(ブルームバーグ):米国際貿易裁判所は7日、トランプ米大統領が先に導入した10%の一律関税について、違法だとする判断を下した。中小企業の団体と主に民主党主導の約24州が求めていた関税の取り消しを認めた。政権の経済運営にとって新たな打撃となる。
米連邦最高裁が2月、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠としたトランプ氏の関税措置を無効とする判断を下したのを受け、同氏はこれまで発動されたことのなかった1974年通商法122条に基づき、日本を含む広範な国・地域を対象に10%の輸入関税を新たに課していた。
国際貿易裁判所は今回、提訴した2社とワシントン州に対してのみ、政権による関税執行を直ちに差し止めた。いわゆる「universal injunction(全米差し止め)」ではないことを明確にするとともに、その他の州については原告適格を欠くと判断した。州は直接の輸入業者ではなく、企業が関税コストを転嫁した結果として物価上昇の影響を受けたと主張したものだとした。
争点となっている関税を支払ってきた他の輸入業者にとって、この判断が当面どのような意味を持つかは明らかではない。中小企業の連合「ウィー・ペイ・ザ・タリフス」が分析した政府データによると、米税関当局は3月だけで122条に基づく関税として約80億ドル(約1兆2550億円)を徴収した。
同裁判所は、122条に基づく関税発動の主要要件である「国際収支赤字」について、「柔軟に解釈できる文言」だとする政権側の主張を退けた。その上で、関税を課した大統領布告は、1974年通商法の定義において、こうした赤字が存在することを特定しておらず、代わりに「貿易収支や経常収支の赤字」を根拠として用いていたと結論付けた。
トランプ氏は7日夜、判事2人が多数意見、残りの1人が反対意見を示した点を踏まえ、「急進的左派の判事2人」が政権の関税措置に違法の判断を下したと、記者団に発言。「裁判所については何も驚かない。われわれは常に別のやり方で進める。一つの判断が示されれば、別のやり方で対応する」と語った。
トランプ政権は次の関税計画の策定に着手しているが、これらの関税が実施されるまでにはなお数カ月を要する見通しだ。米国は1974年通商法301条に基づき、強制労働慣行や過剰な製造能力を巡って数十の国・地域を調査しており、この手続きは最終的に新たな関税の導入につながると見込まれている。
今回の判断は、議会の関与なしに関税を課すことを目指す大統領の取り組みにとって、新たな打撃となる。連邦最高裁が2月20日、IEEPAに基づく関税を無効とした件では、トランプ氏が権限を逸脱したと判断され、輸入業者が総額約1700億ドルの輸入関税について還付を求める事態となっている。
政権側は上訴の可能性
米司法省は今回の国際貿易裁判所の判断について連邦特別行政高裁に上訴する可能性がある。同高裁は前回の関税を巡る争いでもトランプ政権に不利な判断を下している。同省報道官にコメントを要請したが、これまでのところ返答はない。
判断のタイミングはトランプ氏にとって、来週予定される中国の習近平国家主席との首脳会談を前に、不利に働く可能性がある。関税を一方的に課す権限がさらに制約されれば、トランプ氏の交渉力は一段と低下する恐れがある。
1974年通商法122条は、法律が定義する「根本的な国際収支問題」に米国が直面している場合、大統領が関税を課すことを認めている。トランプ氏が関税を導入する以前から、この規定を用いて堅固な法的根拠を構築できるかどうかを巡り、経済学者や政策専門家の間で議論が交わされていた。
トランプ氏は同条の発動を宣言した大統領布告で、米国が「大幅かつ深刻」な貿易赤字を抱えていることを理由に関税は正当化されるとしていた。
法律の規定では、資金の流出入に関する懸念に対処するため、大統領は短期的に輸入品に関税を課す権限を持つ。こうした懸念には、「大規模かつ深刻な米国の国際収支赤字」や「ドルの大幅かつ差し迫った下落」が含まれる。
関税発動の根拠となる他の法的手段と異なり、122条は連邦機関による調査を待たずに発動できる。ただ、司法の場で争われる可能性は残る。
原告の中小企業や州は、米国が何十年も前に金本位制を放棄したことで122条は時代遅れになったと主張。また、同条の適用を正当化するため、トランプ氏が国際収支赤字と貿易赤字を混同したのは不適切だとし、トランプ氏が挙げた貿易赤字は国際収支を算定する要素の一部に過ぎないと州側は主張している。
訴状によると、トランプ政権はIEEPA関税を巡るこれまでの訴訟で、貿易赤字と国際収支赤字は「概念的に異なる」と認めていた。
122条では、大統領は最大15%の輸入関税を命じることができる。措置は150日間有効で、その後は議会による延長の承認が必要となる。トランプ氏は税率を10%から15%に引き上げる意向を示している。
州側はまた、新たな関税が差別的であってはならないとする122条の要件にも違反していると主張。具体的にはカナダ、メキシコ、コスタリカ、ドミニカ共和国、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアからの輸入品の一部が除外されているのは不適切だと論じている。
原題:Trump’s Latest 10% Tariffs Found Unlawful by US Trade Court (3)(抜粋)
(トランプ大統領の発言などを追加して更新します)
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