米国とイランの合意による楽観論の先にある3つの焦点
6月12日の米国株式市場は、米国とイランの戦闘終結に向けた合意への期待が高まり、楽観論が広がった。原油価格がまとまった幅で下落する中、利上げ観測がやや低下していることも、株式市場のサポート材料である。
トランプ大統領は6月15日、SNSでイランとの合意が完了し、ホルムズ海峡の開放と米海軍による海上封鎖の即時解除を承認したと公表した。イランも米国との合意成立を事実上認めたと報じられており、原油価格の下落をテコに楽観的な見方が強まるだろう。
今後の焦点は、①景気楽観論が広がる中でこれまでのAI・半導体関連株への一極集中の巻き戻しがどのような形で生じるのか、②楽観論が広がる中で、中長期のインフレ予想が高まるかどうか、③イラン情勢の悪化以降の経済の混乱が遅れて出てくることはないか、である。このうち、①AI・半導体関連株への一極集中の修正については、短期的には株式市場のボラティリティを高める可能性があるが、中長期的には問題はないだろう。②インフレ予想の高まりについては、株高による資産効果が個人消費を強めるという見方が広がる可能性に注意が必要である。原油価格が下落しても、かえってインフレ予想が高まり、長期金利の上昇を引き起こすことはあり得る。もっとも、インフレ懸念が続く場合、投資資金は債券市場には回らずに、株式市場に滞留する可能性が高い。これまでも高金利環境が実体経済を大きく傷つけることはなかったことから、株式市場にとっては大きなリスクとはならないだろう。
株式市場にとって最もリスクが高い展開となりそうなのが、③実体経済の悪化の兆候がみられる展開である。3月以降のイラン情勢悪化の影響が労働市場などに遅れて顕在化する場合、景気楽観論が後退してしまう可能性がある。むろん、米国とイランは戦闘終結に向かって動いていることから、雇用統計の悪化も「古いデータ」とされる可能性もある。しかし、例えばAIの影響で雇用が悪化しているという見方につながれば、中長期的な景気悪化とディスインフレ観測につながっていく可能性もある。いずれにせよ、債券市場に資金が戻り、債券が安全資産としての地位を回復することが、株式市場にとっての最大のリスクになるだろう。
筆者は、過去2年がそうだったように、夏から秋にかけて雇用統計が悪化する可能性があるとみている。年後半には、③労働市場の悪化が市場のテーマとなり、長期金利が低下していく展開を予想している。
インフレ懸念後退(利上げ観測後退)と楽観論の綱引きで金利は横ばい
6月12日の米国債券市場は、前日に金利がまとまった幅で下落していたこともあり、その反動で金利が上昇した。もっとも、長期金利は前日差+1.8bp、2年金利は同+1.9bpと、上昇幅は大きくなかった。イラン情勢に対して楽観論が広がる中で、実質金利には上昇圧力がかかっているものの、原油価格の下落を反映してインフレ予想が低下し、利上げ観測が後退している。FF金利先物市場では、年内の利上げ回数の織り込みが約0.82回と、1回を下回っている。今後、長期金利は景気楽観論による上昇圧力と、インフレ予想の低下と利上げ観測の後退による低下圧力が綱引きになるだろう。結果的に、当面は横ばい圏の推移になると予想される。長期金利がまとまった幅で低下するには、雇用統計の悪化が必要になる公算である。