(ブルームバーグ):イーロン・マスク氏率いる米宇宙開発企業スペースXの新規株式公開(IPO)は、投資家による買い需要を単に期待したものではなかった。既存株主が株式を売却しないことにも賭けたものだった。
同社の時価総額は上場後3営業日で約1兆ドル(約160兆円)増加し、16日には終値ベースでアマゾン・ドット・コムを抜いて世界5位に浮上した。しかし、こうした熱狂の裏で、ウォール街でも異例に厳しいロックアップ(株式売却制限期間)が設定されている。背景にある懸念はただ一つ。十分な買い手が集まるかではなく、売り圧力が強まるのではないかという点だ。
長年にわたり、ベンチャーキャピタル(VC)各社はスペースXへの持ち分を積み上げてきた。その価値は現在、取得時を数百億ドル規模で上回っている。ファウンダーズ・ファンドが保有する株式の価値は500億ドル超に達する。セコイア・キャピタルの持ち分は200億ドル超、アンドリーセン・ホロウィッツは同社史上最大の投資リターンを手にする見通しだ。
一般的には、投資家はいずれ保有株を売却すると考えられている。流動性イベント(投資回収の機会)はそのためにある。しかし、先週のIPO以降に筆者が話を聞いたVC関係者のほぼ全員が、これとは逆の見方を示した。株式を取得する機関投資家は売却せず、保有を続けるというのだ。
なぜか。その理由の一つは、ロックアップが一斉に解除されないことにある。スペースXの最初の決算発表後に9億株超が売却可能となるものの、その後も追加の株式は段階的にしか売却可能とならず、次の解除は早くても8月だ。
こうした長期保有への期待は、IPOの仕組み自体にも織り込まれている。複数の既存大株主は2027年半ばまで続くロックアップに同意しており、保有株の売却は段階的にしか認められていない。スペースXはこれらの投資家を明らかにしていないが、その意図は明白だ。問題は買い手ではなく、売り手だったのだ。
137ベンチャーズの投資パートナー、クリスチャン・ギャレット氏はスペースXの取引開始を目前に控えたタイミングで、「彼らの多くは売却に動かないだろう」と語った。将来的にベンチャーキャピタルファンドからスペースX株の分配を受ける大学基金や年金基金、財団、ファミリーオフィスについて言及した。
一部の投資家は資金化を急ぐ可能性があるが、多くの機関投資家は長年にわたりスペースXに投資しており、今後も株主であり続ける見込みだとギャレット氏は述べた。
セコイア・キャピタルのショーン・マグワイア氏は、さらに強気だ。「私は個人的に、この会社の株式を文字通り永久的に保有するつもりだ」とブルームバーグテレビジョンのインタビューで話した。「これほど壮大なビジョンと使命を掲げる企業は、歴史上ほかにない」と続けた。
ロックアップ期間が終了すると、ベンチャーキャピタルは保有株を市場で売却するのではなく、自らの投資家に分配することが多い。その株式が最終的に市場で売却されるかどうかは、受け取った投資家の判断次第だ。従業員についても同様だ。実際、スペースXではIPO前に、従業員が各種制度を活用して株式を売却するよりも、むしろ追加取得しようと動いていたことを示す事例が相次いだ。
市場が今直面しているのも、まさにその賭けだ。投資家がスペースX株を保有したいと考えているかどうかではない。既に保有している人たちが持ち続けるかどうかだ。ベンチャーキャピタルの見立てが正しければ、スタートアップ史上最大級の富の移転が実現しても、売り圧力は極めて限定的なものにとどまるだろう。
だが、彼らが間違っていた場合、スペースXの評価額が真に試されるのは足元の買い需要ではない。数十億ドル相当の株式がいずれ売却可能となり、その保有者が現金化するか、それとも引き続き成長に賭けるかの判断を下す時だ。
原題:SpaceX Venture Backers Debate When to Cash Out: Tech In Depth(抜粋)
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