(ブルームバーグ):トランプ米大統領は、主要7カ国(G7)の首脳の大半と何らかの形で衝突してきた。しかし先週、イタリアのメローニ首相は、他の首脳が誰も踏み込まなかった一線を越えた。トランプ氏に真正面から反論したのだ。
メローニ氏は、トランプ氏に気に入られてきた数少ない欧州首脳の1人だった。保守色の強い発言で知られる政治家であり、トランプ氏を支えるMAGA(米国を再び偉大に)の支持者とも親和性が高い人物と見なされていた。しかしメローニ氏は、ポピュリスト政治家から現実的な政治家へと変化してきた。
昨年、トランプ氏が繰り返し彼女の容姿を称賛し、「美人と言われても嫌ではないだろう?本当に美しいのだから」と発言した際には、女性を外見で評価する姿勢への批判が出たものの、メローニ氏は受け流した。だからこそ今回、トランプ氏の挑発に対して自らも反撃に出たことは、多くの首脳がトランプ氏の攻撃に対処してきた方法とは大きく異なっている。
メローニ氏は、米同盟国の首脳たちの多くが内心では考えていても、公の場では口にしなかったことを三つ指摘した。トランプ氏はうそをつき、敵に迎合し、その一方で友人を攻撃していると述べたのだ。また11月の中間選挙を控え、支持率が過去最低水準に落ち込んでいることを踏まえ、まず自身の世論調査結果を見るべきだと皮肉を投げかけた。
対立は、和やかな雰囲気のG7会合の直後に、ある意味で唐突に生じたものだった。各国首脳はトランプ氏がイランと締結しようとしていた和平合意への懸念を脇に置き、かつてG7を批判していたトランプ氏自身も、会合後に「史上最も成功した会合の一つ」と評価していた。
米同盟国にとって悩みの種
今回の対立の背景を理解することは重要だ。なぜなら、これは単なる政治的な小競り合いではないからだ。
トランプ氏との対立を避け、歩調を合わせるべきかという問題に、多くの米同盟国は頭を悩ませてきた。その象徴的な例として、北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は最近、フランスでの会合に招待されなかった。欧州の主要国の一部が、ルッテ氏のトランプ氏への過度な迎合ぶりを快く思っていなかったことが、その一因だった。
メローニ氏とトランプ氏の間では以前にも対立があった。イラン戦争を批判したローマ教皇レオ14世をトランプ氏が非難した際、メローニ氏は教皇を擁護した。しかしその対立はすぐに沈静化したように見えた。
G7サミットでは、むしろ他の首脳の方がトランプ氏に対抗する可能性が高いように見えていた。
フランスのマクロン大統領は、これまでもたびたびトランプ氏と論戦を繰り広げてきた。トランプ氏はマクロン氏を目立ちたがり屋と呼び、間もなく退任するとも述べていた。今期が最後の任期となるマクロン氏にとって、政治的に失うものも少ない状況だった。
それにもかかわらず、両者は再び接近したように見えた。トランプ氏は、まずフランス・アルプスで、続いてベルサイユ宮殿の豪華な旧王宮で受けたマクロン氏のもてなしに満足した様子だった。ベルサイユ宮殿で、トランプ氏がイランとの覚書への署名をした際にも、隣にはマクロン氏が座っていた。
英国のスターマー首相も政治的な生き残りを懸けた戦いの最中にある。スターマー氏はしばらくの間、トランプ氏との良好な関係を維持していた。チャールズ3世からの国賓訪問への招待を伝えたことも、トランプ氏に好意的に受け止められた。しかし、米国によるイラン攻撃のために英空軍基地の使用を認めるかどうかで曖昧な態度を取ると、トランプ氏は態度を翻した。スターマー氏の慎重な対応は国内でもほとんど評価されなかった。
実際、政治的立場にかかわらず欧州でトランプ氏の人気が低いことを考えると、多くの首脳はトランプ氏の攻撃を受け流す姿勢が有権者からの評価を下げることに気付き始めている。
ドイツのメルツ首相は、トランプ氏との直接対決を避けようとしてきた。メルツ氏はドイツ国内で、トランプ氏がイラン指導部から「屈辱」を受けていると述べていたが、すぐに火消しに動いた。G7サミットではトランプ氏にサッカーチームのユニホームを贈り、「われわれは同じチームだ」と呼びかけた。
G7首脳の中で最も新顔の高市早苗首相も、3カ月前にはトランプ氏の冗談を黙って聞き流すしかなかった。トランプ氏は3月の首脳会談で、日本による1941年の真珠湾攻撃が米国の第2次世界大戦参戦につながったことを引き合いに出し、「奇襲について日本以上に熟知している国があるだろうか。真珠湾攻撃について、なぜ知らせなかったのか」と軽口をたたいた。
カナダのカーニー首相は、おそらく最も公然とトランプ氏に異議を唱えた人物だが、それでも隣国との全面対決には踏み込んでいない。特に両国は、この夏にメキシコとともにサッカーのワールドカップを共催しているタイミングでもある。
メローニ氏が抱える事情
そこで浮上するのがメローニ氏だ。
トランプ氏が2025年にホワイトハウスへ復帰して以降、欧州各国の政治家は、公然と対立することは得策ではないとの前提で対応を調整してきた。
49歳のメローニ氏は、トランプ氏に異議を唱えることが有権者の支持につながるかどうかという仮説を、本格的に試す最初の首脳となった。
メローニ氏には来年、選挙が待ち受けている。自身の政治的立場やイメージを考えれば、「欧州におけるトランプ氏の操り人形」とみなされることはプラスにならないと、ローマのルイス大学の研究者ロレンツォ・カステラーニ氏はみる。
トランプ氏の激しい批判を受け、イタリア外務省は19日、米フロリダ州マイアミで開催予定だったビジネスフォーラムを中止した。フォーラムにはルビオ米国務長官も出席する予定だった。
事情に詳しい関係者によると、このフォーラムでは、米国主導の重要鉱物資源構想である「パックス・シリカ宣言」へのイタリアの正式署名が行われる予定だった。
現在では、合意がいつ署名されるかは不透明になっており、メローニ氏はそれを容認している。
トランプ氏の親しい友人であり、特使も務めるパオロ・ザンポッリ氏でさえ、イタリア紙レプブリカに対し、「現時点での公式見解では、両者は完全に決別したことになる」と語った。
原題:Meloni’s Spat With Trump Shows Readiness to Risk a Bigger Fight(抜粋)
--取材協力:Josh Wingrove.
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