米半導体業界で深刻な人材不足が懸念される。米国全体で高度な技能を持つ人材の不足が拡大しており、数十億ドル規模の新半導体工場建設に遅れが生じる恐れがある。業界がリソースを持ち寄り、政府が資金支援を続けなければ、将来の半導体生産も制約される可能性がある。新たなリポートで明らかになった。

米コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーと半導体の国際業界団体SEMI、全米科学財団が、雇用主調査を含む新たな分析をまとめた。それによると、人材不足は新施設の計画が集中するテキサス州、カリフォルニア州、アリゾナ州、ニューヨーク州、オハイオ州などで最も深刻になる見通し。7日公表の調査では、熟練労働者の不足は2030年までにフルタイム換算で最大15万7000人に達すると予測された。

人材不足の影響は、台湾積体電路製造(TSMC)やマイクロン・テクノロジー、サムスン電子の計画に及ぶ恐れがある。TSMCはアリゾナ州で半導体製造・パッケージング施設12カ所に最大2650億ドル(約43兆円)を投じる計画で、マイクロンもニューヨーク州でメモリー半導体生産に1000億ドルを投資する予定。サムスンはテキサス州にロジック半導体施設を建設している。

インテルによるオハイオ州での280億ドル投資も既に遅れているが、生産が本格化すれば人手不足に直面する見込みだとリポートは指摘した。

人材面の課題は、米国内の製造拠点を拡大し、数十年前にアジアへ移った生産能力を取り戻そうとする半導体メーカーにとって、新たな障害となっている。また、銅や鉄鋼、セメントなど幅広い建設資材の価格上昇は、トランプ米大統領の経済政策の柱と位置付けられる新施設の建設費を押し上げる恐れがある。

半導体業界で人手不足が見込まれる一方、AIブームと企業のAI投資競争は、テクノロジー業界など他分野で人員削減の一因とされている。人員削減計画を追跡するチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると、今年これまでにAIを理由に発表された削減は約10万2000人に上る。

人材育成の強化

リポートによれば、半導体業界の人材不足に早期に対応しなければ、企業による数十億ドル規模の投資計画だけでなく、22年の国内半導体業界支援法(CHIPS法)に基づく国内生産の押し上げを目指す連邦補助金の効果も損なわれる恐れがある。政府資金の継続、半導体関連のカリキュラム拡充、半導体業界でのキャリアに早い段階で触れる機会の提供など、幅広い解決策がリポートで提言された。

分析に関わったマッキンゼーのパートナー、テイラー・ラウンドツリー氏は「人材が全く足りない」とし、「潜在的な不足があまりに深刻なため、関係者は共同で解決しなければならないと認識しつつある」と語った。

調査によると、30年までに半導体業界で人材が不足する職種の約74%は製造、60%はエンジニアリング分野となる。CHIPS法に基づく資金支援プログラムは、新工場で働く製造技能職の供給増に寄与してきたが、製造エンジニアやハードウエアエンジニアの需要に対応する上では、ほとんど効果を上げていない。

半導体企業を対象とした調査では、既に雇用主の4分の3近くがエンジニア採用に大きな困難を抱えていると回答した。問題の根本には、米国の工学系学生のうち半導体業界に進むのはわずか約3%にとどまり、大半がAIなど、より高収入が見込めるソフトウエア関連分野を選ぶ点がある。

CHIPS法では、全米科学財団に対し27年までに2億ドルが提供された。全米マイクロエレクトロニクス教育ネットワークという組織を通じ、学生教育や新規労働者の訓練を行う人材開発プログラム向けだ。リポートでは資金支援の継続が提言されているが、こうした取り組みの延長については詳述していない。

業界への関心を高める継続的な取り組みには、アリゾナ州の小学生に半導体装置に触れさせ、白い防じん服を試着させるプログラムもある。工場作業員が着用し、ほこりなどの微小な粒子が精密な半導体製造工程に入り込むのを防ぐための服だ。

ラウンドツリー氏は「この業界は米国で何十年も大規模な建設を行ってこなかった」とし、そのため、「高校の進路指導担当者や大学教授にとって、半導体業界は学生に進路として勧めやすい分野ではなかった」と語った。

原題:Semiconductor Worker Shortfall Endangers US Chip Factory Revival(抜粋)

--取材協力:Maya Prakash.

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