パソコンの未来が再び熱い論点になっている。きっかけは、人工知能(AI)半導体で世界をリードする米エヌビディアが今週、米マイクロソフトと共に発表した取り組みだ。

エヌビディアはノートパソコンの中核部品開発に再び挑み、数十年で最大の変化を端末にもたらすとうたっている。台北で開かれたIT(情報技術)見本市「コンピューテックス2026」に合わせた同社が発表した新しい半導体「RTX Spark Superchip(RTXスパーク・スーパーチップ)」は、ほかの話題をかすませた。

発表後に台湾で開いたアナリスト向けイベントで、ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、パソコンは現在のように所有者が使うのを待つ道具という役割から根本的に変わる必要があると語りかけた。

将来のマシンは常に作業を行い、アシスタントとして利用者とコミュニケーションを取ることを選ぶようになるという。同氏はそれを映画「スター・ウォーズ」でルーク・スカイウォーカーが相棒とするロボット「R2-D2」になぞらえ、「現在、世界にそれができるコンピューターは1台も存在しない」と述べた。

この発表後、米インテルと米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価は下落。一方、エヌビディアの提携先である台湾の聯発科技(メディアテック)の株価は上昇した。RTXスパークを搭載した最初の端末が発売される今秋に向け、注目すべき対決の構図が生まれた。

RTXスパークは、エヌビディアがAI作業に最適化されたコンピューターを実現するとする新型チップ群の第1弾だ。同社の製品がAIデータセンターの基盤になったのと同じ枠組みを、パソコンにも持ち込む。インテルやAMDの製品との大きな違いは、インターネットに接続せず、端末上で大規模モデルを動かせる点にある。

「これはノートパソコンの発売というより、AIパソコンを再定義しようとする試みに見える」とブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、スティーブン・ツェン氏は指摘。

「現在市場に出回っているいわゆるAIパソコンの多くは、依然としてクラウドAIに大きく依存しており、高性能プロセッサーを搭載した通常のパソコンとの違いが分かりにくい。RTXスパークは真のAIパソコンならAIエージェントをローカルで動かせるべきだと主張することで、基準を引き上げている」と話した。

台北で開かれたコンピューテックス2026で展示されたエヌビディアの「RTX Spark Superchip」

グラフィックスカードを5000億ドル(約80兆円)規模のインフラ事業へと拡大したエヌビディアは、基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」のエコシステム(生態系)も刷新しようとしている。

コンピューテックスでは、その求心力を見せつけた。フアン氏は世界中のパソコンメーカーを巻き込んでいる。ウィンドウズを生み出したマイクロソフトはこの新プロジェクトを全面支援する。

中国の聯想集団(レノボ・グループ)や米デル・テクノロジーズ、台湾の華碩電脳(エイスース・コンピューター)はいずれもRTXスパーク搭載端末を台北で披露した。

エヌビディアはノートパソコン、デスクトップ、ワークステーションの3種類を投入する計画で、フアン氏はAIスーパーコンピューターをすべての家庭に置く構想を抱いている。同氏は1日のプレゼンテーションで「マイクロソフトとエヌビディアは、細心の注意を払いすべてを最適化した」と述べた。

エヌビディアがデータセンター以外に事業領域を広げる動きは、開発者のエコシステム強化につながる上、消費者に同社ブランドの新たな購入対象を提供する。

同社によると、初期のパソコンモデルは「プレミアム」価格帯になるが、時間をかけてより安価なモデルを投入し、他の市場セグメントにも対応する方針だ。

BIのアナリスト、クンジャン・ソブハニ、オスカー・エルナンデス・テハダ両氏は、「エヌビディアは攻勢を強めている。シェアがほぼない新市場に参入し、AMDやインテルなどの企業から急速に大きなシェアを奪う可能性が高い」と分析。

その上で、RTXスパークは「パーソナルAIへの関心の高まりから恩恵を受ける可能性がある。企業の導入は特に重要になり得る。組織がクラウドベースのサービスと組み合わせてローカルAI処理を求めるためだ。AIエージェントの普及が個人向けAI計算需要を押し上げるなら、エヌビディアはこれまで低い1桁成長にとどまってきたパソコン市場の再編を後押しし得る」と予想した。

米クアルコムのクリスティアーノ・アモンCEOもコンピューテックスで同様の見方を示した。スマートフォン中心のデジタルエコシステムではなく、AIエージェントに情報を供給することが優先される、より多様なハードウエアの時代に移りつつある。

アモン氏は2026年を「エージェントの年」と宣言している。同氏とフアン氏はいずれも、マイクロソフトの開発者会議ビルドに電話で参加し、自社テクノロジーの将来性をアピールした。

エヌビディアのフアンCEO(台北での夕食イベント)

RTXスパークにはなお多くの疑問が残る。エヌビディアとメディアテックは、その設計の一部について詳述し、終日駆動のバッテリー寿命を実現する見込みだと述べているものの、既存デバイスとの性能比較は示さなかった。エヌビディアはウィンドウズの既存勢力であるインテルとの差別化に向け、意味のある優位性を示す必要がある。

インテルのリップブー・タンCEOは2日の円卓セッションで、長期的な視点を重視しており、業界内に競合相手はいないとの認識を示した上で、エヌビディアについて「良き友人だ」と述べた。同社は昨年9月にインテル株を50億ドル相当取得しており、タン氏は「彼らは投資家だ。出資を受けられてうれしく思う」と語った。

原題:Nvidia’s RTX Spark Sets Up Fight Over the Soul of Windows PCs(抜粋)

--取材協力:Oscar Hernandez Tejada、Ian King.

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