(ブルームバーグ):テスラの株主にとって、今年は厳しい1年となっている。株価は約10%下落する一方、イーロン・マスク氏率いるスペースXは史上最大の新規株式公開(IPO)を実施し、マスク氏が保有する企業群の中で最も価値の高い企業となった。
しかし、先週実施されたスペースXのIPOは、テスラの株主に新たな期待ももたらしている。投資家の間では、マスク氏が最終的に両社の統合を実現するとの見方が広がっているためだ。一部アナリストは、スペースX株の最近の下落が続けば、テスラ株主は統合案により前向きになる可能性があると予想している。
両社が統合すれば巨大テクノロジー複合企業が誕生し、将来的にはエヌビディアやアルファベット、アップルと並ぶ世界有数の企業になる可能性がある。
こうしたウォール街の楽観的な見方が、IPO後もテスラ株が比較的底堅く推移している理由の一つかもしれない。スペースXではIPO直後の熱狂が薄れつつある一方、テスラ株は直近2営業日で上昇し、再び400ドル台を回復した。

ティグレス・ファイナンシャル・パートナーズのアイバン・ファインセス最高投資責任者(CIO)は、このIPOがテスラ株を見直すきっかけになるとみている。
一方、テスラ株を保有するラウンドヒル・ファイナンシャルのデーブ・マッツァ最高経営責任者(CEO)は、スペースX上場前と比べて、両社が統合する可能性をより強く意識するようになったと述べた。
マッツァ氏は「長年にわたり、マスク氏へのプレミアムに投資する唯一の上場手段はテスラだった。しかし今は違う。スペースXはAIと宇宙開発というテーマをより純粋に反映した投資対象だ」と指摘。その上で、「テスラ株が400ドル(約6万5000円)を上回っている背景には、買収プレミアムが織り込まれ始めていることがある」と述べた。
もっとも、両社はともにマスク氏が所有しているとはいえ、明確な統合相手というわけではない。テスラは世界有数の電気自動車メーカーであり、自動運転事業の拡大や、人型ロボット「オプティマス」の開発も進めている。一方のスペースXは、ロケットや人工衛星の製造・打ち上げを手掛けており、人類を火星へ送り込む構想も掲げている。
AI事業の統合
両社の接点となるのはAI分野だ。そして、その開発に必要な巨額の資金でもある。スペースXは2月、チャットボット「Grok」を開発するxAIと、旧ツイッターとして知られるソーシャルメディア事業を吸収した。さらに現在は、テスラと共同で「テラファブ」と呼ばれる半導体製造の合弁事業に乗り出している。今後の取り組みには、いずれの企業も単独では賄えないほどの資金が必要になる可能性が高い。
もっとも、いかなる統合案件でも課題となるのは価格だ。このケースでは、スペースX株の値動きが激しいため、なおさら難しい。テスラの時価総額は約1.5兆ドル。一方、スペースXの時価総額は22日終値時点で約2兆ドルと、1週間前の2兆6000億ドルから縮小している。
ただ、モーニングスターのアナリスト、セス・ゴールドスタイン氏がIPO前のリポートで指摘したところによると、スペースXの評価額はわずか1年前には約4000億ドルだった。さらに2月のxAIとの統合時には約1兆ドルと評価され、このうちAI事業の評価額は約2500億ドルと算定されていた。
ゴールドスタイン氏は「IPOに向けてスペースXの評価額が急騰したことを踏まえると、テスラ株主が自社よりはるかに高い評価倍率で取引されているスペースXを買収したいとは考えにくい」と指摘した。
一方で、スペースX株主も大幅なディスカウントを受け入れる可能性は低いものの、株価がモーニングスターの算出する適正価値である63ドルに近づけば、統合案により前向きになるだろうと述べた。スペースX株のIPO価格は135ドル。
もっとも同氏は、マスク氏の企業は意思決定と行動が速い傾向があるため、「1年以内に統合が実現しても驚かない」と付け加えた。
ウェドブッシュ証券のアナリスト、ダン・アイブス氏は、スペースXとテスラが来年統合する確率を80%超とみている。一方、オッペンハイマーのスペースX担当アナリスト、ティモシー・ホーラン氏は、いずれ統合が実現するとの見方を示しつつも、マスク氏がそれを急いでいるとは考えていない。予測市場ポリマーケットでは、年末までに統合が成立する確率は39%となっている。
データトレック・リサーチの共同創業者、ニコラス・コラス氏によると、スペースXのIPO登録届出書(フォームS-1)では統合の可能性について言及されていないとし、来年6月より前に実現する可能性は低いとの見方を示した。
さらに、スペースXは資金調達を目的として上場したのであり、テスラもそれほど多額の現金を生み出していないことから、直ちに統合を進める合理性は乏しいと指摘。「その可能性が残る限り、テスラ株に買収プレミアムが織り込まれ続けることはあり得る。しかし、近い将来に起きる出来事だとは考えていない」と述べた。
原題:Tesla Stockholders Bet on SpaceX Merger as Musk’s Real Endgame(抜粋)
--取材協力:Subrat Patnaik、David Watkins.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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