(ブルームバーグ):米国とイランは20日、数週間にわたり膠着(こうちゃく)状態が続く中東情勢を巡り、対立激化を示唆する応酬を繰り広げた。
トランプ米大統領は記者団に対し、米国はイランとの間で「最終段階」にあると述べた。この発言を受けて市場では合意が近いとの期待が広がり、米国債は上昇し、原油価格は急落した。
一方でトランプ氏は、イランが米国側の条件に同意しなければ数日以内に攻撃を再開するとの従来の警告も改めて表明した。同氏は停戦開始以降、双方が合意に近づいていると繰り返し述べてきたが、現時点で合意には至っていない。
トランプ氏は、合意が成立するか、そうでなければ「やや手荒なことをすることになるだろう。だが、そうならないことを願っている」と語った。
米国はイランに対し、ウラン濃縮計画の放棄とホルムズ海峡の通航再開を要求しているが、イラン側はこれを拒否している。イランはまず米国が港湾封鎖を解除するよう求めている。
イランのペゼシュキアン大統領は、イランが譲歩寸前にあるとの見方を否定した。Xへの投稿で「強制によってイランを降伏させられると考えるのは幻想にすぎない」と述べた。
トランプ氏はその後も、紛争開始後にたびたび示し、その都度延長してきた期限を改めて強調した。沿岸警備隊士官学校での演説後、「私を信じてほしい。正しい答えが得られなければ、事態は極めて速く進む」とし、「われわれは全て準備が整っている。必要なのは正しい答えだ」と語った。
これに先立ち、イランは米国またはイスラエルが攻撃を再開すれば、中東域外にも報復を拡大すると警告した。ただ、イラン側にその能力があるかは不透明だ。
イランの準国営タスニム通信によると、イランの革命防衛隊(IRGC)は「イランへの侵略が繰り返されれば、これまで予告されていた地域戦争は今度こそ地域を超えて拡大する」と表明した。その上で「予想もしない場所で壊滅的打撃を与える」と警告した。
IRGCは2月下旬の戦争開始以降、イランの意思決定への影響力を一段と強めている。
イランは、米国とイスラエルが戦争を開始した際、複数国に対してドローン(無人機)やミサイル攻撃を実施した。標的にはイスラエルや湾岸アラブ諸国に加え、トルコやキプロスも含まれていた。4月8日の停戦合意まで空爆で大きな打撃を受けたものの、イラン軍はなお地域諸国への攻撃能力を維持している。
トランプ氏は以前、中東地域の同盟国による要請を受けて攻撃再開を見送ったと述べていた。
原油輸送、早期の回復は見通せず
この日はトランプ氏の発言を受け、原油相場は5%以上急落し、北海ブレント原油は1バレル=105ドル近辺で取引された。投資家の間では、ホルムズ海峡を通るエネルギー輸送が再開されるとの期待が高まった。
ただ、業界の主な関係者は、たとえイラン戦争が即座に終結しても、中東からの原油輸送が完全に回復するのは2027年以降になると警告した。
「約3カ月に及ぶ戦争を経て、トランプ氏の目標は達成から程遠いように見え、イランは打撃を受けながらも、新たな世界的影響力を得て勢いを増している」と、ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のディナ・エスファンディアリー氏、ベッカ・ワッサー氏、ジアド・ダウド氏の各アナリストは指摘。「双方の隔たりは依然大きく、さらなるエスカレーションのリスクは残る一方、さらなる戦闘によって戦略的突破口が開かれる可能性は低い」と述べた。
ニュースサイトのアクシオスは、トランプ氏が19日にイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談を行い、緊迫したやりとりがあったと報じた。トランプ氏はイラン側との交渉に向けて、紛争を正式に終結させる米国の計画を説明したという。
イスラエルはイランへの追加攻撃を望む意向を示してきたが、トランプ氏は20日、記者団に対し、ネタニヤフ首相について「私が望むことなら何でもする」と述べた。
またトランプ氏は、和平交渉の一環として米国がイラン産原油への制裁緩和を提案しているとのタスニム通信の報道を否定した。トランプ氏は「合意に署名するまではいかなる制裁緩和もしない」として、「合意に署名すれば、あの国を再建し、人々にとって本当に良い国にできる。だが、何も提案していない」と述べた。
イランはこれまで、トランプ氏が求める高濃縮ウランの放棄や、今後一切の濃縮処理を行わないとの合意を拒否している。
原題:Trump Renews Pressure as Iran Vows Retaliation Beyond Mideast、CORRECT: Trump Says US in ‘Final Stages’ With Iran: Pool Report(抜粋)
(情報を追加して更新します。更新前の記事では原文訂正に合わせ、協議が最終段階にあるという箇所で「協議が」の言葉を削除済みです)
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