(ブルームバーグ):米国とイランは週末、停戦延長とホルムズ海峡の通航再開に向けた合意案の修正を巡ってメッセージを交わした。ただ、双方が大きな進展を遂げているかどうかは不透明なままだ。
外交協議が続く一方で、イスラエルはレバノン南部での地上作戦を拡大し、レバノンとの脆弱(ぜいじゃく)な停戦を打ち砕いた。
トランプ米大統領は、5月29日にホワイトハウスのシチュエーションルームで開かれた会議以降、イラン問題について発言していない。同会議でトランプ氏は合意を発表できるとの見通しを示していた。同日にSNSへ投稿した内容では、イランが核開発計画を停止することや、ホルムズ海峡を従来の自由な国際水路として完全に回復させることなど、自身の要求を改めて強調した。
イランの準国営タスニム通信は31日、双方が引き続き修正案を提示していると報じた。一方で、最終的には米国とイランの双方が修正内容を拒否し、合意が崩壊する可能性もあると指摘した。
タスニム通信によると、イランのアラグチ外相は「協議とメッセージのやり取りは継続しており、明確な結果が出るまでは判断することはできない」と述べた。また「現在語られていることは全て臆測であり、重視すべきではない」と語った。
一方、イスラエルは過去25年で最大規模となるレバノン侵攻を実施した。これに対し、親イラン武装組織のヒズボラはイスラエル北部への攻撃を強化している。
イスラエル軍によると、ヒズボラは週末にかけて、レバノン国内のイスラエル軍やイスラエル北部に300発超の「飛翔(ひしょう)体」を発射した。イスラエル軍によると、数日前に始めた地上作戦を強化し、リタニ川を越えて南部の主要シーア派都市ナバティエ近郊まで進軍した。ネタニヤフ首相もボーフォート高地を制圧したとして、ヒズボラ支配地域への侵攻拡大を指示したと表明した。
イスラエルは米国とイランの協議には参加しておらず、仮にイランとの戦争が解決したとしても、レバノンでの戦闘を停止することに同意するかどうかは不明だ。
交渉の争点
イラン国営テレビは30日、新たな合意案の存在を報じた。同案では、ホルムズ海峡を「通過する船舶の性質を決定する排他的権限」をイラン政府に認める内容が盛り込まれているとされるが、これは米国が受け入れない可能性が高い。
トランプ氏はかつて、イランと米国が共同事業として海峡の航行管理を行う可能性に言及していた。また先週27日には、ホルムズ海峡を単独で支配する国はないとの認識を示した上で、米国が「監視に当たる」と語った。
イラン国営テレビによると、合意案には米国が凍結資金120億ドルへのアクセスを60日以内に認め、その資金を制限なく直接イランの銀行へ送金することを約束した内容も含まれている。ただし、合意案は「非公式」であり、最終決定されたものではないとした。
ホワイトハウスは同報道に関するコメントの求めに応じなかった。
ベッセント財務長官は、核兵器保有を追求しないとのイラン側のコミットメントが米国との協議の議題になっていると主張した。
FOXニュースの番組「サンデー・モーニング・フューチャーズ」で「イランが核兵器を保有しないことについて協議する意思を示したのは47年で初めてだ。トランプ大統領のおかげで、これが初めて交渉のテーブルに載った」と語った。
イランは、オバマ政権下で締結された2015年の核合意以降、一貫して核兵器開発を追求していないと主張してきた。同合意では、イランは原子力発電向けだとしていたウラン濃縮活動に上限を設け、保有在庫を国外へ搬出することに同意した。しかしトランプ氏が第1次政権時にこの合意から離脱した後、イランはオバマ政権時代の合意で認められた水準を超えるウラン濃縮を再開した。
市場は急激に変化する双方の発言に翻弄(ほんろう)されているが、停戦延長への期待から、断続的な攻撃が続く中でも株価は上昇している。
第1次トランプ政権で国家安全保障担当の補佐官を務めたジョン・ボルトン氏は、有権者がエネルギー価格上昇に不満を募らせる中、今秋の議会選挙に対する共和党内の懸念を和らげるため、トランプ氏は不完全な合意でも受け入れる用意があると述べた。
ボルトン氏は「ブルームバーグ・ディス・ウィークエンド」で、「これは米国のガソリン価格に関する合意だ」と語った。「トランプ氏は人々が支払う価格水準を懸念している。インフレへの影響を心配し、11月の選挙への影響も懸念している。しかしこれは米国にとって満足のいく形で戦争を終わらせる合意ではない」と述べた。
ボルトン氏は、イラン政権の存続を認めれば、同国が軍事力と核能力を再建することになると警告した。「イラン政権の存続が認められれば、トランプ氏はそれを受け入れる構えのようだが、同政権は海峡の通航再開によって石油販売を拡大し、歳入を増やし、権力基盤をさらに強固にするだけだ」と述べた。
米兵が負傷
最近のイランによるクウェート国内の空軍基地への弾道ミサイル攻撃で、複数の米国人が軽傷を負い、「MQ-9リーパー」無人機2機も深刻な損傷を受けた。今回の攻撃に詳しい関係者が匿名で明らかにした。
関係者によると、クウェートの防空システムがイランのミサイル「ファテフ110」を迎撃したものの、落下した破片でアリ・アル・サレム空軍基地に被害が出た。請負業者や現役の軍関係者など約5人が軽傷を負ったほか、リーパー1機が破壊され、少なくとも別の1機も深刻な損傷を受けたという。リーパーの価格は1機当たり約3000万ドル(約48億円)。
米中央軍にコメントを求めたが、すぐには返答がなかった。
米軍は30日、ホルムズ海峡封鎖を監視する活動の一環として、29日にイランの港へ向かっていたガンビア船籍の船舶を無力化したと発表した。中央軍がXに掲載した声明によると、乗組員が20回以上の警告を無視したため、米軍機がミサイル「ヘルファイア」を機関室へ撃ち込み、航行不能にした。
戦略拠点を掌握
一方、イスラエルのカッツ国防相は、国防軍(IDF)がナバティエ近郊の歴史的建造物であるボーフォート城に、イスラエルの国旗を掲げたと述べ、今回の作戦拡大は同地域における「恒久的な駐留」を意味すると語った。
フランスのマクロン大統領は新たな進軍を非難し、停戦を求めた。Xへの投稿で、「現在レバノン南部で進行している大規模な軍事的エスカレーションを正当化するものは何もない」と述べた。
レバノン保健省によると、3月以降、ヒズボラによる攻撃再開への報復として実施されたイスラエルの空爆により、レバノン南部や首都ベイルートの広範囲が破壊され、少なくとも3370人が死亡した。
原題:US, Iran Trade Drafts of Deal as Israel Expands Lebanon Assault(抜粋)
--取材協力:Skylar Woodhouse、Golnar Motevalli、Maria Paula Mijares Torres、Benoit Berthelot.
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