(ブルームバーグ):過去24時間の活発な外交活動は、米国とイランが2カ月に及ぶ戦争の終結に向け、新たな働きかけを進めていることを示している。その裏でイラン指導部は、ロシアや中国との関係維持にも注力している。
イランのアラグチ外相は6日、来週予定される米中首脳会談を前に中国に向かった。先月下旬にはロシアを訪問し、プーチン大統領と会談している。
一連の動きは、米国とイランが合意に向けた調整を進める中で、米国の圧力を緩和し得る国々との関係を深めようとするイランの意図を示している。中国の習近平国家主席とプーチン氏はいずれもトランプ米大統領から公然と評価されており、最終的な合意に影響力を持つ可能性がある。
アラグチ氏の歴訪の中で最も重要な訪問先は中国だった。中国はイランの石油輸出のほぼ全てを購入している上、国連安全保障理事会の拒否権も握る。米国はホルムズ海峡を巡り対イラン圧力を強める上で安保理の支持を求めている。ただ、ロシアや中国が軍事的・経済的圧力からイランを守るために十分な行動を取ってこなかったことを考えれば、こうした戦略にはリスクも伴う。
ジョージタウン大学カタール校のメフラン・カムラバ教授は「最近のイランの積極的な外交、特にロシアや中国との関係強化は、外交的支援を固め、米国との対立によって最も近い友好国との関係が損なわれないようにする狙いがある」と指摘した。
一連の会談は、ここ数日の目まぐるしい展開の中で行われた。トランプ氏は5日、ホルムズ海峡を通過できずにいる船舶の航行を支援する米主導の取り組みを一時停止し、イランとの戦争終結に向けた合意が最終的にまとまるかを見極める考えを示した。これは同氏が緊張緩和の出口を模索していることを示す新たな動きだ。
もっとも、仮に合意に至ったとしても脆弱(ぜいじゃく)なものとなる可能性がある。パキスタンの首都イスラマバードでの直接協議は合意に至らず、ホルムズ海峡の再開を目指したトランプ氏の「プロジェクト・フリーダム」の初動では、米国とイランの間で交戦が発生し、1カ月間の停戦は揺らいだ。
また、イランはトランプ氏の姿勢にも反発している。ペゼシュキアン大統領は今週、米国が「最大限の圧力」を維持しながらイランに交渉復帰と要求受け入れを求めるのは「不可能だ」と述べたと、イランの半国営ファルス通信が報じた。
トランプ氏の訪中までに合意に至らなければ、通商や安全保障を巡り緊張する米中関係の中で習氏が影響力を強める可能性がある。中国が合意仲介で重要な役割を果たすことになれば、習氏は来週の首脳会談に「調停者」として臨むことができ、交渉力を高める可能性がある。
中国の王毅外相は会談でイランに対し交渉継続を促した。アラグチ外相は、中国が「歴史の正しい側に立っている」ことや「建設的かつ確固たる立場」を取っていることに謝意を示したと、中国側の発言記録で伝えられた。
こうしたやり取りは、中国の難しい立場を浮き彫りにしている。中国はイランにとって重要な経済・外交の後ろ盾である一方、ホルムズ海峡の混乱は自国のエネルギー利益を損なう。米国も海峡再開に向け中国に影響力行使を求めているが、中国はイラン産原油に関係する中国精製業者への米制裁に反発している。
イランの外交攻勢は、中東地域全体での外交活動の活発化とも重なっている。
アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド大統領とイスラエルのネタニヤフ首相は今週、イランによるUAEへの攻撃再開を受けて異例の電話会談を行った。国営の首長国通信(WAM)によると、ネタニヤフ首相はUAEの安全確保に向けた措置への支持を表明した。同時に、アラグチ外相とサウジアラビアのファイサル外相は、さらなる緊張激化の防止策について協議したと、イラン外務省が明らかにした。
リスク分析会社ベリスク・メープルクロフトのエネルギー・資源部門責任者カホ・ユー氏は「イランと中国の会談により、トランプ氏と習氏の首脳会談を前に湾岸地域のエネルギー安全保障やイラン産原油の流通が重要議題として浮上する可能性が高い」と指摘。「ホルムズ海峡はもはや地域的な火種にとどまらず、米国と中国の広範な交渉における圧力点として重要性を増している」と述べた。
原題:Iran Seeks an Edge as Diplomacy Builds Toward Possible War Deal(抜粋)
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