トランプ米大統領は13日、北京に到着する。米大統領の訪中は約10年ぶり。イラン戦争の影響で延期されていた習近平中国国家主席との首脳会談は、世界二大経済大国の指導者が個人的関係の再構築を図るとともに、貿易や技術など幅広い対立分野で共通の基盤を探る機会となる。

2日間にわたる協議を前に、主な議題を整理する。

イラン戦争

米国とイスラエルによるイランとの衝突は、米中間の新たな緊張要因となっている。

トランプ氏は世界的なエネルギー危機を招いた紛争の終結を求める圧力に直面しており、中国とイランの関係を巡り習氏に働きかける見通しだ。

中国はイラン産原油の最大の購入国であり、国際舞台で一定の外交的支援を提供している。米国はこれまで、イラン産原油購入や同国政府への衛星画像提供に関与したとして複数の中国企業に制裁を科してきた。トランプ氏は4月21日、中国からの「贈り物」を積んだ船を拿捕(だほ)したと述べ、中国が武器や殺傷力のある軍需物資をイランに提供した可能性に言及した。中国外務省報道官は、外国船籍のこのコンテナ船と中国を結び付ける「誤った関連付け」を否定した。

トランプ氏はイラン戦争が米中関係に与える悪影響を重大視せず、習氏とは「素晴らしい関係」にあると語っている。それでも米政府当局者は、中国がイランに提供する資金や武器輸出の可能性について首脳会談で議論されると話している。

中国政府は、イラン産原油購入を標的とした米国による制裁に対抗するよう国内企業に指示。2021年に導入した対抗措置を適用している。外務省は、中国企業に影響を及ぼす違法で一方的な制裁に繰り返し反対を表明し、米国に対し、「中国を中傷する」よりもイランとの今の停戦を崩壊させないよう求めている。

関税

トランプ氏のホワイトハウス復帰後に始まった貿易戦争では、2025年10月の休戦合意後も、米中双方が課した輸入関税が維持されている。

習氏、トランプ氏ともに、関税引き下げや中国のレアアース(希土類)などの輸出規制案の停止を含む現行の緊張緩和措置の延長を模索するとみられる。

関税は依然として両国関係の摩擦要因だ。中国政府はかねてより米国の関税措置に不満を示してきたが、トランプ政権は中国の通商慣行に関する調査を進めており、2月に連邦最高裁が従来の関税措置を無効と判断した後も、新たな関税導入の余地を残している。

一方、中国による合成麻薬フェンタニル取引の抑制では両国の足並みがそろう点が一つ浮上した。トランプ政権は昨年、米国で依存症や過剰摂取の危機を引き起こしているフェンタニルの生産を中国政府が取り締まるよう圧力をかけるため、中国製品に10%の関税を導入。その後引き上げや引き下げを経て最高裁判断で無効となったが、トランプ政権は新たな関税措置の検討を続けている。

中国はトランプ氏の訪中2日前、米国との共同作戦により、国境を越えた麻薬密売組織を摘発したと発表し、この問題での進展を示した。

貿易と購入約束

日本や韓国はトランプ政権の貿易に関する要求に応じる手段として、対米投資や米製品の購入拡大について大規模な約束をしており、同政権は中国にも同様の対応を求めている。

今回の首脳会談では、中国によるビジネス契約や購入約束が打ち出される公算が大きく、ボーイングの航空機の大規模発注が含まれる可能性がある。ホワイトハウスのケリー報道官は首脳会談に先立ち記者団に、農業、航空宇宙、エネルギー分野での合意も議題になると説明した。

米戦略国際問題研究所(CSIS)のスコット・ケネディ上級顧問は、米国は「5つのB」、すなわちボーイング(Boeing)、豆類(beans)、牛肉(beef)、貿易委員会(the Board of Trade)、投資委員会(the Board of Investment)に焦点を当てていると指摘した。

米国側は3月のパリでの協議後、貿易委員会と投資委員会の設置を提案した。これは米国が拡大を目指す大豆や牛肉など農産物の輸出を含め、米中貿易の流れを正式なものにするための手段。貿易戦争の影響で、中国は世界最大の大豆輸入国でありながら一時的に米国産の購入を停止したが、10月の休戦後に輸入は回復した。

一方、投資分野の交渉は遅れており、米政府当局者は首脳会談前時点で中国による大規模な対米投資計画はないと述べている。

AI

人工知能(AI)を巡り、米中は主導権争いを繰り広げており、技術アクセスを制限する措置を互いに講じている。

米政府当局者はAIに関する懸念を提起し、この分野を定期的に協議する新たな対話枠組みの創設を模索する方針だ。

米国は、中国の開発者が米国の先端AIプラットフォームの成果を利用し、低コストで競合システムを開発していることを問題視している。4月には、OpenAI、アンソロピック、アルファベット傘下グーグルなどの訴えを受け、ホワイトハウスが「敵対的蒸留」と呼ばれる手法を防ぐ措置を打ち出した。

市場アクセスや企業買収を巡る対立もある。中国がメタ・プラットフォームズに対し中国発のAI新興企業マナスの20億ドル(約3150億円)での買収撤回を求めたことは、国内技術への外国の関与を制限する姿勢を示している。

また、中国はエヌビディアなどの最先端半導体へのアクセスを制限する米国の輸出規制に不満を示してきた。こうした規制が協議でどこまで議題となるかは不透明だ。トランプ氏は12月、中国向けに性能を抑えたAIチップ「H200」の輸出を認め、米政府はその売り上げの25%を受け取る見込みだ。

台湾

台湾問題は米中関係で最も敏感かつ不安定な争点の一つだ。中国は台湾を自国領と主張する一方、米国は軍事面で支援しつつ非公式ながら強い関係を維持している。

中国はこれまで、台湾独立に「反対する」との公式表明を米側に求めてきたが、実現すれば中国にとって大きな外交成果となる。米政府当局者は、首脳会談で対台湾政策に変更はないと説明している。

台湾外交部の呉志中政務次長は4月下旬、トランプ氏と習氏の協議で台湾が「議題に上る」可能性に懸念を示した。米国の現行政策では、中国政府を唯一の政府として承認する一方、台湾の法的地位については明確にしていない。

首脳会談を前にトランプ氏は、140億ドル規模の台湾向け武器売却計画について習氏と協議するかと問われた際、「習主席は望んでいないだろうが」、「その議論はする」と語った。

重要鉱物

レアアースなどの重要鉱物は、防衛やクリーンエネルギー産業に不可欠であり、米中経済競争の新たな主戦場となっている。米政府は、中国が輸出規制で制限してきたこれら資源へのアクセス改善を目指している。

両首脳の10月の合意以降、これらの品目の取引は回復しているものの、流通量は規制導入前の水準を下回ったままだ。ブルームバーグ・エコノミクスによると、米国が供給源の多様化を進めても、中国のレアアース採掘・加工での優位性を崩すにはなお数年を要する見通しだ。

一方、中国政府はグローバルなサプライチェーン(供給網)を中国サプライヤーから切り離し、中国による重要資源・技術へのアクセスを制限する外国の取り組みに対抗する新規則を導入した。中国がレアアース供給を全面的に自由化する可能性は低いとみられるが、一般ライセンスによる許可手続きの簡素化を進めている。ただ、これらの措置の影響は依然として不透明で、世界の買い手からは承認がなお遅々として進んでいないとの懸念が出ている。

原題:What to Expect From the Trump-Xi Summit in Beijing: Explainer(抜粋)

--取材協力:Joe Deaux、Jeff Mason、Michael Shepard、Michelle Jamrisko.

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