AI関連投資を支える借り入れの増加は、株価のバリュエーション以上に金融安定上の懸念材料となる可能性があると、国際通貨基金(IMF)の高官が指摘した。

IMFのトビアス・エイドリアン金融資本市場局長は30日、ポルトガルで開催されている欧州中央銀行(ECB)の年次シンポジウムで、足元の市場動向は必ずしもバブルを示唆するものではないとした上で、企業の資金借り入れのあり方に懸念を表明した。

「金融安定の観点から非常に懸念されるのは、大手テクノロジー企業が自らレバレッジを高め始めていることだ」とエイドリアン氏は発言。「実物資産が価値を生み出す期間と負債のデュレーションとの間で、期間のミスマッチが生じる可能性がある」と述べた。

政策当局者の間では、AIが引き金となる市場急落への警戒感が高まっている。国際決済銀行(BIS)は28日、AIは世界経済の繁栄を脅かす4つの「弱点」の一つだと警告した。ECBのシュナーベル理事も、同シンポジウムのセッション冒頭で「AIが引き起こす金融バブル」をテーマに取り上げた。

動画:ポルトガル・シントラでブルームバーグテレビジョンとのインタビューに応じるIMFのトビアス・エイドリアン金融資本市場局長

一方、エイドリアン氏は、先週の株式相場の下落を受けて、市場環境にやや変化が生じたとの見方を示した。

「最近見られたようなバリュエーション面での過熱感は、もはやそれほど大きくない」とエイドリアン氏は指摘。「バリュエーションは株価収益率(PER)と密接に関係している。株価はやや下落した一方で、企業業績は引き続き市場予想を上回っている」と論じた。

AIの収益性に対する投資家の期待は「極めて強気」だったが、実際には企業業績がその期待を上回っており、市場の動きは「典型的なバブルとはかなり異なる」と同氏は分析した。

また、半導体メーカーのバリュエーションが上昇する一方で、ソフトウエア株は「大幅に売り込まれてきた」ことも、市場が健全な状態にあることを示す兆候だとの認識を示した。

「バブルのような状況であれば、市場メカニズムが十分に機能しなくなるはずだ」と続けた。

エイドリアン氏がより問題視しているのは、ハイパースケーラーが「比較的短期間で陳腐化する」可能性のある半導体への投資を、中長期の負債で賄っている点だ。

「企業収益が維持され、企業や個人が最先端AIモデルの利用コストを支払い続ける限り、大きな問題にはならない」と同氏は指摘。ただ、「いずれ企業業績が期待外れとなる可能性は当然ある」とし、「現時点で金融安定の観点から重要なのは、根底にある収益性だ」と強調した。

エイドリアン氏は8月末でIMFを退任する予定だ。

原題:AI Leverage Is More Worrying Than Valuations, IMF’s Adrian Says(抜粋)

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