7月4日、米国は独立250周年を迎える。トランプ政権によって米国が大きく方針転換するなか、米国の近況を振り返ると同時に、今後を展望することは、世界経済を見るうえで有意義と考えられる。そこで、筆者が米国の現状と今後について考えていることを纏めたい。
二つの自由がもたらした米国の分断
足元の米国を言い表す言葉として適当と考えられるのは、「分断」であろう。共和党と民主党、エリート層と大衆の間で考え方に大きな違いが生まれている。これを生み出したのは二つの自由といえるかもしれない。
一つが自由なマーケットである。新自由主義に基づく自由競争は経済的な勝者と敗者を生み出した。今や上位1%が全体の約3分の1の富を占めるようになっている。一方で下位50%は全体の5%程度しか保有していない。AIブームで株価が上昇するなか、この所得格差は拡大傾向にある。さて、米国独立250年を巡って多くの識者が引用するトクヴィルの名著「アメリカのデモクラシー」(1835年出版)を見ると、その序文第1ページでは、彼が米国の「境遇の平等」に驚いていることが示唆されている。現在の格差をみると、「境遇の平等」の国であった建国当初とはかなり異なる国になってしまったといえるだろう。
もう一つの自由としては、リベラルな価値観や政策運営に対する反発の広がりが指摘できる。米国ではこれまで、多様性や機会均等の確保を目的とするさまざまな施策が講じられてきた。そして、こうした取り組みは、格差是正に一定の役割を果たしてきた。米国では人種問題等に関心がある人々のことをWoke(目覚めた人々)と呼ぶが、主として彼らがリベラルな活動を熱心に行ってきた。もっとも、足元ではWokeの人々は過度に進歩主義的すぎるとの批判が強くなった。とりわけ、経済的な困難に直面する白人男性を中心にリベラルな政策に対する反発が強くなっている。つまり、低所得の白人男性にとって、一番解決すべきなのは所得格差の是正であるが、彼らからみると、ワシントンD.Cの政治家は経済格差是正に不熱心であり、その代わりマイノリティの人権擁護に熱心であるように見える。それどころか、少数民族を昇進等で優先するアファーマティブ・アクションによって、白人男性が享受すべきチャンスを譲らされていると考えている。
米国のJ.D.ヴァンス副大統領は、かつて「ヒルビリー・エレジー」という書籍を著したが、それは白人労働階級の経済的な貧困と、そうした状況をリベラルな政治家たちから救ってもらえない疎外感を綴ったものである。これら二つの自由は、かつて米国にプラスの面をもたらしたのも事実だ。しかしながら、結果として取り残された人々を生み出し、それが米国の分断を生んだといえるだろう。