計によると、今年これまで30年債利回りが5%を上回った日は27営業日と、全体の約2割に達した。これは2007年以来の多さとなる。同年は50営業日に達していた。

もっとも、今回は2007年とは事情が異なる。現在の米政策金利は当時より150ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い。それにもかかわらず、投資家は米30年債を保有する見返りとして、サブプライム住宅ローン問題が表面化し始めた当時より高い利回りを要求している。

30年債利回りの上昇が続く背景には、財政悪化への懸念の高まりに加え、AIインフラ整備に向けた資金調達で社債発行が急増していることがある。こうした状況は、1980年代に投資家が国債を売って利回りを押し上げ、政府に財政規律を迫った「債券自警団」の再来を思わせる。

2007年以降、米国債市場の規模は4兆5000億ドルから31兆ドルへ拡大した。米政府債務の国内総生産(GDP)比も2倍超となり、100%を上回った。長年にわたる財政支出の拡大を背景に、年間の利払い費は1兆ドルを超えている。

2020年の新型コロナ禍以降、巨額の政府債務を抱えるようになったのは米国だけではない。それでも米30年債利回りは、英国を除けば、日本やフランスなど財政赤字や政府債務の大きい国を上回る水準で推移している。格付け会社フィッチ・レーティングスは最近、米国の債務負担が同じ「AA」格付けの他国を「大きく上回っている」と警告した。

長年にわたり米国債への強気姿勢を貫いてきた米資産運用会社ホイジントン・インベストメント・マネジメントも最近、弱気に転じた。同社は最新の投資家向け四半期リポートで、財政赤字の拡大や資本需要の増加といった「より広範な構造的背景」を挙げ、「インフレと米長期債利回りがともに上昇基調をたどることを示唆している」と指摘した。

AIブームで需給に変化

AIインフラ関連では5000億ドルを超える資金調達が進み、米国債はこうしたAI企業の社債と投資資金を奪い合う構図となっている。

バンガード・キャピタル・マネジメントのシニアポートフォリオマネジャー、アレックス・ペイン氏は「ここ数年は30年債利回りが5%を超えるたびに、すぐ買いが入っていた」と指摘。そのうえで、30年債の主な買い手だった年金基金や保険会社は以前より投資先の選択肢が広がっており、「利回りはまだピークに達していないかもしれない」と語った。

資産運用会社ヌビーン・アセット・マネジメントの債券戦略責任者、トニー・ロドリゲス氏も同様の見方だ。「発行体が政府であれ、ハイパースケーラーであれ、それ以外の企業であれ、長期の資金調達では同じ投資家を巡る競争が激しくなっている」と述べた。

運用会社は、財政悪化を背景に30年債利回りが急騰するリスクに備え、イールドカーブの中間ゾーンに当たる5-7年債を選好する傾向にある。

ハバーフォード・トラストの共同最高投資責任者、ハンク・スミス氏は「非課税運用の顧客向けでは、リスクとリターンが見合わないと考えているため、10年超の債券には投資しない」と述べた。同社はここ数カ月、短期国債への投資を増やしている。

同氏は、過去20年間で顧客から繰り返し受けた質問は「政府債務の拡大は問題にならないのか」というものだったと振り返る。それに対する答えはいつも同じで、「この国の債務が問題になれば、債券市場が教えてくれる」だ。

「債券市場だけでなく株式市場にとっても最大のリスクは、債券自警団が復活する可能性だ」と同氏は語った。

原題:US 30-Year Yield Raises Alarm in Longest Run Above 5% Since 2007(抜粋)

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