FOMC議事要旨はタカ派的な内容、市場はタカ派を受け入れる公算
この日、FRBは4月28-29日に行われたFOMCの議事要旨を公表した。
この会合では、3名の地区連銀総裁が声明文にある将来の金融緩和を示唆する文言を維持することに反対したことが注目されていた。議事要旨は、総じてタカ派的な内容だった。
議事要旨では、これまでのデータ次第では利下げをするという意見について、「複数の参加者(several participants)は、デフレ圧力が確実に軌道に乗ったという明確な兆候が見られた場合、あるいは労働市場のさらなる弱含みを示す確かな兆候が現れた場合には、FF金利の目標レンジを引き下げることが適切である可能性が高いと指摘した」(筆者訳。以下同)とされた。3月FOMCの議事要旨では、「多くの参加者(many participants)は、インフレ率が予想通りに低下すれば、やがてFF金利の目標レンジを引き下げることが適切になる可能性が高いと判断した」とされていたことから、緩和的なスタンスのメンバーが「many→several」に減少したことが分かる。
引き締めバイアスについては、「参加者の過半数(a majority of participants)は、インフレ率が2%を上回る状態が持続する場合、政策の引き締めが適切となる可能性が高いと指摘した」とされ、「過半数」が引き締め方向の議論を始めたことが分かった。さらに、「この可能性に対処するため、多くの参加者(many participants)は、委員会の今後の利上げ決定の方向性について緩和バイアスを示唆する文言を、会合後の声明から削除することを望んでいたと述べた」とされた。声明文に反対したのは3名だったが、削除を望んでいたのは「多くの参加者」(3名より多い可能性が高い)だったことが明らかとなり、タカ派的な見方が広がっていることが示された。
また、足元ではメンバーの考えはさらにタカ派的になっている可能性がある。というのも、今回の議事要旨では、「ほとんどの参加者(most participants)は、長期的なインフレ期待の指標が安定しているとの見解を示した。一部の参加者は、短期的なインフレ期待の指標が最近上昇していることに言及し、これはおそらく世界的なエネルギー価格の上昇を反映したものであると指摘した」とされていた。依然として家計の長期インフレ予想は安定しているものの、市場ベースのインフレ予想(BEI)は5月に入ってからレンジを切り上げた印象である。当面は、FRB高官からタカ派的な発言が増えるだろう。もっとも、市場ではインフレの長期化を防ぐため、早期にFRBがタカ派的なスタンスを示した方が、インフレ懸念が和らぎ、長期金利が低下するという見方もある。FRBのタカ派的なスタンスが求められている面があると言える。この日も、タカ派的な議事要旨に対する市場の反応は限定的だったように、ある程度のタカ派化は織り込まれている模様である。
なお、ウォーシュ氏の議長就任で注目されるバランスシート政策については、「一部の参加者(a few participants)は、連邦準備制度のバランスシートや政策手段に関する問題について言及し、その中には、金融政策の実施におけるSRPオペレーションの役割や、流動性供給手段、流動性規制、および準備金需要との関連性などが含まれていた」とされていた。これでは何が議論されたのか、ほとんど分からない。ウォーシュ氏の議長就任を前に議論はしたものの、詳細を議事要旨に示すことで議論を呼んでしまうことを避けたのだろう。
(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)