(ブルームバーグ):金融市場とビデオゲームファンが同じ見方をすることはめったにない。その典型が任天堂だ。同社の株価はここ数カ月低迷しており、今月もさらに下落した。
ゲームの最新情報を提供する「ニンテンドーダイレクト」の発表内容に、差し迫った大ヒット作への期待を抱かせる材料が乏しかったためだ。一方で、それはゲーム機「スイッチ」のユーザーにとって最高の時期の一つとも重なっている。高い評価を受ける「ぽこ あ ポケモン」のようなタイトルが突如として登場しているからだ。
こうした議論では通常、私はプレーヤー側の見方に立つ。しかし今回は慎重な見方を示す投資家に同意せざるを得ない。あらゆる証拠が示しているのは、ゲーム業界が暗い時代に突入しており、それは恐らく業界史上で最も深刻な局面の一つだということだ。
新型コロナウイルス流行期のエンターテインメント需要拡大で関心と資金が流入した後、業界はコンテンツ過剰と、生き残りを懸けた競争の渦中にある。任天堂より規模の小さい企業にとってはなおさらだ。この業界全体の規模調整はすでに数年続いているが、こうした動きは衰えていない。
今年だけでも数千人規模の雇用が失われている。さらに、テンセント・ホールディングス(騰訊)がゲームスタジオへの投資を縮小する決定を下したという私が報じた最新情報は、さらなる苦境が迫っていることを示唆している。
米マイクロソフトがスタジオ売却を進める動きが明らかになったばかりでもある。残念ながら、多くの業界関係者は、この流れを反転させ得る要因は当面見当たらないとの認識で一致している。
AIが業界を根底から覆すという話ではない。この複雑な創造産業において、AIの実用的な応用はまだ人間の労働力を意味のある規模で代替できる段階に達していない。
また、消費者が十分にゲームを購入していないと責めるのも誤りだ。AIは一部の人々を不安にさせているかもしれないが、現時点では真の破壊的要因ではない。
ニューズーのデータによれば、業界全体の売上高はすべてのプラットフォームと地域で引き続き増加している。
リセット必要
業界の苦境は、主として経営陣の判断ミスに起因している。プレーヤーは最先端技術と、よりリアルなグラフィックスを備えたゲームを何より求めているという考え方が長らく支配的だった。
このインフレ的な発想の問題は単純だ。すでに優れたゲームが多過ぎるほど存在しており、新作1本を開発するにも膨大な時間と資金が必要となる。その結果、ヒット作と見なされるための販売目標はますます高くなり、期待に届かなければ雇用が失われる。
トレーディングプラットフォームズのアナリスト、スタニスラバ・サビシェバ氏は、「こうした人員削減が特に際立つのは、ゲームが今や世界最大のエンターテインメント産業であり、映画業界と音楽業界を合わせた以上の売上高を生み出しているからだ」と論じ、「それにもかかわらず、ゲーム業界は他の大半のエンターテインメントセクターよりも大規模なレイオフに直面している。その主因は、開発費の急騰と長期化する制作サイクル、コロナ禍後の過剰拡大、収益性向上と投資家満足を求めるパブリッシャーへの圧力の高まりだ」と述べた。
現在、主流のビジネスモデルは大きく3つある。世界的な評価を目指す最も伝統的な手法である大型予算のシングルプレーヤーゲーム、継続的かつ反復的な収益を約束するライブサービス型マルチプレーヤーゲーム、そして同様に利用者のプレー習慣と課金習慣を形成するハイパーカジュアルなモバイルアプリだ。しかし、そのいずれも供給過剰という問題に直面しており、その結果として顧客獲得コストは過度な水準に押し上げられている。
ゲームの品質はすでに業界全体で十分高い水準に達しているため、プレーヤーは技術的進歩だけでは容易に感銘を受けなくなっている。同時に、多くのユーザーは長年熱中してきた少数のライブサービス型ゲームに時間を費やし続けている。
ゲーム業界には大規模なリセットが必要だ。そのきっかけが現れるまでは、多くの企業が冬眠状態にとどまり、収益性の高い少数のタイトルに依存しながらリソースを温存し、次の機会を待つことになるだろう。
問題は、業界がますます鶏と卵のジレンマに直面していることだ。企業は投資再開を正当化するためのきっかけを必要としているが、そのきっかけ自体も投資がなければ生まれない。
一部では「ホロウナイト:シルクソング」のような高評価のインディーゲームが変化をもたらすことへの期待がある。しかし、パブリッシング契約を失った開発元が生き残りを図って市場に参入しているため、この分野も競争が激化しているとの懸念がある。
また、AIがゲーム開発の在り方を抜本的に変えることで業界の救世主になるとの見方もある。しかし、ベテランのゲームAIアーキテクト、三宅陽一郎氏が最近指摘したように、この技術が広く実用化されるまでには何年もかかる可能性がある。
ゲームファンは今後も数年間にわたり質の高い新作を継続的に楽しめるだろう。業界環境にかかわらず、パブリッシャーは収益を生み出すために新作を投入し続けなければならないからだ。しかし、供給側の立場から見ると、現時点でこのビジネスはそれほど魅力的なものには映らない。
(この記事は、テクノロジー業界のビジネスを世界中のブルームバーグ記者が掘り下げて伝えるニュースレター「Tech In Depth」からの抜粋です)
原題:Games Industry Faces More Painful Months Ahead: Tech In Depth(抜粋)
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