イラン情勢は「ほふく前進」的な改善が続く

5月29日の米国株式市場は、米国とイランの交渉進展への期待と、金利低下が支えとなり、堅調な展開だった。トランプ大統領の承認を待つ状況とされていた米国とイランの停戦延長の暫定合意について、この日はトランプ大統領が最終判断を下すことを示唆し、期待感が高まった。

なお、週末にはトランプ大統領がイランの核開発などについて修正を求めている(交渉が続く公算)と報じられたことから、5月29日時点と比べると、今週は不透明感がやや高まった状態で始まる。とはいえ、交渉が「ほふく前進」的であることは市場の想定の範囲内だろう。市場が楽観的だからこそ、トランプ大統領は交渉において強気化できる面があると言え、仮に市場が交渉の難航を悲観する状況になれば、逆に交渉が進む可能性が高い。総じて、イラン情勢に関連した不安は弱まっていくだろう。注目すべきはAI・半導体関連株に集中していた投資資金に広がりが出てくる可能性と、その動きによるマネーフローの変化がこれまでの動きの揺り戻しにつながる可能性である。

原油価格が下落しても、AI・半導体株の金利への影響が不透明

5月29日の米国債券市場は、原油価格の下落(金利低下要因)が続いている一方で、株価の上昇(金利上昇要因)が続いていることから、動きにくい展開が続いている。長期金利は前日差▲1.2bp、2年金利は同▲1.6bpだった。原油高によるインフレ懸念が和らぐ中、利上げ観測は後退している。FF金利先物市場が織り込む年内の利上げ回数は約0.57回と、前日の0.60回から減少した。イラン情勢の改善が進めば、原油高によるインフレ高進に対応するための利上げの必要性は低下する。ただし、当面は①原油高が波及して物価に与える影響と、②AI・半導体関連株が大幅に上昇した影響を見定める必要がある。

AIがインフレや中立金利に与える影響というテーマについては、中長期的な結論を得ることは容易ではない。しかし、関連株の上昇や市場の楽観論が個人消費や企業の投資に与える影響については、警戒が必要である。イラン情勢が改善に向かったとしても、すぐに利下げ観測の復活とはならないだろう。
引き続き、利下げ観測の復活には、雇用統計の悪化が必要な状況だと、筆者はみている。