米国の同盟国は前に進み始めている。ワシントンを確固たる中心とする従来の安全保障モデルは、大方の予想より速いペースで新たなアジアの勢力構造へ移行しつつある。この地域の自衛力を測る最初の試金石として台湾が浮上している。

日本とフィリピンは台湾の重要性を巡りすでに連携しており、高市早苗首相とマルコス大統領は28日、東京で会談し、安全保障協力の強化で一致。機微な情報共有を可能にする「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」の締結に向けた正式交渉を開始することで合意した。

もちろん、米国は依然として、インド太平洋地域で圧倒的な軍事的影響力を持つ大国だ。しかし、第2次トランプ政権発足から1年4カ月が経過し、アジアは米国の支援が保証されない時代に備え、現実を直視しながら積極的に準備を進めている。

これは台湾海峡や南シナ海における中国の行動に対する備えとなるほか、トランプ米大統領のインド太平洋地域での役割を巡る混乱への対応にもつながる。

台湾の経済的・戦略的重要性を踏まえれば、その命運はインド太平洋の安全保障と直結している。筆者が以前指摘したように、トランプ大統領が最近の習近平国家主席との首脳会談で、台湾向け米国製兵器の売却を交渉材料として利用したのは賢明ではなかった。

米国が数日後、イランでの米軍作戦向けに十分な弾薬を確保するため、140億ドル(約2兆2300億円)規模の武器取引を停止したと発表したことで、この地域が抱いていた最悪の懸念が現実味を帯びた。

米外交問題評議会(CFR)の中国戦略イニシアチブ責任者ラッシュ・ドーシ氏は、取引停止の公式な理由はイラン戦争だが、多くの人は米政府の対中スタンスが融和一辺倒であることを示すさらなる証拠と受け止めるだろうとX(旧ツイッター)に投稿した。

台湾向け武器売却の停止は、アジア各地で懸念をもって受け止められたはずだ。台湾が十分な自衛能力を維持できるよう支援するという「台湾関係法」に基づく約束を米国が守れないのであれば、他の米国パートナーにどれほど期待が持てるというのか。

韓国で独自の核兵器計画を巡る議論が起きているのも不思議ではない。日本での議論は、広島と長崎への米国による原爆投下という悲惨な経験があるため、より慎重だ。

それでも、米同盟国が米国の保証を信頼できないと結論付ければ、アジアでの核不拡散を防いできた数十年にわたる米国の主導力は弱まる可能性がある。

 実務的な準備必要

そうした懸念に追い打ちをかけるように、日本が中国に対する反撃能力強化のため発注したトマホーク巡航ミサイル400発について、納入が最大2年遅れる可能性があると米国防総省が日本側に伝えたと報じられている。

トランプ大統領はいくらでも高市首相を称賛できるが、その言葉は抑止力としてほとんど役に立たない。

だからこそ、日本とフィリピンの関係強化は重要だ。地図を見れば、なぜ台湾有事が米国の条約同盟国に影響を及ぼし得るのかは明らかだ。

日本の南西諸島とフィリピン北部諸島の間に位置する台湾は、中国と太平洋を隔てる「第一列島線」の中心にある。米政府とその同盟国や友好国は長年、これを中国海軍の進出を抑え込む上で極めて重要だと見なしてきた。

中国人民解放軍が台湾に対して行動を起こせば、対中抑止を続ける日本の能力は根本から弱体化する。高市首相は昨年11月、台湾有事が日本にとって「存立危機事態」に相当し得るとの国会答弁を行った。この発言に対し、中国は自国民に日本渡航の自粛を呼びかけ、狙いを定めた経済報復を含む激しい反発を示した。

フィリピンも同様に脆弱(ぜいじゃく)だ。マルコス大統領は先週、台湾との近接性や、約20万人のフィリピン人が台湾で生活・就労していることを理由に、台湾を巡る紛争が起きればフィリピンも巻き込まれ得ると強調した。

こうした共通のリスクが具体的な成果を生んでいる。2024年に締結された協定により、自衛隊とフィリピン軍は共同演習や災害救援活動、その他の安全保障活動の際に相互の領土内で活動できるようになった。日本は先月後半に始まった米国・フィリピン合同軍事演習にも参加し、自衛隊員約1400人を派遣した。昨年の約10倍の規模だ。

こうした演習や各国間の連携強化は、中国に強力なメッセージを送っている。日本・フィリピン間の情報共有強化は歓迎すべきことであり、可能な限り台湾にも拡大すべきだ。

同時に、難民対応や貿易ルートの混乱、軍事作戦への対処など、台湾有事を想定した実務的な準備も不可欠だ。ただし、中国を刺激することへの懸念から、各国政府がこうしたシナリオを公然と議論することに慎重なのも理解できる。

それでも、この連携はもろさをはらんでいる。フィリピンの軍事力は日本に遠く及ばず、中国が真剣に受け止める水準の抑止力を築くのは難しい。また、フィリピンは過去にも中国寄りに傾いたことがあり、特にドゥテルテ前政権時代がそうだった。

フィリピンは2028年の大統領選次第で、再び政治的計算が中国寄りに変わる可能性もある。燃料価格の上昇を受け、マルコス大統領は南シナ海での石油・ガス共同探査を巡り、中国との協議を検討するに至っている。

中国はほぼ確実に、こうした弱みを突こうとするだろう。アジアの米同盟国が学びつつある教訓は、自らを守る手段を、一刻も早く見いださなければならないということだ。

(カリシュマ・ヴァスワニ氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、中国を中心にアジア政治を担当しています。以前は英BBC放送のアジア担当リードプレゼンテーターを務め、BBCで20年ほどアジアを取材していました。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの見解を反映するものではありません)

原題:The US Has Let Asia Down on Weapons Sales: Karishma Vaswani(抜粋)

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