(ブルームバーグ):米国の11月の中間選挙の連邦下院選に向け、ニューヨーク州で23日に行われた民主党の予備選で、AI業界の億万長者らが、AIの将来を主導する候補者を選ぼうと、計2900万ドル(約46億9000万円)を投じて代理戦争を繰り広げた。
アンドリーセン・ホロウィッツ共同創業者のマーク・アンドリーセン氏やOpenAIのグレッグ・ブロックマン社長らが支援する政治活動特別委員会(スーパーPA)は、ニューヨーク州議会議員のアレックス・ボレス候補の当選を阻止しようと、800万ドル超を投じた。ボレス氏は昨年、AI製品によって生じた被害について、AI企業に責任を負わせることを意図した法案を州議会に提出し、業界の反発を招いた。
混戦となった予備選では、最終的に同じくニューヨーク州議会議員のマイカ・ラッシャー氏が勝利した。ラッシャー氏はマイケル・ブルームバーグ氏の元側近で、同氏から支持を受けている。その他の対立候補には、ジョン・F・ケネディ大統領の孫のジャック・シュロスバーグ氏や、弁護士で政治評論家のジョージ・コンウェイ氏らがいた。

業界内対立
選挙戦では、新興技術であるAIが資源を大量に消費し、雇用を奪うという有権者の懸念が高まる中、AI業界が直面する苦境が浮き彫りになった。また、米国がAIにどう向き合うべきかを巡る業界内部の意見対立もあらわになり、双方が立場を支持する献金者を動員することになった。
OpenAIやメタ・プラットフォームズなどは、透明性を重視した緩やかな連邦規制を求めている。一方でアンソロピックは、技術の義務的なテストや監査を含む、より厳格な政府監督を働きかけている。
ボレス氏は、敗北後の声明で「今夜敗れはしたが、ここで示された例は、AI寡頭勢力が意図したものではなかった。彼らは人々に、自分たちへの対抗を怖じ気づかせようとしたが、実際には、人々がどれほど反発する用意があるかを思い知ることになった」と述べた。
AI安全性を重視する活動家らは、ボレス氏支援に動いた。ボレス氏を支援するスーパーPACには、アンソロピックやその他のテクノロジー業界の献金者が協力し、合計で約2100万ドルを拠出した。
ボレス氏を支援する勢力は、AIに対してより厳格な政府規制を求めている。選挙資金記録によると、スーパーPACはボレス氏支援の広告に1500万ドル超を投じた。アンソロピックの従業員ダニエル・ジーグラー氏は、ボレス氏を支援する別のPAC「ドリームNYC」の設立にも関与しており、この団体は230万ドル超を出した。暗号資産業界の億万長者クリス・ラーセン氏が支援するさらに別のスーパーPACも330万ドル超を投じた。
アンソロピックが支援するスーパーPAC「ジョブズ・アンド・デモクラシー」は23日の声明で、ラッシャー氏もボレス氏主導のニューヨーク州AI規制法案を支持していたと指摘した。
ジョブズ・アンド・デモクラシーの創設者ブラッド・カーソン氏は、「今回の選挙では、結果として、AI規制法案の提出者と共同提出者との一騎打ちを生み出した」と述べた。
AI不信
最近の世論調査では、有権者のAIに対する見方が悪化していることが示されている。背景には、AIを支える大量の電力を消費するデータセンターが、電気料金やガス料金を押し上げるとの懸念がある。5月に公表されたギャラップの世論調査によると、米国人の10人中7人が、自宅周辺でのデータセンター建設に反対している。3月のピュー・リサーチ・センターの調査では、米国人の47%がAIを信頼していないと回答した。
ただ、この選挙戦で双方が展開した広告の多くは、明示的にはAIに言及しなかった。多くの有権者にとって、AIは生活費や移民問題ほど優先順位の高い争点ではないためだ。
ボレス氏支持者の政治コンサルタント、ジェイ・シュースター氏は、この選挙戦により、AI規制を支持する候補者を応援する新たな支持層の存在が明らかになったとみている。
同氏は、「勝敗にかかわらず、AI安全性の擁護者となり業界から攻撃を受けた場合、人々が支援に集まるだけでなく、相手陣営を上回る資金を集められる可能性さえあることを示した」と語った。
原題:AI Billionaires Score Win in $29 Million New York Proxy Fight(抜粋)
--取材協力:John Harney.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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