(ブルームバーグ):トランプ米大統領の看板政策だった大規模な関税は、株式市場にとって逆風から追い風に転じた可能性がある。連邦最高裁判所が関税を無効とする判断を下したことで、一部企業では還付金が利益の押し上げ要因になりそうだ。
推計1660億ドル(約26兆9700億円)の返還義務を負うことになったトランプ政権は、4月から還付手続きを開始した。米財務省によると、第1弾として5月に220億ドルが払い戻された。この金額は、同月に徴収された関税額にほぼ匹敵する。
ウェルズ・ファーゴの株式アナリスト、オソン・クォン氏は、下期を迎えるに当たり、関税の還付が一部の銘柄にとって追い風になるとみている。
払い戻しに伴う好影響について、「まだ誰も本格的には注目していない」と指摘。本当に還付が行われるのかどうか懐疑的な見方が多かったが、「実際に払い戻しは進んでいる」と語った。
クォン氏が先週公表したリポートによると、1-3月期(第1四半期)決算発表では、アップル、キャタピラー、ダラー・ツリー、テスラを含む約40社が関税の払い戻しについて言及した。ただし、その恩恵を業績へのプラス要因として認識したのは、フォード・モーター、ゼネラル・モーターズ、アンダーアーマーなど8社にとどまった。
この数は多くないと同氏は認めつつも、4-6月期(第2四半期)の決算シーズンが始まるのに伴い対象企業は増えると予想している。また、一部企業は払い戻しを利益として計上する可能性もあるとの見方を示した。

マホニー・アセット・マネジメントのケン・マホニー最高経営責任者(CEO)は、関税の払い戻しは企業収益にとって正当な追い風になるとの見方を示す。還付金は企業が事業運営コストとして織り込んできた関税負担を実質的に取り戻す効果があるという。
「関税を費用計上していながら、還付金をまだ業績見通しに織り込んでいない企業では、払い戻される資金が利益や利益率、場合によってはフリーキャッシュフローの上振れ要因になる可能性がある」と述べた。
さらに同氏は、還付金がまだ市場の利益予想に反映されていない企業に一段と大きな影響が及ぶだろうと述べた。その結果、今後数四半期にわたり、利益予想の上方修正や市場予想を上回る決算につながる可能性があるという。
効果は一時的
一方でマホニー氏は、還付金は継続的な利益押し上げ要因ではなく、あくまで一時的な要因として捉えるべきだと強調する。こうした一時的な性質が、市場参加者の間で関税還付の効果は限定的との見方につながっている。
エクスプローシブ・オプションのチーフストラテジスト、ボブ・ラング氏も、還付金は「大きい」と認めつつ、「市場を左右するほどの要因ではない」とみる。
リフレクシビティのジュゼッペ・セッテ社長も同様の見解だ。「還付金は最近の市場変動で打撃を受けた株式にとっては鎮静剤のような役割を果たすだろう。しかし、市場では関税というテーマ自体がすでに忘れ去られており、一度限りの対応が市場を大きく動かす可能性は低い」と話す。
還付金をどのように会計処理するかという問題もある。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のスチュアート・ゴードン、デボラ・エイトケン両氏は、第2四半期決算では、この問題が「利益の質を測る試金石」になるとの見方を示した。還付金は粗利益を押し上げる形で計上される場合もあれば、貸借対照表に全く反映されない場合もあるなど、処理方法には大きな違いがあるという。
それでも、前述のクォン氏は、還付金が市場の追い風になると予想している。同氏はAI半導体や関連インフラへの投資を引き続き選好する一方、関税の払い戻しは原油価格の動向と相まって、物色対象の広がりを後押しする要因になるとみている。
さらに、還付金は景気全体にとっても追い風になり得ると述べた。企業の間では、払い戻し金をインフレ対応や消費者の不安軽減に活用する案が浮上しているという。
「加えて、この余剰資金を設備投資に充てたり、自社株買いや増配、あるいは特別配当を実施したりする企業も多いだろう。そのため、下期の市場にとって大きな追い風になるとみている」と語った。
原題:Trump Tariff Defeat Is Market Tailwind ‘No One Is Talking About’(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.