米投資・保険会社バークシャー・ハサウェイのグレッグ・アベル最高経営責任者(CEO)は、誰もが気にしている問題に間髪入れず踏み込んだ。

ウォーレン・バフェット氏が主導しない初めての年次株主総会の冒頭で、アベル氏は投資家に1年前の総会を想起させた。同会合ではバフェット氏が次期CEOにアベル氏を指名し、会場に衝撃が走った。

株主総会の会場に到着する来場者

バークシャーの多様な事業で常に収益改善の手法を模索する手腕で知られるアベル氏だが、当時頭に浮かんだのは一つの問いだけだったと語った。2026年の年次総会に向けて会場を予約し支払いも行っていたが、自身が唯一の目玉となる状況で、そもそも会場が必要なのかという疑問だったという。

もっとも、結果的に会場は必要だった。来場者数は減少したものの、数千人の投資家がネブラスカ州オマハに集まり、アベル氏の話に耳を傾けた。

長年の年次総会参加者はアベル氏の初の単独での登壇を総じて高く評価している。

ロボッティ・アンド・カンパニー・アドバイザーズのロバート・ロボッティ社長兼最高投資責任者(CIO)は「実績と信念を兼ね備えた人物への極めて円滑な引き継ぎであり、大きな成功を収めるはずだ」と指摘。「バークシャーの基盤の多くは今後も維持されるだろう」と述べた。

かねて「資本家のウッドストック」として知られてきた同イベントは、今回も独特の雰囲気を保っていた。1日には株主が展示会場を歩き回り、バフェット氏のビジネスパートナーだった故チャーリー・マンガー氏のぬいぐるみを買い求めたり、ガイコのマスコットと記念撮影を楽しんだりしていた。

一方で、従来との違いも見られた。アベル氏は幹部らを表舞台に招き、各事業について投資家に直接説明する機会を与えた。

また今回の総会は「レガシー(遺産)は続く」がテーマで、バフェット氏がCEOを引退しても、同社が引き続き成長できると長期投資家を安心させる狙いがあるとみられる。

バフェット、マンガー、アベル各氏を模したゴム製のアヒル

アベル氏はバフェット氏とバークシャーの取締役会から強い支持を受けている。それでも、同氏がCEOに指名されて以降、同社のクラスB株は12.4%下落している。3970億ドル(約62兆円)に上る手元資金をどのように活用するかも課題だ。

年次総会の司会役としてバフェット氏の後を継ぐという難題もある。気さくな知恵と機知に富んだ同氏の言葉は、前向きな雰囲気を醸し出す総会の中心にあった。

伝説の前任者らへの敬意  

アベル氏は総会の冒頭で、伝説的な前任者たちに軽妙な形で敬意を表した。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のテーマ曲に合わせ、長年CEOを務めたバフェット氏の軌跡を振り返るハイライト映像で総会は幕を開けた。

会場内で販売されていたバフェット、アベル両氏を模したぬいぐるみ

バフェット氏とマンガー氏の名前と在任期間(それぞれ60年と45年)が記された「ユニフォーム」2着がメインステージ上方に掲げられた。バフェット氏の愛飲するチェリーコークの缶も、アベル氏の近くに置かれた。

「ウォーレンからグレッグへの移行が見事で、ウォーレンの存在をうまく取り入れていたのが印象的だった」と、デイリークイーンのトロイ・ベイダーCEOは語った。

その後、アベル氏は本題に入り、バークシャーの各事業や株式保有について、簡潔かつ詳細な説明を行った。続いて副会長のアジット・ジェイン氏とともに株主からの質問に答えた。

「事業について非常に詳細な説明があった。さまざまな事業を理解し、リスクと機会の双方を把握していることを示した」と話すのは、総会に出席したミード・キャピタル・マネジメントのアダム・ミードCEO兼CIOだ。「十分に準備を重ねており、ウォーレンが語っていた通りのリーダーだ」と感じたという。

今年CEOに就任するまで資産運用に直接携わった経験がなかったアベル氏だが、自身の投資スタンスの一端を株主に示した。魅力的な経営陣や事業を持つ企業はいくつか特定しているものの、バリュエーションが高すぎるため買収や投資には関心がないと語った。

グレッグ・アベル氏(中央)

バフェット氏とマンガー氏の名コンビによる伝説的な掛け合いこそ見られなかったものの、アベル氏とジェイン氏が観客から拍手や笑いを引き出す場面もあった。

「グレッグとアジットのやりとりは非常に息があっていた」とミード氏。「どこかウォーレンとチャーリーの関係性を思わせる部分もあり、非常に良かったと思う」と述べた。

イラン戦争開始以降、実質封鎖状態にあるホルムズ海峡を通過する船舶への保険提供をバークシャーが検討するか問われると、ジェイン氏は「短く言えば、価格次第だ」と切り返した。これに対しアベル氏は「チャーリーらしい答えだ」と応じた。

バークシャー会長であるバフェット氏は、舞台に登壇しなかったものの、取締役席から株主に向けて短いスピーチを行い、企業経営、特に円滑なトップ交代に焦点を当てた。

具体例としてアップルに言及し、スティーブ・ジョブズ氏の死後、同社を成功裏に率いる人物が誰になるのか当時はほとんど知られておらず、ティム・クック氏についても多くの投資家が認識していなかったと振り返った。約10年前に350億ドルを投じた同社への投資は、その後配当を含めて1850億ドルに拡大したと述べ、クック氏に謝意を示した。

株主総会の参加者ら

最初の株主からの質問は、AIによるディープフェイクで再現された「オマハのウォーレン」ことバフェット氏から寄せられたものだった。アベル氏は発言の中でより広い観点からこの技術に触れ、バークシャーがデータセンターに電力を供給する公益事業を保有していることから、その成長の恩恵を受ける可能性があると指摘した。

株主であるハドソン・バリュー・パートナーズのクリストファー・デービス氏は、バークシャーのAIへの取り組み方についてアベル氏が説明した点を評価した。

「バークシャーの事業会社が単なる技術の購入者ではなく、技術の担い手としての発想を採用し、社内にプログラマーやエンジニアを擁していると聞けたことで、グレッグ・アベルがバークシャーの事業運営を現代のAI時代へと導いていることが確認できた」と語った。

原題:Berkshire Investors Praise Greg Abel at Post-Buffett Meeting (2)(抜粋)

--取材協力:Jennifer Surane.

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