イーロン・マスク氏の人工知能(AI)企業、xAIは今年、チャットボット「Grok」向け学習データとして、個人の税務申告書を提供するよう従業員に求めた。その見返りとして、420ドル(約6万7000円)を支払うと約束していた。しかし2カ月たっても、その支払いは実現していない。

大規模な組織刷新が進行中のxAIは、4月15日の米税務申告期限を前にGrokの税務処理機能を改善できる追加データを収集しようと、従業員にこの提案を行った。ブルームバーグ・ニュースが確認した社内チャットで明らかになった。米国ではすでにアンソロピックの「Claude」やOpenAIの「ChatGPT」といった競合チャットボットを会計業務に利用する動きが広がっており、xAIはこの市場への参入を急いでいた。

社内チャットによると、xAIの経営陣らは3月、作成済みの税務申告書と引き換えに現金支給を提案した。チャットのメッセージによると、参加希望者は2025年分または前年分の税務申告書に加え、関連書類や資料を提出する必要があった。その見返りとして、マスク氏がソーシャルメディア「X」に組み入れようとしている決済プラットフォーム「X Money」への早期アクセスと、420ドルの支払いが約束された。420という数字は、マスク氏がたびたび用いるマリフアナを意味する隠語だ。

その後、AIを使わず税理士に依頼して税務申告を行った従業員の家族や友人にも、募集対象を広げ、彼らにも支払いを約束した。xAIはまた、Grokに税務データを学習させるため、会計士やデータ専門家の採用も検討していた。マスク氏はオンライン上で、チャットボットを使えば高額な還付金を受けられるとユーザーに促していた。

社内チャットによると、個人の財務データを引き渡してから2カ月が過ぎても、約束された金額は支払われなかった。この問題について問い合わせた一部の従業員は、プログラム責任者がすでに退職したとの説明を受けたと、事情に詳しい関係者が明らかにした。xAIの広報担当者はコメント要請に応じなかった。

今年に入りレイオフや経営陣交代が繰り返されたxAIでは、約束された支払い不履行は社内の士気をさらに低下させている。xAIの親会社となった宇宙開発企業スペースXが今年株式を上場する前に、xAIの事業やプロダクツを改善しようとマスク氏は奔走している。同社はまた、アンソロピックなどの競合各社に追いつこうと力を入れている。アンソロピックは金融モデリングなど特定用途向けのチャットボットを開発している。

原題:XAI Fails to Pay Staff $420 for Giving Their Tax Returns to Grok(抜粋)

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