不鮮明な映像には、大型船の船体へ海洋ドローン(無人機)を誘導する米特殊部隊の姿が映る。数秒後、ドローンが爆発し、標的の船は海中に沈んだ。立ち上った煙は瞬く間に消えていった。

この攻撃は、フィリピンで最近実施された演習の一環として退役した標的艦に対して行われたものだ。事前には公表されていなかったが、ブルームバーグ・ニュースが映像を入手した。使用されたのは、ウクライナで開発され、ロシア黒海艦隊への攻撃で実績を重ねてきた無人水上艇(USV)「マグラ」シリーズで、インド太平洋地域での試験は今回が初めてだった。

ウクライナや中東での戦争で、安価な航空ドローンの有用性が明らかになったのと同様に、海洋ドローンもまた、インド太平洋地域で重要な役割を果たすとみられている。この地域は米本土の約30倍の広さを持ち、その大部分を広大な海域が占める。

現在、米国から中国に至るまでの各国軍は、無人水上艇(USV)や無人潜水機(UUV)の開発・配備を急いでいる。

米海軍の元潜水艦長で、シンクタンク「新アメリカ安全保障センター」のトーマス・シュガート非常勤上級研究員は、日本から台湾を経て東南アジアへ連なる「第1列島線」に言及。「こうした分散配置が可能で、生存性が高く、比較的安価なシステムをもっと増やす必要がある。台湾周辺や第1列島線の海域での中国の海上行動を制限する助けになる」と語る。

もっとも、大規模な海洋ドローン部隊の構築・運用には課題もある。特にUUVは、USVより高価で複雑な上、水中で活動するため通信も難しい。

それでも、リスクが高い海域で活動できるほか、情報収集や機雷敷設、ミサイル発射といった幅広い任務を遂行できる。海軍の戦力を増強し、長期戦においては有人艦艇や潜水艦の温存にもつながる。

日本の民間シンクタンク、地経学研究所で研究員を務める井上麟太郎氏は「海軍にとって重要な乗員と艦艇を敵の攻撃圏外に置くことができる」と指摘する。

こうした能力を示す最近の実例として、6月上旬には全長24フィート(約7.3メートル)の自律型水上艇「コルセア」が、オマーン沖で墜落した米陸軍の攻撃ヘリコプター「AH-64アパッチ」の乗員救助に初めて使われた。その1カ月前には、ウクライナがマグラを用いてクリミアのロシア艦艇を攻撃した。

USVは価格は1隻当たり数十万ドルと、最新の米国製魚雷より大幅に安価であることから、予算や人員が限られる軍隊でも大きな効果を上げられる手段となる。

例えば、米国が掲げる台湾防衛構想「ヘルスケープ」は、安価な対艦兵器を大量に展開して台湾海峡で中国軍の行動を阻むことを想定している。爆薬を搭載した高速艇のようなマグラ級のUSVは、その中核的な役割を担うとされる。

台湾も独自に攻撃型USV「快奇」を開発しており、防衛戦略の柱と位置付けている。政府は1320隻の調達を計画しており、現地報道によると総額は280億台湾ドル(約1420億円)となる見込みだ。

メディアに公開されたUSV「シーシャーク800」(2025年6月、台湾)

4月には、米海軍のUSV部隊を率いるガレット・ミラー大佐が、2030年までにインド太平洋地域へ数千隻規模の小型USVが配備されるとの見通しを示した。米国ではすでに、アンドゥリル・インダストリーズ、セイルドローン、サロニック・テクノロジーズなど数十社がこうしたシステムを製造している。

日本は今年度、沿岸防衛用ドローンに1001億円を計上し、IHI、三菱重工業と契約を結んでいる。

米国はまた、南シナ海での中国軍の活動による圧力を最も強く受けているフィリピンへの無人システム配備も拡大している。23日には、UUV4機をフィリピン軍に供与したと発表した。

オーストラリアのマールズ国防相は5月、アジア安全保障会議(シャングリラ会合)で「われわれの地域において、戦略環境が最も複雑で、戦略的競争が最も激しいのは海洋領域だ」と発言。会議の前には、米英両国とUUVの共同開発で合意していた。

一方、この地域で海洋ドローンへの投資に最も積極的なのは中国だ。中国人民解放軍は昨年9月の戦勝記念軍事パレードで、情報収集用の「HSU100」や機雷敷設能力を持つ「AJX002」など、複数の大型UUVを公開した。

中国はすでに、フェーズドアレイレーダーや対潜戦・哨戒用の無人ヘリコプターを搭載する全長58メートル、500トン級のUSV「Orca JARI-USV-A」を運用している。4月には広東省沖でUSV「L30」を群れで運用する初の試験も実施した。

台北にある国防安全研究院の研究員、ベンジャミン・ブランダン氏は、中国による海洋ドローンの活用は、南シナ海支配を目指す戦略の中で最も顕著に表れていると指摘する。同氏は「埋め立てが行われ、軍事拠点化が進み、ブイが設置され、そして今はドローンがある」と述べた。

シンクタンクのハドソン研究所が最近実施した戦争シミュレーションでは、中国が台湾侵攻の一環として日本を攻撃するシナリオを想定。その結果、海洋ドローンが軍事衝突で極めて重要な役割を果たすことが浮き彫りになった。

このシミュレーションでは、日本がUUVを使って敵の艦艇や潜水艦を追跡・攻撃した一方、USVが攻撃を行うとともに、中国側の注意をそらし大型艦艇への攻撃を防いだ。

ミサイルなどの従来兵器と組み合わせて運用した結果、中国軍の戦力がはるかに大きいにもかかわらず、日本は開戦から数週間後も海軍艦艇と航空戦力の半数以上を維持。米軍の支援到着までの時間を稼ぐことができたと、日本の防衛省と共同で今回のシミュレーションを主導したブライアン・クラーク氏は説明した。

クラーク氏は「日本の防衛担当者らは、自らが前線に立って防衛の主な担い手となるべきで、その役割を無人システムに委ねるべきではないと考えていた。彼らは駆逐艦や巡洋艦を日本海へ投入したがっていた」と振り返り、「それがうまくいかなかった後、別のアプローチを考えざるを得ないと認識し始めた」と続けた。

日本の防衛省は戦争シミュレーションについてのコメントを控えた一方で、「低コストで大量生産可能」な無人航空機やUUVを組み合わせた非対称の防衛態勢の構築は「これまで以上に緊急性の高い課題になっている」とした。

小泉進次郎防衛相は先週、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで、人口減少による人員確保の問題に直面する日本にとって、ドローンは極めて重要な軍事技術だと述べた。特に潜水艦隊では人員不足が深刻だという。

小泉氏は「やはり一つは、ドローンやAIなど、この新しい戦い方が世界で見られる中で、われわれとしても、その新しい戦い方に対応できる新しい守り方を実現するために資する分野に、投資をしなければいけないと思っている」と語った。

小泉進次郎防衛相が17日、ブルームバーグのインタビューで、ドローンやAIなどを活用した防衛力の強化に意欲を示した。また、中国政府が公表する国防費の透明性に疑問を呈し、対日批判を続ける中国をけん制した。

現時点で、標的の発見から攻撃までを完全に自律的に行う無人艦艇を配備する意向を示した主要国はない。そのため、管制施設との通信を前提とした運用になるが、UUVは通信によって位置を敵に探知される恐れがある。

それでもUSVへの関心は高いと、マグラを製造するロンドン拠点のスタートアップ、ユーフォースのオレグ・ロギンスキー最高経営責任者(CEO)は語る。同CEOは、インド太平洋地域の複数国と導入に向けた協議を進めており、同地域内に少なくとも2カ所の製造拠点を設けることを検討していると明らかにした。

ウクライナ製USV「マグラ V7」(26年2月、ウクライナ外務省)

ロギンスキー氏は、ウクライナ戦争でマグラがロシア軍艦約10隻を撃沈した実績が、インド太平洋地域での価値を示していると指摘。「実戦で性能が証明されていることが、今後極めて重要になる」と語った。

原題:Sea Drones Emerge as Crucial Weapon to Counter China’s Power(抜粋)

--取材協力:Josh Xiao、Yian Lee.

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