29日の米金融市場では株式相場が続伸し、週間ベースで歴史的な長期連続高を記録した。米国とイランの戦争が終結に向かうとの期待と、人工知能(AI)投資が企業利益をさらに押し上げるとの観測に支えられた。

S&P500種株価指数はイランとの戦争開始後につけた安値からおよそ20%上昇。週間ベースでは2023年以来の9週連続高となった。9週続伸はこの40年間で数回しか起きていない。デル・テクノロジーズはAIサーバー需要を背景に堅調な業績見通しを示し、33%高で取引を終えた。

トランプ米大統領はイランとの暫定合意に関して「最終判断を下すためにシチュエーションルーム(作戦司令室)で会合を開く」と、自身のSNSへの投稿で明らかにした。だが、その数時間後、トランプ氏は何ら決定を下さないままシチュエーションルームでの会議を終えたと、米紙ニューヨーク・タイムズが政府高官の話として報じた。

ミラー・タバクのマット・メイリー氏は「合意が破談になるリスクは今も残っていると考えている。しかし少なくとも停戦は延長されるように見える」と述べた。「唯一の問題は、株式市場がすでにこの展開を織り込んでいるかどうかだ」と続けた。

地政学的な緊張緩和と、停戦に向けた枠組み交渉の継続が株式相場を押し上げる主因だが、強い企業利益も勢いの持続に重要な役割を担ってきたと、LPLファイナンシャルのアダム・ターンクイスト氏は指摘した。

バウアーソック・キャピタル・パートナーズのエミリー・バウアーソック・ヒル氏は「株式に対する熱狂には正当な理由がある」と話す。「AIインフラブームは今後も、地政学的な波乱による悪影響を相殺すると投資家はみている。株式市場は企業利益を重視する。利益が伸びる限り、株価は上昇を続けられる」と述べた。

個別企業のニュースでは、ユニバーサル・ミュージック・グループがビル・アックマン氏のパーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントからの買収提案を、株主の利益に沿わないとして拒否した。

米国債

米国債相場は短期債を中心に上昇。週間ベースではイランとの戦争が始まって以来の大幅高となった。戦争終結への期待で原油価格が下げたことが、米国債買いの背景にある。

トランプ氏のソーシャルメディア投稿後、2年債から10年債にかけて利回りが今週の最低水準となった。30年債利回りは一時4.96%と、5月11日以来の低水準となった。しかし取引終盤に、米政府の会合が2時間の協議の末、何ら決定を下さず終了したとニューヨーク・タイムズ紙が報じると、米国債利回りの動きは一部巻き戻された。

シティグループの金利ストラテジスト、ラガブ・ダトラ氏は「今後約1週間内に合意が成立するとみて、ほぼ間違いなさそうだ」と語る。「そうした楽観に基づき、原油高がコアインフレに波及することはないかもしれないとの見方が強まっている」と述べた。

今月初めの段階では、戦争が世界経済に与える影響が懸念され、国債価格は各国で急落していた。2月末までは、今年2回の利下げが短期金融市場で織り込まれていたが、今では来年半ばまでの利上げ観測が強まっている。

ダトラ氏は「利上げ織り込みのリスクは多少残るが、それでも合意が最終的にまとまれば、その大半は解消されるだろう」と述べた。年末の政策金利にリンクした金利スワップ取引では、およそ15ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の金融引き締めが織り込まれている。

フィラデルフィア連銀のポールソン総裁は、米経済は一連のインフレショックに直面しているものの、構造的な変化を示す証拠は見当たらないとの見解を示した。「インフレに構造的変化が生じているとはみていない。一連のショックがインフレという形で表れていると考えている」と述べた。

ドイツ銀行の金利ストラテジストらは、米10年債利回りの年末見通しを従来予想から引き上げた。ウォーシュ新議長が率いる連邦準備制度理事会(FRB)は利下げ局面を終えたとの見方を根拠にしている。

同行ストラテジストのマシュー・ラスキン、スティーブン・ゼン両氏らのチームは、米10年債利回りが年内に4.70%に達すると予想した。これまでの年末予想は4.45%。29日も4.45%前後で推移している。

今週の米国債相場はテクニカル要因にも支えられた。今月は合計3240億ドル相当の米国債入札が行われた。これらはニューヨーク時間午後4時、ブルームバーグ米国債指数に組み入れられ、各種インデックスファンドやパッシブ投資家は同指数のパフォーマンスに合わせるため、その時間の前後にこれらを購入する。

外為

外国為替市場ではトランプ氏の「最終判断」に関する投稿を受けて、ドルが下落した。主要10通貨全てが対ドルで上昇した。円は一時1ドル=159円10銭まで上昇した後、上げ幅を失う展開。

主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、トランプ氏の投稿直後は一時約0.2%下げた。

ウェルズ・ファーゴのストラテジスト、エリック・ネルソン氏は「ホルムズ海峡が近く正常化されることが確実となれば、ドルは一気に売られる」と予想する。「こうしたニュースに対しては依然、健全な疑念が見られる。従って本当に確認されれば、より本格的なドル売り要因になるはずだ」と述べた。

政府・日本銀行は4月28日から5月27日の間に計11兆7349億円の為替介入を実施していた。財務省が29日公表した介入実績で明らかになった。介入は2024年7月以来で、月次ベースの介入額として過去最大を更新した。

片山さつき財務相は為替市場の動向に関し、介入に踏み切るタイミングが近づいているとの認識を示した。これまでで最も強い表現でけん制したことで、為替介入の実施へ最終警告の段階に入った。

原油

原油先物相場は6週間ぶりの安値に下落。米国とイランが60日間の停戦延長で暫定合意したことで、ホルムズ海峡が近く再開されるとの期待が高まった。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は、前日比1.54ドル(1.7%)安の1バレル=87.36ドルで終了。一方、この日が最終取引日となる北海ブレント先物7月限は1.66ドル(1.8%)安の92.05ドルで終了。中心限月の8月限は1.7%安の91.12ドルで終えた。

トランプ氏は朝方、イランとの停戦延長に向けた暫定合意について「最終判断」を下すと表明した。だが、トランプ氏は何ら決定を下さないままシチュエーションルームでの会議を終えたと、米紙ニューヨーク・タイムズが政府高官の話として報じた。

一方、イラン外務省は、最終的な合意にはまだ達していないと表明。国営イラン通信(IRNA)によると、バガエイ報道官は、イランと米国の間では引き続きメッセージのやり取りが続いていると述べた。

ブルームバーグが集計した船舶データによると、イラン戦争の勃発時にペルシャ湾内で足止めされた大型原油タンカーのうち、約4分の1がこれまでに湾外への脱出に成功した。

一方、米石油大手シェブロンのマイク・ワース最高経営責任者(CEO)は、ホルムズ海峡を航行する複数の船舶がここ数日で攻撃を受けたと明らかにした。その上で、和平合意が成立するかどうかにかかわらず、船主はなおペルシャ湾で「極めて現実的な」リスクに直面しているとの認識を示した。

BOKファイナンシャル・セキュリティーズのエネルギー取引責任者、デニス・キスラー氏は「イランはあらゆる合意を順守する必要があるだろうが、市場にとってそれ自体が大きな不確実要因だ」と指摘。

「ホルムズ海峡の通航量が回復しつつあるのは前向きな材料だが、WTI価格が80ドル台前半から半ばの水準で推移するには、その状況がしばらく安定的に続くのを確認する必要がある」と述べた。

金相場は続伸。トランプ氏がイランとの暫定合意について最終判断を下すと表明したことが追い風となった。

この発言を受けて、ドルが下げ、国債利回りが低下。金スポット価格は一時、2.2%高の1オンス=4595.17ドルまで買われ、3週間ぶりの大幅上昇を記録した。

金はイラン戦争開始直後に急落した後、停戦に向けた進展を巡って相反する材料を市場参加者が見極めようとする中で、比較的狭いレンジで推移してきた。2月末からは約13%下落している。

ニューヨーク時間午後1時58分時点で、金スポット価格は前日比57.71ドル高の1オンス=4552.99ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は60.60ドル(1.3%)上昇し4593.00ドルで引けた。

欧州

欧州市場では、国債が続伸。トランプ米大統領がイランとの停戦を延長する暫定合意案について「最終判断」を下すと述べ、戦争終結への期待が高まった。

ドイツ債利回りは全年限で3-4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下。10年債利回りは4bp低下して 2.93%となった。

英国債も同様の動き。2年債利回りは4bp低下し、4.20%に達した。

短期金融市場が織り込む年内利上げ見通しは、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(英中央銀行)とも後退した。ベイリー英中銀総裁は、インフレ率が一時的に目標を上回っても容認できるとの考えを示した。

株式はストックス欧州600指数が小幅高。月間でも2カ月連続で上昇した。

29日の同指数は0.1%上昇で取引を終えた。米イラン合意期待からリスク志向が改善し、メディアや銀行株が上げを主導。消費財や食品・飲料、たばこ、通信などディフェンシブな業種が軟調だった。

5月29日の欧州マーケット概観(表はロンドン午後6時現在)

原題:S&P 500 Powers Historic Weekly Run on US-Iran Bets: Markets Wrap(抜粋)

原題:Treasuries Set for Best Week Since War Began as Oil Retreats (1)(抜粋)

原題:USTs Front-End Bid Fades After Report Trump Made No Iran Call(抜粋)

原題:Dollar Falls on Iran Deal Optimism; Kiwi Rallies 1%: Inside G10(抜粋)

原題:Oil Sinks to 6-Week Low as Traders Bet on Possible US-Iran Truce(抜粋)

原題:Gold Jumps Most in Three Weeks as Trump Eyes ‘Final’ Iran Call(抜粋)

原題:European Stocks Notch Monthly Advance on US-Iran Deal Hopes(抜粋)

Bunds Advance as US Decision on Iran Looms: End-of-Day Curves(抜粋)

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