(ブルームバーグ):トランプ米大統領は1日、北大西洋条約機構(NATO)からの脱退を検討していると述べた。欧米の同盟国は、米国が実際に脱退することには懐疑的だが、こうした発言が同盟を弱体化させているとの懸念は強い。
英紙テレグラフのインタビューで1日、トランプ氏は米国のNATO脱退を強く検討していると述べ、NATOを「張り子の虎」と切り捨てた。 これに先だって、ルビオ米国務長官は3月30日、イランでの戦争への対応を巡り「非常に失望している」と述べ、戦争終結後には関係を再検討する必要がありそうだとの考えを示していた。
こうした言動自体は目新しいものではない。トランプ氏と側近らは長年、同盟国はNATOにタダ乗りしており、貢献が十分ではないと批判してきた。ただし関係者によれば、イランでの戦争が深刻化し、トランプ氏が責任転嫁をする動きを強めていることを踏まえると、トランプ氏の不満はNATOの結束を揺るがす恐れがある。
「こうした怒りの連鎖はNATOの助けにならない」と、ドイツ政府のコルネリウス報道官は1日、ベルリンで記者団に述べた。

欧州はウクライナの抗戦を支え、ロシアを抑え込もうとしている最中にある。トランプ氏が実際に行動に移すかどうかにかかわらず、一連の強硬な発言はNATOの緊張を一段と高め、内部の亀裂を浮き彫りにしていると、匿名を条件に語った当局者らは指摘する。
「NATOからの離脱や、そうした措置の検討を示唆すること自体が有害だ。たとえ、実行に移されなくてもだ」と、エストニアのツアフクナ外相は声明で述べた。
NATO離脱には米議会の承認必要
もっとも、米国の実際のNATO離脱は容易ではない。
米国では、議会の承認または上院での3分の2の支持なしに、大統領がNATOを離脱することを禁じる法律が成立している。さらに、欧州から大規模な部隊や兵器システムを撤収することを難しくする別の法整備もある。
こうした歯止めにより、トランプ氏が単独でNATO離脱に踏み切る可能性は低いと欧州側はみている。その代わりの懸念は、トランプ氏がNATOにとどまりつつ、集団防衛を定めた北大西洋条約の第5条を履行しない、あるいは米国の核抑止を同盟国に拡大しないと表明することだ。
この2つの柱が失われれば、軍事同盟としてのNATOは脆弱(ぜいじゃく)になる。
「米大統領を巡って感情的な動きが広がる中でも、いずれ冷静さが戻ることを望む」とポーランドのコシニャクカミシュ国防相は1日に述べた。「なぜなら、米国なしにNATOは成り立たないからだ。冷静さを取り戻すことはわれわれの利益なのだ」とも話した。
米国がNATOを離脱するには、北大西洋条約の第13条を発動する必要がある。加盟国が米国に通告してから1年後に脱退を認めるという条項だ。もし米国が脱退するなら、米国が自らに通告する形になる。NATO創設時には、米国が離脱する事態はほとんど想定されていなかった。
仮に米国が離脱した場合でも、欧州諸国は軍事支出の拡大によってNATOを維持できる可能性があると東欧の当局者はみる。ただし、最も現実的なシナリオは、即座に混乱が広がることであり、一部の国は米国の支援をトランプ氏に頼る動きに出る可能性が高い。
イラン対応で新たな溝
皮肉にも、イランを巡る最も望ましい結果については、米国と欧州の見解はおおむね一致している。すなわち、体制の排除、核兵器の不保持、ミサイル能力の大幅な低下、地域における代理勢力の弱体化だ。ただ、その実現手段を巡っては大きく隔たりがあり、米国とイスラエルによる攻撃は違法だとする声が欧州で増えている。
「この戦争の進め方は持続可能とはいえないとの懸念が共有されている」と、ドイツ・マーシャル基金の上級研究員イアン・レッサー氏は述べた。

こうした不一致が、今回のNATOを巡る新たな緊張につながっている。
これまでNATOは、トランプ氏の絶え間ない不満にもかかわらず、同盟に引き留めることに成功してきた。昨年も、NATOは防衛費支出を国内総生産(GDP)比で5%に引き上げることで合意した。この動きをトランプ氏は称賛し、NATOの中核である第5条への支持を改めて表明していた。第5条は、一つの加盟国への攻撃は全加盟国への攻撃と見なすという集団防衛を定めたものだ。

しかし、こうした協調は長くは続かなかった。今年1月には、トランプ氏がNATO加盟国デンマークの自治領グリーンランドへの侵攻を示唆したことで、同盟が内部対立で崩壊する可能性が生じた。その後、イランが事実上封鎖したホルムズ海峡の航行確保を巡っては、各国はトランプ氏への協力を拒む事態にもなっている。
さらに一部の欧州同盟国は、自国の軍事基地をイラン攻撃の拠点として米国が使用することを認めず、米国の不満を一段と高めることになった。
こうした拒否を受け、ルビオ国務長官は米国がNATOとの関係を再検討する必要がありそうだと発言した。NATOに対してトランプ氏より理解があるとみられていたルビオ氏の発言だっただけに、欧州の注目を集めたと欧州の外交官は明かす。
すでに同盟には一定の損傷が生じていると、その外交官は述べた。
現在、NATO加盟国は対応を模索している。東欧諸国は結束を強く求める声を最も積極的に上げており、大国がトランプ氏の戦争から距離を置く姿勢に反発している。一方で、あるEU加盟国の外交官によると、トランプ氏に配慮する試みを重ねても大きな成果が得られていないとの不満も出ている。
「今は冷静さが求められる局面だ」と、NATO変革連合軍のヴァンディエ提督は1日、ブルームバーグテレビジョンで述べた。「NATOを『殺す』ことは、世界をより安全にはしない」とも語った。
原題:NATO Worries Trump Will Defang Alliance as US Threatens Exit(抜粋)
(14段落目以降を追加し、グラフィックスも加えて更新します)
--取材協力:Max Ramsay、Piotr Bujnicki、Jasmina Kuzmanovic、Arne Delfs、Aaron Eglitis.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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