人工知能(AI)ブームにより、コンピューティング能力への需要はとどまるところを知らない勢いで拡大している。アマゾン・ドット・コムやメタ・プラットフォームズ、マイクロソフトなどは、米エヌビディア製の先端半導体やデータセンターに数千億ドルを投じている。

一方、中国はAI競争で後れを取るリスクに直面している。米国の貿易規制により、重要な半導体製造技術へのアクセスが阻まれているためだ。

こうした中、中国のテクノロジー大手、華為技術(ファーウェイ)は5月25日、半導体部門トップの何庭波氏が新たな半導体設計構想を示し、業界関係者や投資家を引きつけた。業界が数十年にわたり軸足を置いてきた、トランジスタの微細化によって性能向上を実現するという手法からの転換となる。

半導体効率改善に向けた新しい構想、「タウ・スケーリングの法則」と呼ばれる手法を同社が25日に発表したのを受け、翌26日に中国半導体セクター株は軒並み急騰した。投資家は、米国の貿易規制による制約がある中でも同社が革新を進められると見込み、製造提携先である中国の半導体受託生産大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)の株価も6%近く押し上げた。

ファーウェイの新構想とは

数十年前、米半導体大手インテルの共同創業者ゴードン・ムーア氏は、半導体製造技術が進歩するにつれて集積回路上のトランジスタ数は2年でおおむね2倍になると予測した。「ムーアの法則」として広まったこの見方は、数十年にわたり実際に成り立ってきた。より小さなトランジスタを高密度に集積した回路が、消費電力を抑えながら性能を高めてきた。

今回ファーウェイが提唱した「タウ・スケーリングの法則」は、この従来モデルからの脱却を目指す構想だ。トランジスタを際限なく微細化するのではなく、プロセッサー内部で信号が流れる距離を短くして性能を高める。

同社はこの技術を「ロジックフォールディング」と呼ぶ。通常は単一の平面状に配置していた回路の構成を、複数の階層に切り分けて積み重ねることで、情報がより速く移動できるようにする。概念自体は目新しくはない。ファウンドリー最大手の台湾積体電路製造(TSMC)などは既に先進的な積層技術を採用している。ただ、ファーウェイの構想はさらに踏み込んだもので、半導体アーキテクチャーそのものの再設計を掲げている。

この手法には、製造の複雑さ、放熱、電力供給など重大な技術課題が伴う可能性がある。しかも、商業ベースでの量産が可能かはまだ不透明だ。それでもファーウェイはロジックフォールディングに関する野心的なロードマップを示し、こうした半導体を年内にもスマートフォン向けに初めて投入する計画だ。

世界的なテクノロジー調査・助言会社オムディアのアナリスト、何輝氏(上海在勤)は、ファーウェイは利用できる半導体製造技術が既に物理的限界に近づいている以上、今回の新たな手法に挑戦しても失うものはほとんどないと指摘する。

実現した場合のインパクト

ファーウェイは現在、利用可能な製造技術だけでは性能向上の余地が限られる局面にある。背景には米国主導の輸出規制がある。微細なトランジスタの量産に欠かせない極端紫外線(EUV)露光装置を入手できず、同社は事実上、7ナノメートル(ナノは10億分の1)の回路線幅での半導体生産に制約されている。

今回の新たな構想が成功すれば、ファーウェイはアクセス不可能な技術に頼ることなく、設計とパッケージングの革新によって半導体性能を高め、こうした貿易規制を迂回(うかい)できる可能性がある。

これはTSMCなど競合との技術格差の縮小につながり得る。現在、ファーウェイと製造提携先のSMICは、TSMCに数世代遅れているのが実情だ。しかし、ファーウェイはロジックフォールディング技術によって、2031年までに回路線幅が1.4ナノメートルの半導体に匹敵する性能を持つ製品の生産を目指すとしている。これは28年までに同様の進歩を目標とするTSMCには数年遅れるものの、両社の格差は今よりも大幅に縮小することになる。

ロジックフォールディング技術の課題は

半導体の回路を多層化することによって製造が大幅に複雑になり、欠陥が発生するリスクが高まる。それに伴い、商用に耐える半導体の歩留まりが低下する恐れがある。

また、積層手法は、熱管理の面でも大きな課題を生みかねない。高密度に重ねた半導体は熱を内部に閉じ込めやすく、より高度な冷却システムが必要になる可能性があるためだ。平面チップの大きな利点の一つは、放熱に使える表面積を最大化できることだ。

なぜ米国は中国による半導体製造技術へのアクセスを制限しているのか

米国と中国はいずれも、AIの進歩を経済面だけでなく軍事面でも戦略的に重要とみている。米国政府はこの分野で、中国に対する優位を維持したい考えだ。

米国では民主・共和両党の歴代政権が、中国に対する輸出規制を着実に拡大してきた。対象は先端AI半導体だけでなく、そうした半導体の製造装置や関連技術にまで及んでいる。米当局者は、中国が最先端半導体を入手しにくくなれば、同国による高度な軍事・監視・防衛能力の開発を遅らせることができると主張している。

一方、一部の米政策担当者や業界幹部は、こうした制限が最終的に逆効果となる可能性を指摘する。エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)もその一人で、米国の規制が引き金となり、中国の競合企業が独自の技術開発を加速させかねないとの見方を示している。

原題:Why Huawei’s Chipmaking Plan Has Investors Buzzing: Explainer(抜粋)

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