気象庁は、夏までにエルニーニョ現象が発生する確率が90%に高まっていると発表した。監視海域の水温と基準値との差(エルニーニョ監視指数)が+2~3℃前後に広がるとの予測も示しており、「スーパーエルニーニョ現象」となる恐れもある。アジア各国では中東危機によるエネルギー高に加え、以下2つの経路を通じてインフレ圧力が強まる見通しだ。

第1に、農業生産の減少による食料インフレ。エルニーニョ監視指数は1年半のラグをもって食料価格指数と連動する傾向がある。

試算によると、海面水温が平常時から+2℃上昇する場合、食料価格の前年比は+13%ポイント押し上げられる計算になる。
消費に占める食料の割合が高いASEAN諸国やインドでは、食料価格の高騰による景気下押し圧力は大きい。

スーパーエルニーニョ現象が発生した2010年代半ばは、原油価格が100ドル前後から30ドル台へと大幅に下落し、インフレ圧力を相殺した。一方、今回は中東危機を背景に原油価格が高止まりしているため、今後エルニーニョ現象の影響が食料価格に波及すれば、インフレ圧力が一段と強まり、消費や投資をさらに押し下げる恐れがある。
第2に、水力発電量の減少。ASEAN諸国や中国では水力発電への依存度が大きい。

エルニーニョ現象によって主要な河川の水位が低下すれば、電力不足が発生して製造業やサービス業の生産活動が制約されるほか、電力価格の上昇を通じて食料以外の分野でもインフレ圧力が強まる恐れがある。
(※情報提供、記事執筆:日本総合研究所 調査部 研究員 古宮 大夢)