16日の米株式市場ではS&P500種株価指数が反落。ウォーシュ連邦準備制度理事会(FRB)議長の下で初となる政策決定を翌日に控え、最高値圏で失速した。

原油相場が続落する中、米国債利回りは低下。一方、円は対ドルで小幅下落し、1ドル=160円台半ば近辺まで売られた。

景気敏感株への資金シフトが進む中、これまで堅調な推移が続いていた半導体関連銘柄が売られ、S&P500種の重しとなった。フィラデルフィア半導体株指数は5.7%急落。大型テクノロジー株で構成するナスダック100指数は1.9%下げた。一方、ダウ工業株30種平均は4営業日続伸し、連日で最高値を更新した。

S&P500種は反落

スペースXは再び急伸。上場3日目で、時価総額はアマゾン・ドット・コムを抜き、世界5位に浮上した。

米国とイランが19日に暫定和平合意に正式署名する準備を進める中、市場参加者は戦争の影響に関する政策当局者の見解に注目している。日本銀行は市場の予想通り利上げを実施したが、FRBを含む主要中央銀行の多くは今週、政策金利を据え置く公算が大きい。

エドワード・ジョーンズのモナ・マハジャン氏は「市場にとっては、新たな引き締めサイクルよりも、金利が『より長くより高い水準に』とどまるシナリオの方が株価の支援材料になり得ると当社ではみている。特に、それが底堅い経済成長とインフレ圧力の漸進的な緩和を反映している場合はなおさらだ」と述べた。

eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は今週の連邦公開市場委員会(FOMC)会合について、ウォーシュ氏がインフレにどう向き合う考えなのか、初めて本格的なシグナルが示され得ると指摘。新議長が初の大舞台で市場の見方を修正するのかどうか、市場は見極めようとしていると述べた。

「ここ数カ月で、市場の関心は『年内に何回利下げがあるのか』から、『何回の利上げが選択肢としてあり得るのか』に移った」とケンウェル氏は指摘。

「これは大きな変化で、ウォーシュ氏は難しい立場に置かれている。足元の原油価格下落に言及して忍耐強い姿勢を示すことはできるが、より広範なインフレ圧力が望ましくない方向に向かっているのであれば、慢心しているような印象を与える余裕はないはずだ」と続けた。

TDセキュリティーズのストラテジストは、FOMC声明から緩和バイアス文言が削除されるほか、インフレ見通しは上方修正されると予想している。また、政策金利見通しのドットプロットについては、年内だけでなく2027年についても中央値で利下げは示されないとみている。

一方、ウォーシュ議長が市場の利上げ観測を強くけん制する可能性は低いとTDセキュリティーズは指摘。自身の信認や政策運営の有効性を損なう恐れがあるためだとしている。

eToroのケンウェル氏は今回のFOMC会合について、「どのようなトーンとなり、投資家の期待をどの程度修正するかによっては、少なくとも決算シーズンが本格化するまでの向こう数週間にわたり、市場のテーマを左右する可能性がある」と語った。

国債

米国債は上昇。米国とイランの戦争終結期待を受けて、原油価格が一段と下落したことが背景。紛争勃発後に高まっていたインフレ懸念が和らいだ。

この日実施された20年債入札での需要が市場予想を上回ったことも相場の追い風となった。

TJMインスティテューショナル・サービシズの金利ストラテジスト、デービッド・ロビン氏は「原油価格は短期的に大きく下落しているが、市場は短期的な効果と長期的なインフレへの影響のどちらが重要か判断しかねている」と指摘。「その答えが出ていないため、原油価格が金利市場に与える影響は限定的だ」と述べた。

米ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)や北海ブレントなど原油の指標価格は3月上旬以来の安値まで下落したものの、米国債利回りは20年債入札後も、前日の低水準を上回って推移した。

ウォーシュ新体制下でのFOMCは17日、政策金利を据え置くと見込まれているが、今後1年間の金融政策の方向性を巡っては見方が分かれている。

金利先物市場の織り込みでは、FRBは年内に0.25ポイントの利上げに踏み切る公算が大きく、来年3月末までで見れば、実施はほぼ確実とみられている。

外為

外国為替市場で円は対ドルで小幅安。日銀の利上げ決定を挟んで東京時間から欧州時間にはほぼプラス圏で推移していたが、ニューヨーク時間に入って1ドル=160円48銭までじりじり売られた。

LMAXグループの市場ストラテジスト、ジョエル・クルーガー氏は16日のリポートで、「緩やかで事前に十分織り込まれた金融引き締めだけでは、円の持続的な回復にはつながりにくいとの見方が、今回の日銀利上げ決定で裏付けられた」と指摘した。

FOMC決定を控え、ブルームバーグ・ドル・スポット指数も小幅に下げた。

イランは米国との和平合意の一環として、原油販売を即時再開できるとウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた後、ドル指数は下落幅を拡大する場面があった。

原油

米国とイランがホルムズ海峡の再開に向けた暫定合意を発表したことを受けて、原油は今年最長の連続安となった。原油の供給回復見通しが高まり、ウォール街の主要銀行は相次ぎ、価格予想を引き下げた。

国際指標の北海ブレント原油先物は4営業日続落し、1バレル=79ドルを下回って取引を終えた。3月上旬以来の安値となる。

暫定合意は19日にスイスで署名される予定だが、米国、イランともに現時点で覚書の文面を公表していない。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が、この合意によりイランは直ちに原油を販売できるようになると報じたことも売り材料となった。

モルガン・スタンレーとゴールドマン・サックス・グループはいずれも、今後数四半期の原油価格見通しを引き下げた。ゴールドマンは15日付のリポートで、ペルシャ湾からの原油輸出が7月末までに戦争前の水準へ回復するとの見通しを示し、従来予想より1カ月前倒しした。

中東産原油の指標であるドバイ原油と、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国のマーバン原油はともに、供給超過を示唆するコンタンゴ(順ざや)の状態に転じた。背景には、中東地域からの供給増加が見込まれていることに加え、UAEが入札を通じた原油販売を継続していることがある。

合意内容の詳細が明らかになっていないため、海峡再開を巡る不透明感は残っている。ペルシャ湾岸のエネルギー当局者によると、原油が再びホルムズ海峡を通過できるようになるのかについて、買い手からの問い合わせが殺到している。一方、海運会社幹部や原油トレーダーらは、同海峡への船舶投入を決める前に、より詳細な情報が必要だとしている。

マルタイン・ラッツ氏らモルガン・スタンレーのアナリストは、「なお多くの点で交渉が必要であり、主要なリスクも残っている。しかし現時点では、今回の合意は紛争の緊張緩和と、ホルムズ海峡経由の原油輸出拡大に向けた重要な一歩だ」とリポートで指摘した。

その上で、「生産は9月までに50%、12月までに80%が回復すると見込んでおり、従来予想よりやや早いペースになる」との見方を示した。

北海ブレント先物8月限は前日比4.21ドル(5.1%)安の1バレル=78.96ドルで終了。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物7月限は、4.70ドル(5.8%)安の76.05ドルで取引を終えた。

金スポットは4営業日続伸。トランプ米大統領がホルムズ海峡は19日にも再開される可能性があるとの見方を示し、エネルギー価格の高騰とインフレショックが和らぐとの見方が広がった。

金スポット価格は1オンス=4310ドルを上回る水準で推移した。前日には、米国とイランが戦争終結に向けた暫定合意を発表したことを受けて2.2%上昇した。一方で、米国の同盟国からは、ホルムズ海峡を通じたエネルギーなどの輸送再開時期を巡り慎重な見方も出ている。原油価格は下落幅を拡大し、米国債利回りも低下した。

JPモルガン・プライベート・バンクのアレックス・ウルフ氏は、インタビューで「米国とイランの合意は金にとって追い風になるとみている。紛争によって生じた逆風の多くが和らぎつつあるためだ」と語った。

ウルフ氏によると、逆風には、エネルギー価格の上昇、債券利回りの上昇、ドル高に加え、中東の投資家や中央銀行による金購入の減少が含まれる。こうした要因が和らぐことで、中銀による購入やドル資産からの分散投資、アジアや中東での根強い需要といった金の構造的な支援材料が再び相場を下支えするようになるとの見方を示した。

金価格は、米国とイスラエルが2月末にイランへの攻撃を開始して以降、なお約18%下落している。戦争期間中、金は原油とおおむね逆相関で推移した。エネルギー価格の上昇がインフレを加速させ、中銀に高金利の長期維持を促したことで、利息を生まない貴金属の投資妙味が薄れたためだ。

金スポット価格はニューヨーク時間午後2時20分現在、前日比28.30ドル(0.7%)高の1オンス=4339.99ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は2.80ドル(0.1%)上昇し、4354.40ドルで引けた。

欧州

16日の欧州株式市場は、指標のストックス欧州600指数が小幅に続伸。ホルムズ海峡の通航が週後半に再開されるとの見方から、リスク志向が優勢となった。

同指数は0.2%上昇して取引を終えた。銀行や工業が買われた一方、通信やテクノロジーは下落した。

米国とイランが19日にスイスで暫定和平合意の正式な署名を行う見通しであることも、指数の上昇を後押しした。

BNPパリバ・ウェルス・マネジメントのチーフ投資ストラテジスト、シュテファン・ケンパー氏は「『うわさで買って、事実で売る』展開になるかもしれない。状況はやや危うく見え、最終段階で決裂するリスクも残っているからだ」と説明した。

債券も上昇。とりわけ長期債が買われた。米イランの合意署名を19日に控え、原油価格が一段安となったことが好感された。

イランは署名直後から石油を販売できるようになるとの報道も伝わり、原油価格は下げを拡大。北海ブレント原油は1バレル=80ドルを下回った。

欧州中央銀行(ECB)のチーフエコノミスト、レーン理事は、中東の戦争が引き起こしたインフレは尾を引く見込みで、原油価格の見通しは戦争前の予想に戻っていないと指摘した。

6月16日の欧州マーケット概観(表はロンドン午後6時現在)

原題:Nasdaq 100 Falls 2% as Chipmakers Halt Solid Run: Markets Wrap(抜粋)

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