(ブルームバーグ):ニューヨークから東京まで、世界中の機関投資家や個人投資家が、歴史的瞬間を待ち構えていた。彼らのお目当ては、イーロン・マスク氏率いるスペースXだ。史上最大の新規株式公開(IPO)となった同社の株式取引が、間もなく開始されようとしていた。
「ものすごい熱気だ。まるでNBAプレーオフのニューヨーク・ニックス戦で試合開始のジャンプボールを待っている雰囲気だ」と、スティーフル・ニコラウスの株式トレーディング・グローバル責任者、R.J.グラント氏はニューヨークから電話で語った。「今は嵐の前の静けさ。それに夏に入り、インターンや新入社員の季節でもあるので、多くの若者が目を輝かせながらこの出来事に魅了されている。忙しくなりそうなので、後でチームのランチを買いに、シェイクシャックまでひとっ走りしないといけないかもしれない」と話した。
スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ・コープ、略してスペースXは、ナスダック市場上場初日の12日、公開価格を約11%上回る150ドルで取引を開始した。その後、急速に上値を伸ばして、一時176ドル52セントを付けた。
カナダのトロントでは、トリプル D トレーディングで市場構造責任者兼自己勘定トレーダーを務めるデニス・ディック氏が空腹と闘っていた。「5時間前に起きてから、まだ何も食べていない。腹が減って仕方がない。おなかがぐるぐる鳴っている」と同氏は語った。「画面に貼りついている。早くスペースXの取引が始まってほしい。そうすれば食事ができるからだ。今は席を離れられない。トイレに駆け込むことすらできない。この瞬間を見逃したくないからだ」と続けた。
一方、地球の反対側では、すでに市場が終わったシドニーで、グローバル X マネジメントの投資ストラテジスト、ジャスティン・リン氏が自宅でスペースXを注視していた。普段なら金曜の夜はガールフレンドと一緒に、Netflixでコメディドラマを見返している時間だ。
「横でブルームバーグ・ターミナルを開いているので、彼女は少し怒っているかもしれない。でも、そういう仕事なのだ」とリン氏は笑いながら語った。「これは単にスペースX投資の需要として見るだけではなく、半導体業界全体が頼りにしている『夢や希望』への投資需要として捉えることが重要だと思う」と話した。

シドニーに本社を置くタミム・アセット・マネジメントの豪州株式責任者ロン・シャムガー氏も、スマートフォンで値動きを追い続けていた。
「投資家はイーロン(マスク氏)を買っているのだ。先見性と、イーロン自身と、同氏が今後10年、20年で描く計画を買っているのだ」と語った。シャムガー氏のファンドはスペースX株を保有していない。「そうでなければ、このバリュエーションを見て投資しようとは思わないだろう」と同氏は述べた。
ダラスの投資会社ファウンダー・ファンズで、パートナー兼ポートフォリオマネジャーを務めるマイケル・モナハン氏は、マスク氏を「われわれの世代における究極の創業者」と呼ぶ。ファウンダー・ファンズは創業者が経営する企業に投資する。モナハン氏はこのIPOに備え、過去8週間、毎週15~20時間を調査に費やしてきた。スペースX株の取引開始後、どの価格水準と評価額で買い増すかを検討したという。
「企業価値が2兆2500億ドルを下回る水準で、少しでも株を買い増せれば申し分はない」と同氏は語った。
ウオッチパーティー
ロンドンでは、エナジー・グループ・キャピタルの調査責任者アマンダ・ライオンズ氏が、自宅のデスクから上場の様子を追っていた。「上場ウオッチパーティーが開かれているという事実が、すべてを物語っている」と同氏は語った。「これはキャッシュフローではなく、カルト的な人気に基づいて価格が付けられている。その現実から目を背けると痛い目を見るだろう。これは批判ではない。単純な事実だ」と述べた。
顧客に慎重な対応を促すアドバイザーも少なからずいる。個人投資家向けの投資講座を開いているストック・スウーッシュの創業者、メリッサ・アーモ氏にはこのIPOの売買戦略に関する問い合わせが殺到している。過去にも大きな期待を集めながら上場初日後に失速した案件があったと、同氏は顧客に思い出させている。
「誰も私の話を聞いてくれないかもしれない。みんなかなり興奮しているから」と同氏は語った。自身がこの株を売買するとしたら、早くても来週以降だと付け加えた。「まさに無法地帯のような取引だと思う」と述べた。
個人投資家は慎重
一方、東京では20歳の個人投資家、萩谷月登氏は日本向け販売分の抽選で、スペースX株を5株引き当てた。その受け渡しを心待ちにしている幸運な同氏も、さらなる買い増しを狙っている。しかし、その前に状況が落ち着くのを待つつもりだ。
「もう少し保有したいと思ってる」と萩谷氏は語った。「ただ、最初は値動きがとても激しくなりそうなので、飛びつく前にまず上場後の展開を見極めたい」と話した。
一方で「ネタのために」1株だけ購入した個人投資家もいる。米バージニア州シャーロッツビル在住のジョン・サックスマン氏(24)は投資銀行業務に従事した経験があり、この秋バージニア大学の修士課程に進学する予定だ。自身をマスク氏のフォロワーだと語る同氏でさえ、現在の株価水準で買い増すことには慎重だ。
「ロビンフッドのゴールドクレジットカードを持っていることが、IPO前の購入権を付与された理由だと思う。実際に割り当てを受けられるとは思っていなかった」と同氏は語った。「黒字転換すれば、多分もっと安い価格で買い増すだろう」と続けた。
原題:From Watch Parties to Peeking at Screens, Traders Monitor SpaceX(抜粋)
--取材協力:アリス・フレンチ、Ruhell Amin、Geoffrey Morgan.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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