(ブルームバーグ):日本の大手金融機関による永久劣後債(AT1債)の発行額が過去最高ペースにある。各社が資本規制強化への対応で過去に発行したAT1債の借り換えを進めており、今年の社債市場全体の発行規模を押し上げる見通しだ。

三井住友フィナンシャルグループは29日、総額3000億円のAT1債2本の発行条件を決めた。AT1債は一般的に発行体の自己資本比率が一定水準を下回るなどした場合に株式に転換されたり、元本が削減されたりする。銀行債の中でもリスクは高いが、国内金利の上昇で利回りの高い商品の魅力が増す中、投資家の需要は堅調だ。
ブルームバーグの集計データによると、今年のAT1債発行額は28日時点で7100億円と前年同期の4倍を超え、この期間として過去最高を更新した。市場では、AT1債の発行ラッシュが押し上げる形で、日本企業の社債発行総額は過去最高だった昨年を上回る可能性を指摘する声も出ている。

三井住友FGの起債は、2016年前後に発行されたAT1債が最初の償還可能日(初回コール日)を迎えることに伴う大規模な借り換えの動きの一環だ。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)とみずほフィナンシャルグループも今年、既発債の初回コール日を前にAT1債を発行している。
AT1債を含む劣後債は発行体が初回コールでの償還を見送ると、その後の利払い負担が増す設計になっていることが多い。中東情勢を受けたインフレ圧力や日本銀行の追加利上げ観測で国債利回りが上昇する中、発行体にとって借り換えを行うインセンティブは強まっている。
みずほ証券の小出昌弘キャピタルマーケット本部副本部長は、日本の銀行が「中長期的な企業の資金ニーズに対応してしていくために資本を積んでいる」こともAT1債を含む社債発行が増えている背景の一つだと指摘する。
一方、ブルームバーグの集計データで、海外における今年のAT1債の発行額は29日時点で911億ドル(約14兆5000億円)と、前年の同期間と比べて10%弱少ない。
AT1債を巡っては、23年に同業に救済合併されたクレディ・スイス・グループの債券が全額無価値になった。ただ、日本の金融機関が発行するAT1債は一般的に公的支援があっても直ちに元本削減にはつながらず、投資家の安心材料になっている。
最終需要
三井住友FG債は、単独主幹事を務めたSMBC日興証券によると、生命保険会社や信託銀行を含む投資家から合計で3900億円程度の最終需要があった。世界的なインフレ懸念や日本政府の財政懸念を背景に債券市場ではボラティリティーの高い状況が続いたが、信用力の高さなどが追い風になったという。
起債したのは償還期限の定めがなく発行からそれぞれ5年6カ月後と10年6カ月後にコールが可能になる2本。スプレッド(上乗せ金利)は103ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と108bpで、4月にMUFGが発行したAT1債を下回った。
(第7段落以降を追加しました)
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