(ブルームバーグ):中国の原油輸入は、新型コロナ禍以来の低水準に落ち込む見通しだ。イラン戦争を契機に、中国の原油需要がどれほど失われ、今後も戻らない可能性があるかが浮き彫りになっている。
ロンドンに拠点を置くコンサルティング会社エナジー・アスペクツによると、中国の原油輸入は今年、平均で日量1090万バレルに減少する可能性がある。これは、コロナ禍のロックダウンで中国経済が打撃を受けた2022年以来の低水準となる。25年の輸入は平均で日量1160万バレルだったが、原油備蓄の積み増しによるエネルギー安全保障強化という政府方針で押し上げられていた。
イランによるホルムズ海峡の通航制限で、中国の4月の輸入量は急減し、22年7月以来の低水準となった。ただ、他の主要な原油輸入国と比べ、中国はこのショックを極めてうまく乗り切っている。石油製品需要が弱いため製油所の処理量を落とす余地があり、輸出も絞ったため、代替原油の調達に奔走せずに済んでいる。
中国の需要低迷は、世界市場にとって大きな構造変化を意味する。過去2年間、中国の積極的な備蓄積み増しは世界の余剰原油の大半を吸収し、価格を支えてきた。しかし、米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始して以降、北海ブレント原油が1バレル=100ドルをおおむね上回る中、中国にはもはや買い意欲がない。同国の交通部門では電動化が急速に進み、巨大な石油精製・石油化学産業は需要に対して過剰な能力を抱えている。
コロンビア大学グローバル・エネルギー政策センターのシニアリサーチスカラー、エリカ・ダウンズ氏は「昨年の中国の原油輸入増加分は、ほぼ全てが備蓄積み増しによるものだった」と指摘。「ガソリン需要が横ばい、あるいはピークに達しつつあることと合わせれば、世界の石油需要拡大で中国が最大のけん引役だった時代は終わりつつあることが示唆される」と述べた。
トレーダーによると、ホルムズ海峡を迂回(うかい)できる原油を含め、サウジアラビア産原油に対する中国の需要は急減している。紛争が4カ月目に差しかかろうとする中でも、中国の買い手は代替調達に異例なほどに落ち着いている。分析会社ケプラーのモデリング・精製分析担当、スミット・リトリア氏は今週、中国の海上輸送による原油輸入が日量650万-660万バレルに落ち込み、16年以来の低水準になったと述べた。
中国はエネルギーショックへの対応として、備蓄の取り崩しを始めたが、それよりも大きな変化が見られるのは需要面だ。国有製油会社は先週、処理量を過去最低水準に削減した。ガソリンと軽油の販売はいずれも、4月に前月比で15%超減少した。
エナジー・アスペクツのアナリスト、ジアンアン・スン氏は、製油所が処理量を日量200万バレル近く削減しても、国内の石油製品市場を大きく逼迫(ひっぱく)させずに済むと指摘した。
オックスフォード・エネルギー研究所で中国エネルギー調査を統括するミハル・メイダン氏は、中国の備蓄積み増しが実需を覆い隠してきたと述べる。同氏は、中国の実際の原油需要を日量1040万バレルと推計している。
メイダン氏によると、中国の精製会社は、処理量を1割削減したまま数カ月維持できる。国内生産を現在の水準で維持し、パイプライン経由の原油輸入を最大限活用すれば、海上輸送による原油購入は日量720万バレルまで落ち込んでも、石油製品の供給に大きな支障は出ないという。
石油トレーダーの関心事は、イラン戦争が一時的な混乱に過ぎず、いずれ通常の調達に戻るのかどうかだ。市場では、ペルシャ湾の物流が正常化すれば、価格下落によって「最後の買い手」である中国が市場に戻るとの期待がある。だが、コロンビア大学のダウンズ氏は懐疑的だ。
同氏は「新エネルギー車の普及が進み、石油需要の伸びが一段と抑制され、輸入が減少する中、大規模備蓄を維持するインセンティブは低下していくとみている」と述べた。
原題:China’s Declining Appetite for Oil Laid Bare by Iran War(抜粋)
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