(ブルームバーグ):強い経済の実現に向けて高市早苗政権が投資に重点を置く中、その財源を賄う手段の一つとして、一時的な資金繰りに使われる「つなぎ国債」が脚光を浴びている。
つなぎ国債は事前に償還財源を決めておくのが特徴で、赤字国債とは異なるものと政府は位置付けている。だが、増税など将来の負担を確定させることにつながり、本来は政治的な難所になり得る。財源の制度設計が甘くなれば、実質的に赤字国債と変わらないリスクもはらむ。
なぜ注目?
5月下旬に自民党の成長戦略本部がまとめた提言案が、注目を集める発端となった。高市首相が進める成長・危機管理投資の拡大に向けた「新たな投資枠」創設を求めるとともに、つなぎ国債の発行にも触れた。
高市首相は24日の会議で、新たな投資枠のうち経済安全保障に関する投資は特別会計で別枠管理し、つなぎ国債で資金繰りの手当てをする考えを示した。
今回の構想が浮上した背景には、昨今の金利上昇への警戒感がある。日本財政に市場から厳しい視線が注がれる中での赤字国債増発は悪手となり得るため、つなぎ国債による代替で財政悪化への批判や懸念をかわしたい政権の思惑が透ける。長期金利は5月に一時2.8%と、1996年以来の高水準に達した。
つなぎ国債は、財源が入ってくるまでの「つなぎ役」で、将来の償還財源を決めた上で先行して資金調達を行う仕組み。債務残高対国内総生産(GDP)比や基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)といった財政健全化指標には反映されず、発行しても数値上は財政が悪化することはない。
現在6種類
つなぎ国債として残高があるものは、現在6種類ある。復興債、脱炭素成長型経済構造移行債(GX経済移行債)、子ども・子育て支援特例公債(子ども特例債)、先端半導体・人工知能関連技術債(半導体・AI債)、減税特例国債、年金特例国債がそれに当たる。
償還方法や財源はそれぞれ個別に定めている。2026年度の発行残高見込みでみると、普通国債1145兆円余りのうち、つなぎ国債は計14兆8000億円程度と全体の約1.3%となる。
1994年度から96年度までに発行された減税特例国債は今も償還が終わっておらず、1620億円が残っている。
専門家の警鐘
つなぎ国債である以上、財源と償還期限を明確化する必要がある。ただ、財源を担保することは、将来の負担増を国民や企業に求めることと同義であり、政治的なハードルは高い。
経済安保投資を対象とするつなぎ国債の財源は「追加的な税外収入」を中心とし、増税などは実施しない。高市政権下では消費税減税の議論を進めているため、経済安保のための増税を検討しづらい事情が見え隠れする。正面から負担を求めることを避けただけに、その財源に実体が伴うかどうかは現段階で不透明だ。
財政政策に詳しい白鴎大学の藤井亮二教授は、今回のつなぎ国債構想は「単なる財政拡張とは一線を画す意味だろう」と政権の意図を読み解く。財源を明確にすることに加え、つなぎ国債の発行規模や歳出項目の厳格な精査が必要とも指摘した。
その上で「明確な財源を確保しないままに発行すれば、それはつなぎ国債ではなく実質的に赤字国債と変わらない」と警鐘を鳴らしている。
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