米マイクロソフトは3日、2026年から29年までに100億ドル(約1兆6000億円)を投じ、日本政府や企業の人工知能(AI)活用を後押しする計画を発表した。

ブラッド・スミス副会長兼社長はブルームバーグとのインタビューで、「投資の中心は、既存のクラウドデータセンターの増強とデータセンターの新設だ」と明らかにした。現時点では処理能力が制約要因になっており「こうした状況であれば、引き続き投資するのは合理的だ」と強調した。

マイクロソフトは生成AIの利用が広がる中、同分野のインフラ整備やセキュリティの強化、人材育成といった日本固有の課題に取り組む。24年4月に公表した対日投資を踏まえた施策で、スミス社長と高市早苗首相との面談に合わせて打ち出した。

同氏は高市首相との面談終了後に記者団に対し、「日本のサイバーセキュリティ強化に向けた取り組みや、人々がより多くの機会を得るためのスキリング支援について説明し、意見を交わした」と明らかにした。

インタビューに応じるスミス副会長兼社長 (3日・都内)

発表資料によると、マイクロソフトは具体的な取り組みとして、さくらインターネットとソフトバンクと協力し、日本国内で使えるAI向け計算基盤の拡充を検討する。精密製造やロボティクス向けのフィジカルAI、国産大規模言語モデル(LLM)などの開発を支える。人材面では、NTTデータ、ソフトバンク、NEC、日立製作所、富士通と協力し、30年までに日本で100万人のエンジニアと開発者の育成を目指す。

さくらインターネット株は前日比20%高の2967円と値幅制限いっぱいまで上昇し、同日の取り引きを終了した。

日本政府は、AIを成長戦略の中核に据え、ロボットや機械を制御するフィジカルAI分野の育成を急ぐ。2040年に世界シェア3割超、20兆円規模の市場獲得を掲げるものの、日本のAI投資は大きく出遅れている。官民投資の具体化への道筋が焦点となっていた。

またデータセンターの建設ラッシュは、メモリ半導体の需給ひっ迫や電力不足の懸念なども引き起こしている。石油の90%以上を中東に依存している日本では、データ処理に必要なエネルギー源を確保できるかなど課題もある。

こうした懸念について、スミス社長は投資計画に自信を示しつつも、世界情勢は不確実だと指摘。「重要技術のグローバルサプライヤーであり続けるには、機動力や強靱(きょうじん)性、適応力、不測の事態への備えが欠かせない」と述べた。中東情勢を受けた原油供給不安の可能性にも触れ、可能な限りサプライチェーンの多様化を進めていることが強みの1つだと説明した。

AI分野の競争や規制当局の監視が強まる中、マイクロソフトは生成AI事業の拡大や各国政府との関係を強化する目的で、アジアで相次ぎ投資計画を打ち出している。タイでは10億ドル以上、シンガポールで55億ドルを投資すると明らかにしていた。

一方、公正取引委員会は独占禁止法違反の疑いで、日本法人に立入検査を行うなど調査を進めている。同社のアジュールを巡り、顧客が競合する他社のクラウドサービスを利用する際に不利な条件を課し、競合事業者の取引獲得を妨げた疑いがあるという。

(社長インタビューの内容を追加しました)

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