(ブルームバーグ):日本製鉄の森高広副会長は、中国による過剰な鉄鋼輸出を受け、同社が事業展開するタイの政府と鉄鋼産業の防衛策について協議していると明らかにした。
森氏は11日、記者団に対し、鉄鋼産業では中国による供給過剰問題が「最大のリスク」となっており、その遮断に向けタイ政府に対し働きかけを行っていると話した。タイ国内のサプライチェーンを守るためには米国やインドのように、通商措置による「通商の壁」を作る必要があると続けた。日本製鉄はタイの薄板市場で約3割のシェアを持つ。
森氏によると、5月のタイ訪問時にはアヌティン首相や閣僚らと会談し、中国の輸出問題を協議した。「一回なだれ込まれてサプライチェーンが破壊されると作り直すことはほとんど不可能になる」と森氏は述べ、そうなる前にタイ国内の産業を保護する必要があると提言しているという。
国内需要が低迷する中国は余剰となった鋼材を海外に出荷しており、2025年の輸出は前年比7.5%増の1億1902万トンと過去最高となった。経済協力開発機構(OECD)は6月、世界の鉄鋼過剰生産能力は28年まで拡大すると予測し、業界の収益性に対する下方圧力を強める可能性があると警鐘を鳴らした。
中国の過剰供給問題を受け、世界各国で関税引き上げなど保護主義的な動きが広がる中、鉄鋼業界では需要地での現地生産の動きが拡大している。日本製鉄も25年6月に米鉄鋼大手USスチールの買収を完了するなど、海外事業拡大を本格化させている。
森氏は、国内と海外で同程度の生産能力を持つ日本製鉄は「今、非常に大きな転換点にある」と話す。今後は海外での生産能力が国内を上回る会社に変化していくのに伴い、意思決定の方式やスピードも変わらざるを得ないとした。将来的には取締役会への海外人材参画も出てくるとみているという。
一方、森氏はUSスチール買収後に全米鉄鋼労働組合(USW)との関係が「大きなリスク」になると懸念していたが、買収に反対していたデービッド・マッコール氏がUSW会長を退任したこともあって改善に向かっている。9月に失効するUSスチールとUSWの間の労働協約の改定に向け大きな障害はなく、「早く交渉妥結して進めていこうという雰囲気になっている」と森氏は語った。
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