日本企業による転換社債型新株予約権付社債(CB)の発行金額が今年上期に22年ぶりの高水準に膨らんだ。金利上昇局面で利払い負担の少ない資金調達手法を志向する動きが広がっている。

JX金属

ブルームバーグのデータによると、1-6月のCB発行額は1兆円超と、同期間で2004年以来の大きさになった。日本製鉄が日本のCBで過去最大の6000億円を発行したほか、JX金属は2500億円を調達するなど、大型案件が全体の金額を押し上げた。

背景にあるのは金利上昇や株高だ。日本銀行は6月の金融政策決定会合で政策金利を31年ぶりの高水準となる1.0%程度に引き上げた。長期金利は5月に一時1996年以来の水準に上昇しており、企業の利払い負担は増している。CBは株式オプション価値を持つ分、通常の社債より低い金利で資金調達できる。

半導体テスターを手掛けるアドバンテストは4月、1000億円のCBを発行する理由として、ゼロクーポン債のため利払い負担を抑えられ、資金調達コストの最小化を図れる点を挙げた。

株式相場が上昇する中では下落局面に比べて既存株主への説明がしやすいほか、株式の特性を併せ持つCBの価格が上がりやすく、有利な条件での発行につながることも検討を後押しする要因だ。日本株の変動率は高止まりしており、日経平均ボラティリティー・インデックスは40近辺と過去5年平均の23を上回る。

みずほ証券の武井隼人エクイティシンジケーション部長は、「足元で提案件数やディスカッションの件数は明らかに増えている」と言う。「普通社債のクーポンが上昇傾向にある中、株高の機会も捉え、CBを有意な資金調達手法の一つとして検討する流れは継続する」とみている。

7月に入って早々、川崎重工業が2031年、33年満期のCB発行で約1010億円を調達すると発表している。

JPモルガン証券の有馬大騎株式資本市場部長は、「株式の高いボラティリティーを活用して柔軟な条件設定を行う動きが増えている」と話す。

投資家の需要を探るCBのマーケティングでは通常、転換価格が発行時の株価をどれだけ上回るかを示すアップ率が使われることが多いが、有馬氏によると、最近は大型案件で募集価格などを使うケースも出てきているという。JX金属は発行価格を使って需要を調査し、仮条件の上限で決定したため、より多くの金額を調達するメリットを享受した。

CB発行に当たっては、株式転換に伴う将来的な希薄化が懸念されやすい。発行を発表した翌日の株価は日本製鉄が5%以上、JX金属は約17%、それぞれ下落した。また、発行企業は普通社債よりも高い引受手数料や株式オプション部分におけるコストなどを負担することになる。

希薄化懸念に対処する仕組みを導入するケースもある。アドバンテストは普通株式への転換を抑制する設計とし、転換価額も時価を上回る水準に設定したことで、1株当たり利益の希薄化を抑える効果が期待できると説明していた。

需要

CBに対する投資家の需要は強く、日本製鉄には数倍、アドバンテストやJX金属では8倍を超える応募倍率があった。投資家は同一発行体の株式とCBを組み合わせた裁定取引(アービトラージ)を行うことが多く、収益の源泉となり得るボラティリティーの高い企業に多くの需要が集まりやすい。

エリプシス・アセットマネジメントでCBや社債のポートフォリオマネジャーを務めるバトキン・シリル氏は、日本企業は信用リスクが低い上に株価ボラティリティーは高いとし、「アービトラージ戦略がかなり有効だ」と指摘。足元で11億米ドル(約1790億円)を運用する同氏のCB戦略で日本の比率は5%だが、テクノロジー銘柄のCB発行があれば10%まで拡大する意向を示した。

ホリンガー・アセット・マネジメントのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、ダニエル・ルッツ氏は、現在の環境は日本のCBに極めて好都合だとした上で、「発行の勢いを維持できるかどうかは規律ある価格設定や株式相場の回復力の持続、そして発行体が株主価値を創出するような形で資本を運用できるかどうかにかかっている」と述べた。

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