(ブルームバーグ):トランプ米大統領は、イランとの7週間に及ぶ戦争を終結させるための合意が間近に迫っているとの見方を示した。一方、イランは同国が濃縮ウランの放棄に同意したとする米国の主張に反論しており、両国間の隔たりは残っている。
トランプ氏は、イランの「核のちり」の回収に米国が協力する考えを示した。ロイター通信とCBSは、こうした物質が米国に搬送される可能性があると報じた。
イラン外務省のバガイ報道官は17日遅くに国営テレビで、「濃縮ウランはイランの国土と同じように、われわれにとって神聖なものであり、いかなる状況下であれ、どこへも移送されることはない」と語った。
イランの濃縮ウランは、昨年の「12日間戦争」で米国がイランの核施設を爆撃した後、地下深くに埋められたと米国は主張している。ホルムズ海峡の船舶通航再開につながり得る広範な合意を目指す協議で、濃縮ウランの扱いは大きな争点の一つとなっている。
今回の戦争は数千人の死者を出し、ペルシャ湾からのエネルギー輸出を停滞させている。2月末に戦争が始まる前には、世界の石油・液化天然ガス(LNG)の約5分の1が同海峡を通過していた。
持続的な和平に向けた機運は高まっている。イランは17日、レバノンを拠点とする親イラン民兵組織ヒズボラとイスラエルの10日間に及ぶ停戦期間中、ホルムズ海峡は商船の航行に「完全に開放されている」と表明した。
18日には、ホルムズ海峡の通過を試みていると見られていたペルシャ湾内の複数のタンカーが引き返した。進路変更の理由は不明だ。トランプ氏は米軍による海上封鎖を合意署名まで維持すると明言しており、これに反発したイランは、米国がそうした措置を続ければ、ホルムズ海峡を再び封鎖すると警告した。
ジェニファー・ウェルチ氏らブルームバーグ・エコノミクスのアナリストは、「米・イラン間の現在の敵対行為に終止符を打ち、エネルギー市場に安堵(あんど)をもたらし得る合意が視野に入っているようだが、完全あるいは永続的な平和につながる可能性は低い」とリポートで分析。「いかなる合意も限定的で脆弱(ぜいじゃく)なものになるとわれわれは評価している」とした。
「かなり良いニュース」
トランプ氏は17日のブルームバーグの電話インタビューで、イランが核開発計画の無期限停止に同意したと述べ、「主要な論点の大半はほぼ固まった。進展はかなり速いだろう」と語った。恒久的な合意に向けた協議が今週末にも「おそらく」開かれるとの見方を示した。

大統領は、イラン資金の凍結を米国が解除するとの観測については否定した。これはイラン側の主要な要求の一つだが、トランプ氏は長年、これに強く反対してきた。
トランプ氏は17日遅く、アリゾナ州フェニックスからワシントンに戻る大統領専用機内で記者団に対し、イランに関する「かなり良いニュース」を受け取ったと語り、「起こるべきことだと思っている。そうなるのが当然のことだ。そして、そうなるだろう。どうなるか見てみよう」と発言。「それは非常に有益なことになると考えている。そして何より重要なのは、イランが核兵器を持たないことだ」と指摘した。
大統領は、停戦が来週期限を迎えた後、イランへの攻撃を再開し得るとの脅しもちらつかせた。「延長しないかもしれない。封鎖の状態で、残念ながらわれわれが再び爆弾を落とし始めなければならなくなる」かもしれないと語った。
トランプ氏の発言と、イランによるホルムズ海峡開放宣言は、パキスタンで先週開催された米国とイランの直接協議で合意に至らなかった後、双方が水面下で合意に向けて動いていることを示す新たな兆候だ。
ホルムズ海峡を通じたエネルギー供給がようやく再開されるとの期待感から、17日の取引で原油や石油製品、天然ガスの価格は急落。北海ブレントは9%安の1バレル=90ドル近辺と、開戦後の上げをほぼ帳消しにした。米国と欧州のディーゼル価格も下落し、米国株は大幅に続伸した。
パキスタンの首都イスラマバードで行われた先週の停戦協議でイラン側交渉団を率いたイラン議会のガリバフ議長は、米国が海上封鎖を継続すればホルムズ海峡は開かれたままにはならないとXに投稿した。
イラン資金の凍結解除は否定
ニュースサイトのアクシオスは、イランの資金200億ドル(約3兆1700億円)の凍結を米国が解除する見返りに、イランが濃縮ウランの備蓄を放棄することが協議されていると報じた。トランプ氏はブルームバーグの電話インタビューで、この件に関する質問に対し、「ノーだ」と繰り返し述べ、凍結解除の可能性を否定した。
パキスタンと米国の当局者は、再協議に向けた調整が進んでいると示唆している。合意に署名するためにパキスタンを訪問するかとの質問に対し、トランプ氏は「行くかもしれない」と答えた。
多くのトレーダーやアナリストは、原油の流通量が迅速に回復することには懐疑的だ。米国は、イランの港を発着する船舶に対する海上封鎖を維持するとしている。イラン外務省は、封鎖が続くのであればイラン側も行動を起こすと表明した。
18日の早い時間に、ホルムズ海峡方向へ向かっていたギリシャ籍とインド籍のタンカー5隻がUターンした。イランは同海峡の開放を宣言したが、その約束が守られるかどうかを船主や石油トレーダーが見極めようとする中、混乱が続いている。
原油を積載したこれらタンカーが引き返してから間もなく、3隻の液化石油ガス(LPG)運搬船と1隻の石油製品タンカーが同様のルートで東へ向かい、現在はオマーン湾へと進んでいるのが確認されている。
トランプ氏は電話インタビューで、米国とイランの協議はレバノンでの停戦とは「完全に別の合意だ」と述べた。
イスラエル首相府は17日、ヒズボラに対する作戦は「まだ完了していない」と表明。目標はヒズボラの解体で、「これは明日達成されるものではない」と続けた。
イスラエル軍は今回の作戦で南レバノンの広い範囲を制圧しており、地元当局によると、これまでに2000人以上が死亡し、さらに100万人が避難を余儀なくされている。
原題:Trump Sees Iran Deal as Imminent, Nuclear Issue Remains in Limbo(抜粋)
--取材協力:Sara Gharaibeh.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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