日本銀行は16日、物価の上振れリスクに対応するため、政策金利を31年ぶりの高水準となる1%へ引き上げた。声明文や内田真一副総裁の記者会見を踏まえ、追加の利上げの予想時期を従来より早める動きが出ている。

日銀は声明文で、基調的な物価上昇率が「2%の物価安定目標を超えて上振れていくリスク」に言及し、インフレに対応していく姿勢を明確にした。他方で、日本経済は4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)の中心的な見通しにおおむね沿って推移していると明記し、利上げは景気に配慮した予防的対応という側面も示した。

内田副総裁は会見で、中心的な見通しの実現確度の高まりと物価の上振れリスクへの対応の「両方の要素を勘案して決めた」と利上げの理由を説明した。先行きに関しては、引き続き利上げで緩和度合いを調整していく姿勢を強調したが、今後の利上げ判断でどちらの要素を重視していくかは明言しなかった。

Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

最大のリスク要因である中東情勢は、米国とイランが和平合意に達したとはいえ、依然として不透明で、当面は物価上振れリスクを意識せざるを得ない状況だ。和平の進展は物価の上振れリスクを和らげ、利上げを急ぐ必要性を低下させる一方で、景気の下振れリスクも緩和し、中心的な見通しが実現する確度を高める。

その場合、今後の利上げペースは従来想定の「半年に1回程度」に回帰する可能性が大きいと市場はみている。日銀が緩和的な金融環境にあると判断している中では、中東情勢の急激な悪化やサプライチェーン(供給網)の寸断などで企業の賃金・価格設定行動の強まりに大きな変化がない限り、利上げ路線が揺らぐことはなさそうだ。

大和証券の山本賢治チーフマーケットエコノミストは17日付リポートで、今会合は「利上げフェーズへの復帰と同時に、リスク評価の軸がインフレ側へシフトしたことを確認するものだった」と指摘。年内に少なくとももう1回の利上げが見込まれ、円安と基調物価が強まれば「半年に1度」よりも早い10月を予想しているとした。

野村証券の森田京平チーフエコノミストらは16日のリポートで、次回利上げは12月を基本シナリオとする一方、リスクシナリオとして10月を追加。モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅日本チーフエコノミストらは同日付リポートで、従来予想の来年4月を暫定的に維持したが、10-12月の可能性が以前より高まっていると分析した。

消費税減税

中東情勢は景気の下押しと物価の上振れの双方の要因になるが、物価高対策などの高市早苗政権の対応は景気の下振れリスクを緩和し、利上げの必要性を高める。日銀は声明文で、政府によるエネルギー負担緩和策をはじめとする施策の効果に触れ、「経済が大きく下振れるリスクはひところよりも低下している」との判断を示した。

政府は今月成立した補正予算を活用し、エネルギー価格高騰で打撃を受ける家計や企業への支援を続ける方針だ。足元では食料品の消費税減税を巡る検討も進めている。消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の上昇率は一時的な低下が見込まれるものの、家計への所得移転などを通じて基調物価の押し上げに作用する可能性がある。

内田副総裁は会見で、利上げ判断では経済の下振れリスクの低下が「一つの大きな材料」になったと説明した。今回の利上げは原油高による幅広い品目の価格上昇や基調物価の上振れリスクに対応するためだと指摘。日本経済の持続的な成長の実現という観点で「政府のやっていることと整合的だ」と語った。

--取材協力:氏兼敬子.

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