(ブルームバーグ):日本は長年、暑さをしのぐために工夫を重ねてきた。1200年以上前の平安時代には、着物などに収まるよう折りたためる「扇子」が発明された。近年では、女性だけでなく男性でも日傘を利用する人が増えている。この国は暑さへの適応を学んできた。
だが、東京都は今年、その工夫を一歩進め過ぎたかもしれない。厳しさを増す夏への対応策であり、イラン戦争によるエネルギー価格高騰も念頭に置いた「東京クールビズ」キャンペーンの一環として、都庁は職員によるハーフパンツ勤務を初めて認め、企業にも促している。
これは、男女を問わず、Tシャツやポロシャツ、半袖トップスなど快適さを優先した軽装を推奨するキャンペーンの一環だ。しかし、どこまでカジュアル化を許容すべきかを巡る議論も起きている。最近、あるニュース番組の街頭インタビューでは、オフィスで中年男性の脚を見せられるのは「キモい」との声が若い女性から相次いだ。
スーツにネクタイ姿のサラリーマン像がいまだに根強いとはいえ、近年の夏場のオフィスファッションはかなりカジュアルになっている。そのきっかけは2005年のクールビズ運動だった。当時の小池百合子環境相が主導したもので、上着とネクタイを外すことを認めた。さらに新型コロナウイルス禍で快適さ重視の流れが加速し、今ではTシャツやスニーカーもオフィスファッションの一部となっている。
短パンは行き過ぎ
2000年代当時の夏は現在ほど過酷ではなく、クールビズの目的も命を守ることより省エネだった。ただ、最近の長く厳しい夏を踏まえても、ハーフパンツはこの許容範囲を超えている。
公園なら構わないが、ダブルスタンダードと言われようと、職場にはふさわしくない。そして短パンは、さらに罪深いとも言えるサンダル着用へとほぼ確実につながる。
しかも、それは深刻な問題への的外れな答えでもある。日本の夏は年々暑くなっている。特に都市部では、建物や道路が日中の熱を吸収し、夜間に放出するヒートアイランド現象によって高温に拍車がかかっている。ここ数年の夏は特に厳しく、東京都心では昨年、最高気温が35度以上となる猛暑日が過去最多の29日を記録した。

だが、猛暑日ではもはや現状を表現しきれなくなっている。気象庁は今年、最高気温が40度以上の日の新たな名称を酷暑日と決定した。東京都心ではまだ観測されていないが、時間の問題だろう。
当局はまた、人体への危険度を湿度や輻射(ふくしゃ)熱を加味して算出する湿球黒球温度(WBGT)に基づき、熱中症リスクが極めて高い日に警報を発令し始めている。熱中症の死者は2024年に全国で初めて2000人を超えた。

平安時代の貴族たちは山荘に逃れて暑さをしのいだが、現代の課題には新たな解決策が必要だ。東京都は時差出勤やリモートワーク拡大など、他にも多くの現実的な対策を提案している。
何より日本が取り組んでいるのは、特に高齢世代に根強い、我慢を美徳とする古い価値観から人々を脱却させることだ。当局は、誤解を招きやすかった初期クールビズ時代の省エネ重視姿勢から大きく転換した。
当時はエアコンの温度設定を28度にするよう促したことで知られる。現在では、猛暑時には空調の使用を積極的に勧めている。その背景には、エアコンが設置されていながら使用せずに死亡する高齢者が増えているという深刻な問題がある。
省エネや気候変動対策を優先し、国民に節電を求める一部欧州諸国とは対照的に、日本ではエアコン普及が急速に進んだ。1980年代には設置率が50%未満だったが、補助金政策もあり、現在では90%を大きく超える。公立小中学校の普通教室でも、2010年時点では設置率が20%だったが、今では99.1%に達している。世界最大のエアコンメーカーがダイキン工業であることも追い風だ。
気温はすぐに下がらず
世界が気候変動対策に本気で取り組んだとしても(最近ではその熱意もほとんど感じられないが)、気温がすぐに下がることはない。日本はエネルギー転換を巡る対応が遅いと批判されてきたが、国内事情や地政学、技術面の現実的な障害がある。世界が再び原子力に目を向ける中、最も現実的な解決策は原子力発電であり、高市早苗首相はこれをさらに推進すべきだ。東京の8月は、精神論だけで生き延びることはできない。
屋外労働者には、短パンとは別の種類の制服がある。04年にソニーグループの元技術者が発明した空調服だ。複数のファンとバッテリーを搭載し、全身を冷却することで、建設や道路工事作業員の仕事を支えている。ソニーGも、首の後ろから熱を吸収して体を冷やす高級携帯型冷却機器を販売している。
そして露出した脚の問題については、日本はすでに解決策を見つけている。それは、ユニクロの「感動パンツ」だ。通気性の高いボトムスで、涼しさを保ちながらもプロフェッショナルな見た目を維持できる。
扇子から空調服まで、日本は長い歴史の中で夏を乗り切るすべを編み出してきた。それなら、ズボンをはいたままでも十分に暑さをしのげるはずだ。
(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:Tokyo Wants You to Wear Shorts to Work. Say No: Gearoid Reidy(抜粋)
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